捻くれた彼女 2
「……ここか」
学校から十分程歩くと、マンションの前についた。
しかし、ここで問題が発生した。
マンションはオートロックなのだ。こればかりはどうしようもない。
今時のマンションなんていうのは基本的にそういうものなのだから仕方ないのではあるが。
マンションの住人が入るときにそれに乗じて侵入する手もあるが、どうにもそれだとコソコソしているようで嫌な気分だ。
だが、かといってここで引き下がる俺ではないし、引き下がる必要もなかった。
俺はオートロックシステムに、栄介から訊いた長澤の自宅の番号を入力する。
すると、呼び出し音が響いた。
「はい?」
そして、しばらくしてから間延びした声が聞こえてきた。
声からするに、どうやら、長澤のお母さんらしい。
「あ。すいません。長澤流佳さんのお宅でしょうか?」
「はい? そうですよ?」
「俺……ああ、すいません。ワタクシ、流佳さんのクラスメイトの逢沢と申します。流佳さんは帰っていますでしょうか?」
俺は自分でも馬鹿丁寧すぎると思いつつも、そんな口調で聞こえてきた声に訊ねる。
無論、長澤が帰ってきていないことなど百も承知である。先ほど犬井に絡んでいたのを見たのだ。俺より先に自宅にたどり着いているわけがない。
「え? 逢沢君ですか? う~ん……流佳ちゃんはまだ帰ってないですね」
「そうですか……わかりました。ちょっと流佳さんとお話したいことがあって来たんですが……帰ります」
「え? 帰っちゃうんですか? 流佳ちゃんにお話ってなんだったんです?」
「え? ああ、いや大した話ではないです。ですから、また来ます。じゃあ」
「あ! 待って! 大丈夫よ。流佳ちゃん、もうすぐ帰ってくると思いますから!」
なぜか酷く慌てた様子で応答してきた。そして、すぐにマンションの扉が開く。
「どうぞ! 入ってね!」
「あ、ありがとうございます」
意外にも簡単に入れてしまった。
それっぽい理由をつけて、さももったいぶって、もしかするとそれで家に入れてくれるかもしれないという、限りない予想であったが、それは案外上手くいってしまった。
俺はエレベータで上の階に上がり、長澤の家の部屋番号の階で降りた。
そして、そのまま廊下を歩き、長澤の家であるはずの部屋の前に立つ。
玄関の扉にあるインターフォンを押すと、扉の向こうからドタドタを走ってくるような音がしてきた。
「あ……逢沢君?」
そして、扉が開いた。
中からは長澤のお母さんであろう人が出て来た。
お母さんというか、どちらかというとお姉さんなのではないかというくらいに見た目には若く見える美人な人であった。
どうやら、長澤はお母さん似らしい。




