これからの変態の話をしよう 2
「どうした? いきなり立ち上がって」
「あ、アンタ……それ……なんで……」
俺は笑い出しそうになるのをなんとか堪えていた。
無論、なんとなくはわかっていたが、今の長澤の行動を見てそれが真実なんだということは確定した。
どうやら長澤流佳は思ったよりもわかりやすい、犬井とは別の意味で面白い女の子のようであった。
「ふふっ。さぁ、なんでかな?」
「なっ……い、伊丹に聞いたんでしょ!? アイツ、明日会ったらタダじゃおかないんだから……!」
「おいおい。栄介は関係ないぞ。俺は誰にも聞いてないんだが」
それを聞いて、ようやく長澤は自らの行動が俺の質問を肯定していたのだということにようやく気付いたようであった。
長澤は力なくゆっくりと椅子に腰を下ろす。
再びしばらくの間沈黙が続く。俺も長澤も何も喋らずにそのままでいる。
「……笑いたきゃ、笑いなさいよ」
先に沈黙を破ったのは長澤の方だった。
「笑う? なぜ?」
俺が訊ねると、下唇を噛みながら俺から顔を反らす長澤。
「……嫌いなのよ。あの子。昔の私みたいで」
長澤は、うつむいたままでそう言った。俺は再び目の前に置かれた菓子を手に取り、口の中に放り込む。
「なるほどな。しかし、まぁ……蓋を開けてみればなんとも浅はかな理由だな」
「あ、浅はかですって!? あ、アンタねぇ……!」
目くじらを立てて、長澤は俺を睨んだ。
「だって、そうだろうが。そうなると犬井には何の落ち度もない。ただお前が犬井を見ていると、昔の自分を見ているようで嫌だっていうだけでイジメてたってわけだ。そりゃあもう理不尽以外の何者でもないだろ」
長澤はハッとしたようだった。そして、何も言わずに再び下を向く。
「……そんなことぐらい、わかってるわよ」
「で、なんでイジメられてたんだ?」
「……はぁ? そんなの……アンタにそんなこと言う必要あるの……関係ないでしょ、そんなの」
長澤は辛そうな様子で俺から顔を反らす。どうやら余り思い出したくない記憶らしい。
かといって、俺だって正直、興味はなかったのだが。
「それもそうか。じゃあ、別にどうでもいいな」
そう思って俺がそう言うと、逆に長澤は拍子抜けしてしまったようだった。




