謝罪 2
「長澤」
そんな長澤に声をかけると、長澤はビクッと身体を反応させて、瞬時に振り向いた。
「あ、アンタ……」
「藤野に、言ったわけか」
俺がそういうと、恨みがましそうに長澤は俺を見た。
「……明日から私、あの子とどんな風に接すればいいのよ」
「さぁな? そもそも、藤野に言う必要があったのか? 俺はそんなことを指示したつもりはないが」
「……私が駄犬をイジるのをやめても、あの子が続けてたら意味ないでしょ」
そういって俺を見る長澤。そんな長澤を見ていると、なんとも、不器用なヤツだなぁと俺は思ってしまった。
「……で、私は今、あの子に謝ればいいの?」
「ああ。そうだ」
俺と長澤の視線の先には、俺が指示したとおり、席に座ってまるで主人の帰りを待つ忠犬のような姿の犬井が座っている。
「さぁ、早く謝って来いよ」
「……ほ、ホントに謝ってこなきゃダメ?」
「はぁ? お前、藤野と喧嘩してまで謝るって言ったんだろ? それなのに今更やめるのか?」
「……わかったわよ」
長澤は悔しそうに唇を噛んでいた。
だったら、そもそも謝る必要はない。別に俺は強制などしていないのだから。
もっとも、長澤からしてみれば、俺がしていることは脅迫や強制に近いものであると感じれいるのだろうが。
長澤は犬井を見ているだけで中々近づいていかなかった。俺は最後のひと押ししてやることにした。
「どうした? やめるのか?」
俺が聞くと、長澤はキッと俺を睨んだ。
「……わかったわよ。謝ればいいんでしょ。謝れば」
長澤はまたため息をつくと、ゆっくりとそのまま犬井の方に向かっていった。




