これからの変態の話をしよう 1
「で、変態の俺は今からお前に変態な話をしようと思う」
「……はぁ? 何? 変態な話って? キモッ」
「そうだな。おそらく相当気持ち悪い話だと思う」
俺がそこで言葉を切ると、長澤は少しだけこちらに身体を向けて俺の目を見てきた。
「……で、何の話? まさか、駄犬の話じゃないわよね?」
「おお。よくわかったな」
そういうと長澤は、大きく溜息をついて長い髪を撫で下ろした。
「……分かったわよ。アンタが駄犬……犬井のことどう思っているか知らないけど、やめりゃいいんでしょ、やめりゃ。もうアンタみたいな変態に付きまとわれるのも嫌だし、私もうあの子にちょっかい出すの、やめるわよ。いい加減あの子をイジるのもワンパターンで飽きてきたし」
「そうだな。そうしてくれるとありがたい。それに、お前と藤野の犬井に対するイジメはワンパターンすぎてつまらんからな」
そう言うと長澤はムスっとした顔で俺を睨む。
「……何よ。ワンパターンって」
「お前ら大体が、教科書ゴミ箱に投げ込んだり、トイレで犬井を水浸しにするかのどっちかじゃないか。芸がないにも程があるぞ」
「じゃあ、何? もっと多岐に渡ってイジメたほうがよかったってこと?」
俺は頷いた。要領を得ないという顔で長澤は俺を見ている。
そして、大きくまた溜息をついた。
「で、もういいでしょ? アンタの大事な話ってのはそれが全部なんでしょ? 私は明日から駄犬をイジメるのをやめる。それで万事解決、でしょ?」
「いや。違うな。これからが本番だ」
俺がそういうと狐につままれたような顔で長澤は俺を見る。
「はぁ? 何? 本番って……」
「そうだな……長澤、お前にまず聞きたいことがある」
「……何よ?」
俺が至極真剣な表情で聞いたのが意外だったのか、長澤は少し戸惑った感じでそう聞き返した。
「お前、なんで犬井をイジメてたんだ?」
「……はぁ? 何それ。どうでもいいでしょ、そんなこと。もうやめるって言ってんだから」
「いや、応えてくれ。大事なことなんだ」
「……はぁ。大事って……と、特に理由なんて……」
言いにくそうに長澤は言葉を濁らせた。もちろん、俺はなんとなくその理由はわかっていた。
しばらくの沈黙の後、俺はわざとらしく大きくため息をついた。
「まぁ、そうだよな。昔自分がイジメられてたから、その当て付けで犬井をイジメているなんて」
俺がそういうと、長澤は顔面蒼白になって立ちあがった。
その顔が恐怖の表情で満ちているのを見て、俺は自分の考えを確かなものにしたのだった。




