捻くれた彼女 1
そして、次の日の放課後。俺はさっそく行動を開始した。
「おい、栄介」
授業が終わると同時に俺は栄介に話しかけた。
「ん? ああ。何? 直人」
相変らずの爽やかスマイルで、栄介は応えた。
「お前、長澤と同じ中学だったよな?」
長澤という名前を聞いただけで、栄介は顔をこわばらせる。
「え……ま、まぁ、そうだけど……何?」
「アイツの住所、知っているか?」
栄介は意味がわからないといった感じで俺を見る。
「な、何言ってんの? 直人。ねぇ、最近変だよ? 前も長澤さんに突っかかっていったし……やめなよ、そういうの」
「そういうのはどうでもいい。で、知っているのかいないのか、教えろ」
俺の態度に驚いたようで、栄介は目をパチクリさせていた。
そして、なんだかよくわからないものとこれ以上関わりたくないという感じで渋々溜息をついた。
「わかったよ。教えるよ。でも、一人で行ってよね。僕は絶対行かないよ」
「誰もお前についてきてくれなんていってないぞ。それにしても良く知っていたな」
「ああ……まぁね。長澤さん、中学の時、長期で休むことがあったからね。それで家が近い僕はよくプリントとか届けに行ってたんだよ」
「へぇ。なんで休んだんだ?」
「さぁ……体調が優れなかったとはなんとからしいけど……僕もそこまで詳しくは知らないんだ」
「そうか。ありがとう。さすがは栄介だな」
「え? あ、あはは。そ、それほどでも。気にしないでよ、僕達友達じゃないか」
栄介のこの上なく薄っぺらいセリフを聞いた後で、俺は長澤の住所を聞くことが出来た。
確かに、栄介が前に話していた栄介自身の家の住所からは大分近い。
それから俺はすぐに教室を出た。
去り際に教室を見ると、長澤と藤野がまた嫌がる犬井に絡んでいる。
犬井は相変わらず今にも泣き出しそうだった。
長澤がチラリと横目で俺をにらんだようだったが、スルーした。
「……他人にイジメられているのを見ても、ダメなんだな」
犬井の表情を見ても、俺は興奮できなかったのを感じてそう呟いた。
どうやら、やはり犬井の「俺に向けられる」感情でなければいけないらしい。
しかし、今はそのことよりも優先すべき事項がある。
俺は校門を出て、栄介に教えられたとおりの住所に向かう。
俺は長澤の家に行くのだ。無論、一度も行ったことなどはない。
そもそも長澤と話したのもこの前が初めてだ。
だが、俺の見つけた新しい俺自身の人生のポリシー、つまり「犬井理香子の感情の爆発を出来る限り見る」というポリシーに従うためには、どうしても、この行為は必要だったのである。




