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NETツアー


挿絵(By みてみん)


メル友とはちびまる子ちゃんとサザエさんのどちらのアニメが好きかって盛り上がっているよ。

僕はもちろんちびまる子ちゃんさ。

家族や小学生どうしのコメディ漫画で肩が凝らなくて安心して見てられるし、おっちょこちょいで楽天的な性格がホットした気分にさせられるのさ。

ついこの前はワンピースかドラゴンボールだったよ。

これは引き分けって感じかな。

なにせ放映されている時代が違うからな。

比較にならないよ。

ただ、カメハメハーって掛け声を流行らせたドラゴンボールのほうがやや有利かな。


それ以外にも好きな声優だとかアニソンだとかお互いに語り出したらきりがないね。

皆よく知ってるよ。

なに、俺?俺の好みの声優はなんといっても花澤香菜ちゃんさ。

なんといっても癒されるね、あの声に。

声といえばドラエモンの大山のぶ代さんが亡くなったそうだ。

あのドラ声ぴったりの配役だったな。

ご冥福を祈ります。

アニソンはエヴァンゲリオンの挿入歌の残酷な天使のテーゼだよ。

高橋洋子が歌っているよ。

上手いね。

あれを聴くと元気が出てきちゃうのさ。


ところがライン仲間との話題は高尚で本に関することのほうが多いんだ。

村上春樹は何度もノーベル賞候補と言われているが毎年ガッカリなんだよな。

なんせ世界の文学賞だから、どうしても今の時代で関心を集めているテーマのほうがいいのかも。

まあ、毎年期待するのも悪くないな。

逆に毎回直木賞候補と呼ばれようやく取れた作家の万城目学が話題になったな。

流行作家でも賞を取ってない人も多いよ。

ライン友は椎名誠、筒井康隆のSFものを気に入っているようなんだが、直木賞ではなく日本SF大賞なんだな。

俺はどちらかというと江戸川乱歩賞作家の小説のほうが読み応えがあるのさ。

下村敦史、鏑木連、翔田寛って作家知ってるかなあ。共通してるのは犯罪、事件でもっとも好きな作家は今野敏、堂場瞬一だろうなあ。

大きな賞とは縁が無さそうだが警察小説といえばどちらもヒット作品が多いよ。

でもよ、俺は地元の作家を応援してるよ。直木賞を取った時代小説の今村翔吾、本屋大賞の現代ものの宮島未奈。

どちらも頑張ってほしいんだが、近隣でほとんど大手本屋が無くなってしまったのは残念だな。


フェイスブックでは大谷選手のことを取り上げたよ。

なにしろ日本が誇る世界的な大スターであること。

あの今良くも悪くも最も脚光を浴びているトランプ大統領からも大物映画スターのようだと言われたくらいだから、あの存在力はハンパじゃないね。

多くの人が言ってるけど彼と同じ時代に生きていて良かったというのは決してオーバーなことではないよ。

とかなんとか書き送ったら“いいね、いいね”の大合唱だったよ。


逆にX(Twitter)では#で金まみれの政治家たちの数を減らせと訴えたよ。

国会議員から地方自治体の議員定数を今の半分に減らすべし。

イーロンマスクのような人物が日本にも現れ、大胆な政府、自治体効率化を進めるべきだとツイートしたら、多くの賛同のツイートがあり感動したね。

でもそれを実行に移せる議員さんがそれぞれ自分の議席を守りたいため及び腰。

残念なことこの上なし。


ユーチューブでは様々な映像が流れ結構楽しませてもらっているよ。

でもある意味では制限なしで面白ければいい、視聴者に関心を持たせればいいという方向になりがち。

結局、作り手側の思惑によって異なるんだけれど、やはりそれぞれアピールしたいことに利用しているんだよな。

俺の知り合いがキャンピングカーで全国を巡回して、訪れた土地の風景や人々の生活を紹介しているよ。自分には出来ないだけに頑張ってほしいし、応援したいね。


近年、インスタ映えって言葉がはやっているだろ。

昔はカメラマンというと、ある程度の撮影技術が必要だったけど、スマホの普及で今や誰でも印象的な写真を撮ることが可能になったんだな。

被写体を組み合わせて構図を考えてシャッターを切る。

記念ということだけでなく、作品として扱っている人もいるんじゃないかな。


TikTokも同じことが言えるだろ。こちらは動画で視聴者に紹介したい映像を自分なりに企画して録画していけばいいんだ。

短時間だけど演出、脚本の有り無し、ハプニング系もあり。

仲間どうしで楽しむだけでなく、公に配信して出来栄えを評価してもらうことが簡単に出来る時代となった感あり。これも世界中の人々が閲覧できるんだけど、誹謗中傷、炎上も多いそうだ。


