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謝罪 1

「どうした? 犬井」


 座っている犬井に俺は訊ねる。


「あ……え、えっと……伊丹君と、喧嘩しちゃったの?」


 遠慮がちに犬井は俺に聞いてきた。


 喧嘩……そんなものではない。


 むしろ、俺はそんなことを今の今まで一度もしてきたことがない。


 なぜなら俺はそんな風に思えるような友達を作ってこなかったからだ。それに関しては栄介も同じである。


 俺にとっては栄介は、あくまで普通であることを装うために作った友達なのだから、喧嘩をするようなレベルの友達ではない。


「いや、そんなんじゃない。心配するな」


「そ、そうなんだ……」


 なぜか安心したように犬井はそう言った。


 しかし、犬井を見ると再び俺の焦燥感は加速した。


 俺はもう一度長澤の方を見てみる。すると、長澤はなにやら藤野と言い争っているようだった。


「犬井、ちょっと待っていてくれ」


「え? あ、うん……」


 犬井を残して、俺はそのまま長澤と藤野の方に近付いていった。


「流佳……それ、マジで言ってんの?」


 藤野のイライ付いた調子の声が聞こえてきた。


「え……う、うん」


 藤野は不機嫌そうに長澤に迫っていた。


 長澤は苦笑いしながら藤野を宥めているように見える。


「だ、だって……ね? もう可憐も飽きたでしょ?」


「そりゃあ、飽きたかもしれないけど……だからって……」


「だから、ね? 別に可憐はいいと思う。でも、私としてはキチンとけじめ、っていうのかな? そういうの付けておきたいから」


「ケジメ、ねぇ……」


 藤野の長澤を見る視線は厳しいものだった。長澤は引きつったような笑みを浮かべているだけである。


「……私は、謝らないから」


 そして、そのまま藤野は教室を出て行ってしまった。


 その感じから見ると、なんだか信じていた人に騙されたかのような感じで、酷く怒っているような感じだった。


「はぁ……」


 藤野が去っていった後、長澤は大きく溜息をついた。

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