これからの変態の話をしよう 3
問題は別に昔長澤がイジメられていたことなどではないのだ。
本人が言いたくないならなおさら俺にとっては、別にそれで構わなかった。
「あ、アンタねぇ……っていうか、なんでそんなこと知ってるのよ? また伊丹から聞いたの?」
「誰にも聞いてない。栄介から聞いたのはお前が中学の時学校を長期で休んでいたこと、で、お母さんから、中学の時学校に行きたがらなかったことを聞いて俺が推測しただけだ」
其れを聞いて長澤は頭を抱える。本人にとっては俺にこのことが知られてしまったことはどうやら一大事のようである。
「気にするな。今も言ったが、お前が過去にイジメに遭っていようがいまいが、俺にとってはどうでもいいことなんだからな」
「……嘘よ。どうせ、アンタも私がイジメられたってこと、みんなに言いふらすんでしょ」
「はぁ? なんだって?」
すると、みるみるうちに長澤は目に涙をいっぱい貯めてそれをボロボロと零し始めたではないか。さすがのおれも予想外すぎる反応に思わず戸惑ってしまった。
「せっかくイメチェンしたのに……これじゃ意味ないじゃない……」
子供のように両手で目をこすりながら、涙をあふれさせる長澤。さすがのそれが嘘泣きとは思えなかったので、どうやらガチで泣いているようだ。
可哀そうというよりも……ちょっと俺は引いてしまった。
「あー……いや、だから、言わないからな。別にお前がイジメられてたってことクラスの連中に言いふらしても俺にメリットはないし」
「……嘘よ! そんなこと言って……絶対みんなに言っちゃうんだから……」
興奮した様子の今度は嗚咽を上げながら本格的に泣き始めた。不味い。何が不味いってこの状態のところに長澤のお母さんが帰ってくると非常に不味い。
なんとか長澤を落ち着かせる必要がある。そのためには、確実に俺が長澤の秘密を言わないということを証明して見せる必要がある。
しかし、そのためにはどうすればいいのか。証明するなんてことはそう簡単なことではない。そうだとすると、もっと明確な取り決めが必要だ。
たとえば、約束……そう。約束だ。
「わかった。じゃあ、こうしよう」
俺がそう言うと、長澤はなんとか涙を手で拭きながら顔をあげて俺の方を見る。
「お前、犬井に謝れ」
「……え?」
俺がそういうと、泣くのをやめる代わりに、ポカンとした表情で俺を見る。