俺自身はブログを始めようかと思っているんだ。

以前から書き溜めている作品が結構あって、これからのものも含めてそこに残しておこうと思っているのさ。

もちろん、まったくのズブの素人作品ばかりで、人様に見られるのは気が引けるけど、いまやNETを利用していくのは世の趨勢のように思えるわけさ。

それによって、収入を得ることは考えてもいないよ。

とりあえず始めること、チャレンジすることが自己啓発にもつながると思うのさ。

当然そのためには勉強しなければならないことが山ほどあるよ。

Web、URL、ドメイン等々のIT関連用語の理解。

ブログサービスの選定。

各種規約、個人情報等、面倒なことこの上なし。

ただ、将来的にブログがヒットし、口コミやWebサービスにも取り上げてもらう夢を描きながら、苦心惨憺やりがいもあるというもの。

個人的なホームページが目標とかなんとか、少々図に乗りすぎ。

ただ夢は大きいほど良いのかも。

ブログといや、Amebaがいいかもな。無料で幅広く有名人も利用しているらしいよ。


最近はChatGptが話題になってるね。

知りたいと思っている質問に対して、人ではなくてAIが答えてくれるのさ。

もともとチャットといえばリアルタイムで気心の知れた相手とおしゃべり出来ることから利用していたのが、そのうちオンラインでお互いが顔を見ながら会話できるようになり、会議や学習、診察も可能になったんだね。

もしかしたら、AIが処方箋を発行してくれたり、個人的な悩みもすべて解決してくれる時代が来るかもしれないよ。

まあ、今でも自宅で仕事や勉強が出来るようになったし、欲しいものもネットショッピングで簡単に手に入るからネット様様だね。


おっと、ダチから呼び出しがかかったよ。


「いやあ、久しぶりだね金ちゃん」


『桃ちゃん、元気にしてる。今は忙しいかい?』


「いや、暇暇。退屈してたところだったよ。丁度良かった。何か面白い話聞かせてよ」


『前に言ってた件覚えてる?一緒に旅をしようって』


「いいねえ。どこかいいところ知ってるのかい」


『そうなんだ。ぜひ案内したいんだ。大いに楽しめると思うよ』


「行くよ、行くよ、どんな恰好していけばいいかな」


『いつも通りでいいよ。僕も普段と同じだから』


「じゃあ、そうする。あれ、ゴロゴロってカミナリが鳴ってるよ」


『大丈夫だよ。雨が降っても平気さ』


「そうだよな。じゃあ、直ぐに出かけよう」


『そうしよう、そうしよう。レッツゴー!』


****


「奥さん、本当に息子さんの行先に心当たりがないんですね」


「刑事さん。あの子に限って仕事を休んでどこかに行ってしまうことはないです。旅行にしろ出張にしろ必ず私に言って出かけますもの」


「会社にも行かれてないんですね。お聞きしたことを確認しますが、お名前は間宮弘さんでいいですね。一昨日から消息不明。勤務先にもお知り合いの方々にも確認を取られたが来られていないとの回答。最後にご本人と会われたのは、ご一緒に住んでおられるお母さまで、一昨日の夕方ご自分の部屋におられたと」


「その通りです。私が買い物に行って戻ってみると部屋にいなかったんです。どこかコンビニでも行ってそのうち戻ってくるだろうと思ったんですが、それっきりで」


「奥さんが6時過ぎにご自宅に戻られ時には、息子さんはおられなかった。従ってその間に外に出られたようだが、お部屋を覗いてみると荒らされている様子はなく、スマホ、財布等の持ち物も置いたままでお部屋から出られたとしても、着のみ着のままであったろうと」


「きっと大慌てで出て行ったんですわ。誰かに誘われて何も持たず、もしかしたら、悪い人に騙されたか、強引に連れて行かれたか。その理由を知りたいんです」


「承知しました。それではお部屋を見せて頂きましょうか。行方がわからなくなった事情が見つかるかもしれませんので」


刑事は母親に案内され、2階の息子の部屋に入った。

事件に巻き込まれたことも想定されるため、手袋を嵌めて確認することにした。


「お部屋のものを触られたり動かされたりされましたか」


「いいえ、息子が居ないことを確かめたこと以外、何も触っていません」


刑事が部屋に入ると、右側にベッド、タンスが並んでおり、左側に机、椅子、奥にTV等が置かれていて、ハンガーにはシャツ、スーツ、ズボンが掛けられていた。

机の上にはスマホが置かれて、飲み物、菓子類がありそれも飲食の途中であったことがうかがえる。

ノートパソコンも机の中央奥に出しっぱなしになっていて、モニターも開いた状態になっていた。

見たところ何者かが押し入って争った形跡はなさそうだ。

奥の窓も閉まっており、出て行ったとすれば本人の自発的かのようだが、誰かが誘ったとすればスマホの着信履歴を見れば分かるかもしれないが、そのまま置いて行った理由はわからない。


