魔術師養成学校編 エピソード1
遅くなりましたー!おまけもありますのでどうぞお楽しみください( ˊᵕˋ ;)
魔術師養成学校
その声の主はレグルスだった。
どこからどうやってきたのか、聞きたいことは山々だったが、パルは飲み込んで尋ねた。
「そなた、なぜここにおるのじゃ?」
レグルスは、よぉ、と手を上げ、はにかんだ笑みを浮かべた。本当に西の国のガブラとそっくりだ。レグルスは口を開いた。
「暁卿をおれの契約魔術師にする為だぜ」
パルはそうか、と頷いた。レグルスは懐から紙を取り出し、ひらひらと契約書であるそれを見せる。
「1番下に名前を書いてくれ。話はガブラから行ってるだろ?」
「うむ。よいじゃろう。契約を結ぼうかの」
パルは承諾し、青い炎で錬金術の魔法陣を描き錬金術で羽根ペンを出す。レグルスから契約書を受け取り、上から下まで読むとさらさらと名前を書き記す。書き終わると羽根ペンは消え、パルはレグルスに契約書を渡した。
「ハシェル、ノア、座って良いぞ。レグルス殿も座るといい」
レグルスはああ!と頷き裸足で絨毯の奥の方にどっかりと座った。ハシェルとノアは靴を脱ぎ、絨毯の上へと上がる。
パルも杖をつきながら絨毯の上に上がる。
4人は向かい合うように座り、レグルス以外の3人は久々の自宅にふうと息をついた。
「レグルスそなたどうやってここまで来たのじゃ?」
「そもそもどうしてここがわかったんですか?」
「てゆうかいつからここにいるの?」
3人は矢継ぎ早にレグルスに尋ねる。レグルスは背伸びしながら3人それぞれの質問に答える。
「まず暁卿の質問からだな。どうやってきたかって言うと俺の魔法の獅子に乗ってここまで来た。で。ここがわかったのは、パルじいさんとパンドラばあさんの伝説が俺の一族では語り継がれてて、その中にこの展望台のこともあるからだ。西と北の境、日が登らぬ高き地に、伝説の展望台ありってな。」
「そんなことを伝説にされてもなのじゃが…大袈裟じゃな……」
パルは少し恥ずかしそうに頭をかいた。
「最後に。いつからここにいるのかだけど」
レグルスはくしゃりとはにかむ。
「2日前、会議で俺が暁卿と契約するって決まってからすぐにここを探し始めたから…昨日からだな!」
ハシェルは思った。自分たちが西の国を満喫しているあいだずっと待っていたのだろうかと。ハシェルは飼い主の帰りを待つ犬みたいで少しレグルスが可愛いかった。レグルスの頭とおしりに耳としっぽが見えてきそうだ。
「わしもそなたに話すことがあっての」
パルが顎を摩りながら言う。一体何を言うつもりなのだろう。
「ハシェルとノアのことでの」
するとふたりの会話をぼーっと聞いていたノアがえっ!?僕!?と意識を取り戻した。ハシェルも思わず問う。
「僕たちのことってなんですか?」
「うむ。二人を魔術師養成学校に通わせたいのじゃ。
魔術師協会の依頼ではふたりがボロボロになる。それでは2人は可哀想じゃ。安全に立派な魔術師になって欲しいのじゃ」
ノアとハシェルは嬉しさで胸がいっぱいになった。
ノアに至ってはパルを見つめ目を潤ませている。
レグルスはその3人の様子を微笑ましそうに見ながら言う。
「ああ。いいぜ。契約するからには、王家の星としてできることはやってやりたいからなー。暁卿と王家の星がゴリ押しすれば今年の入学試験はもう終わってるけど、入学手続きできるだろ!さっそく伝書鳩を飛ばすか?暁卿、鳥を出してくれ」
パルは頷いて青い焔を作り、そこから焔の鳥を作り出す。
「これで飛ばせばいいじゃろう」
そして青い炎で錬金術の魔法陣を描き、紙と羽根ペンを作り出す。パルはなにかを書き込んだあと、レグルスに紙と羽根ペンを渡す。レグルスは受け取ると何かを紙に書き足す。
「よっしこれでいいはずだ!」
それから1ヶ月後。結果として。
暁卿であるパルの推薦と王家の星の1人であるレグルスの口利きでハシェルとノアは魔術師養成学校に短期間の特別入学いう形で入学することができた。入学試験はない。ハシェルとノアはレグルスから魔術師養成学校に入る許可証を貰い、今、その門の前に立っていた。
円環が回る魔法都市の中央の球の中央に位置する、その門は白と青で構成されており、荘厳な装飾がなされていた。
「ハシェル、僕の手、繋いでてね、」
ノアが不安げにハシェルを見る。ハシェルはふっと微笑む。
「大丈夫ですよ、ノア」
ハシェルはそういうと許可証を門に翳す。ノアもそれを見て、ハシェルと繋いでる手と逆の方の手で、許可証を門に翳す。すると扉の色が虹色に輝き始める。扉の中央に8芒星が現れて消え、その次に大きな五芒星が端から描かれる。
ガチャりと音を立てて扉は開き2人のことを中へと誘っている。中へハシェルとノアは進む。
そして中へ入るとあんぐりと口を開けた。
中央の球が浮いていることは前々からわかっていたことだったが魔術師養成学校に来てはっきりとわかった。