「息子さんが出かける際、どのような服装で行かれますか?」


母親が首を傾げながら答えた。


「そういえば外出用の服はハンガーに掛かっていますし、妙なことに玄関のいつも履いている靴もあるんです」


刑事は困惑した。

母親の言う通りだとすれば、息子はまだ家の中にいることになる。

けれどもそんなに広い家でもなく、さすがにそれはないだろう。

まず、スマホを手に取って確かめることにした。

母親に断わった上で着信、メール、ラインをそれぞれ確かめていく。

ポイントは一昨日夕方の失踪直前の履歴である。

母親にも見てもらいながら確かめたが、会社関係、友人等心当たりのある人物ばかりであった。

昨日、今日の着信は本人不在で未通話、未読になっている。


次にパソコンを見ると、電源が入ってないことがわかった。


「いつも出掛ける際は電源を落として行かれるのですか?」


「いいえ、パソコンについてはつけっぱなしのことが多いんですよ」


母親はしばらく考え思い当たった。


「そういえば、あの日の夕刻に突然雷雨があり、この一帯が停電したんです。すぐに点いたようですが、私もしばらくスーパーで止むのを待ってから家に帰ったんです」

「なるほど、照明関係は点いたものの、パソコンは消えたままだったと」


刑事は電源を入れ、パスワードを母親から聞きパソコンを立ち上げた。

ネットのプラットホーム関係を操作すると、ページの復元のメッセージが出てきた。

やはり停電によりパソコンのソフトウェアが中断したようだ。

そして復元すると、一番最後にモニター上に現れていたプログラムが判明した。


メタバースソフト、つまり、インターネットにおける仮想世界である。

彼は停電直前にオンラインで複数の人間とネット上に創造された立体空間に入り込み楽しんでいたようだ。

刑事はコンピュータIT関連アプリに詳しく、以前にこのソフトを体験したことがある。

記憶を手繰り寄せ、ソフトウェアを操作していくと、道路の両側に洒落た建物が立ち並び現実と変わらない風景が見られた。

いずれもマンション風の建造物で壁面の色は茶系もあれば白黒青と様々に着色されていて、見ていて飽きないように構成されている。

創作者の趣味が色濃く反映されているようだ。

どうやら、間宮弘はこの道路を真っすぐに進んでいったようで、道順は限られているようだ。

途中で人物や犬や猫、自転車や乗用車等々配置されている。

相当な熟練クリエイターの創造世界といっていいだろう。

母親の話しぶりでは、息子の創作ではなさそうで、ネッ友に誘われて魅力的なネット空間を旅していたようだ。

彼のパソコンは停止してしまったが、相手側は動作中なので、行動は継続中だったはず。

疑似空間は森を超えて川べりに、なにやら印象絵画の情景を模しているようだ。

更に西部劇の舞台と思しき風景に至る。


そして、彼らが辿ったであろう痕跡を追っていくと、ようやく二人の人物が目に入った。

現実の世界でないため、服装は自由に選べる。

一人は和装の丹前姿で背中に桃という表示。

もう一人は真っ赤なマントを羽織り、これも背中に金との表示。

いずれも昔話にあやかっての装いのようだ。

もしかしたら、どちらかが、間宮弘かもしれない。

刑事は彼らに対して呼びかけのメッセージをキーボードに打ち込んだ。


『間宮さん。そちらに行かれて3日経ちますよ。皆が心配しています。もう帰ってこられませんか』


すると、桃と表示された人物が振り向いた。

手を上げ、首を上下に振る。

どうやら、彼が間宮弘のようだ。

彼は相方と相談し、手を振りながらこちらの方向に歩きだした。


「奥さん、息子さんが見つかったようですよ」


一緒にモニターを覗き込んでいる母親は目を丸くして見守っている。

頭にハチマキをして、絵本の桃太郎そっくりな顔つきをした人物が、メタバース画面をこちらに向かって近づいてくる。

本当に彼がそうなのか。

ならば、なぜ身体そのものが入り込んでしまったのか。

もしかしたら停電が原因? 

刑事も母親も困惑するばかりで、固唾を呑んで見守る以外なかった。








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