何故ならば、学校は左右に建物が別れており、その間には球の下の景色が見えていたからだ。2人はどちらの建物に行こうか迷ったが、すぐに先生らしき人が来た。
「お前ら許可証はもっているな?今日から来る、特別入学の2人か?入学式はもうすぐ始まる。なかなか姿が見えないから何かあったかと思ってここまで来てみてよかった」
「僕ノア!君は先生?」
「そうだ!今日から君たちを担任するアルクトゥルスだ!よろしくな!」
アルクトゥルス…アルクトゥルスといえば一等星だ。
この人は1級魔術師に違いない。ハシェルは思わずお辞儀をした。すると先生はそれをみて手を差し出す。
「よろしく!」
ハシェルはホッとしたような笑みを浮かべて握手をする。
先生は見たところまだ若い。そういえば星の魔術師は皆若かった。年老いた星の魔術師もいるのだろうか。ハシェルはそんなことを思った。先生はにっと笑う。
「行こうか、ノア、ハシェル。同級生たちが君たちを待っているぞ。」
そして会場に着いた。入学者は凡そ80人といったところだろうか。会場はステンドグラスの厳かな教会のような雰囲気で、コンサート会場のように段々に客席が設けられている。その中に静かに生徒たちが着席していた。壇上の後ろにはその学校の校旗が掲げられていた。
上段の生徒たちは青いローブを着ており、その中には見た事のある顔もあった。
「スピカ!」
ノアが思わず手を振るとスピカは嬉しそうに手を振り返す。
ハシェルはスピカを見つけ不思議そうに尋ねる。
「あの、魔術師軍人さんがどうして魔術師養成学校に?」
すると先生は驚く。
「スピカと知り合いなのか。なら、今年入ってくるペアのサダルスウドやそのお姉さんのプロキオンとも知り合いか?軍人魔術師になると自動的に魔術師養成学校に入学できるんだ。ここで立派な魔術師になる訓練をするわけだな。ま、そんなことより前の方の席がみえるか?あのふたつ空いてる席がお前達の席だ。仲がいいだろうと思って隣同士にしておいた。」
先生は親指を立ててウインクをする。気さくな先生だ。
ふたりが席に着くと厳かな音楽が流れ始め、校長先生が壇上に立った。
「えー、今年も新しい魔術師の卵たちを迎え入れられて嬉しく思う。魔術師軍人のもの、魔術師見習いのもの、それぞれだろうが……」
校長先生の長い話が終わる頃にはノアはうとうとしていた。
横を見ると銀髪に紫の瞳の綺麗な令嬢が座っていた。
自分とは住む世界が違いそうだ。と思った時。
「ふふ。退屈?」
そんなふうに声をかけられ、ハシェルはドキッとした。
「あ、あの…お名前を……」
「私?私レフィーナ、よろしく。」
「ぼ、ぼくハシェルです。こっちはノアで……」
「あらあら、ノアちゃん寝ちゃってるじゃない、ふふ」
クスリと笑うレフィーナという少女はとても可憐で妖精のようだった。ハシェルはレフィーナは本当の女の子だろうか、いや女の子だろう、と謎に葛藤をしながらレフィーナを見た。
と、ハシェルはふと後ろを見、げっと声を上げそうになった。そこにはふんぞりかえって堂々としているサダルスウドがいた。
「何ですかあなた」
サダルスウドは怪訝そうな顔をしている。
「忘れたんですか。ハシェルですよ。」
ハシェルは呆れたような顔をして言うとサダルスウドは合点がいった様な思い出したような顔をしてハシェルを見る。
「ああ。ハシェルか。」
思わず敬語が抜け落ち、からりとした表情をみせる。
「ほら、今から属性分けが始まるぞ」
サダルスウドがハシェルの後ろをゆびさす。
前を見ると先生が壇上に立っていた。
「よーし!今から惑星の属性分けするぞ」
「惑星……属性分け?あの、先生僕無魔力者なんですが!」
ハシェルは戸惑い、手を挙げて先生に尋ねる。
「考えが古い!たとえ無魔力者でも人であれば少なくとも一つの惑星から加護を受け取っている、今や常識だ」
「えっそうなんですか?」
「そうだ。その中でも主な惑星とはすなわち、火星水星土星木星。すなわち火、水、土、木!たまに金星、海王星や天王星なんかの加護を受ける者もいるが95パーセントは今言った4つの惑星のどれかに属する」
「あの、もうひとつ、質問しても?惑星の加護というのは星の加護とは別ですか?」
「全然違う!星の加護、星座の加護、惑星の加護すなわちこの3つが星々の精霊が人に与えた加護だ。もっと知りたいか?」
先生はハシェルの方を見てニヤリと笑う。
「はい!知りたいです!!」
ハシェルは身を乗り出す。
それをみてレフィーナはおもわず微笑む。
「いいだろう!すなわちここからは授業の範囲になるが教えよう!」
先生はくるりと身を翻し錬金術で黒板を作り出す。
後ろの黒板に字を書いていく。
「第1!それはすなわち惑星の加護!これは生まれた瞬間からどの人間も持っている。力の代償はない!使う時は呪文を使って惑星から力を引き出すからだ !」
「第2!それはすなわち星の加護!これは選ばれたものしかなれない!一般的に星の魔術師は星の加護を持ちし者がなる!その力の代償は生命力!生命力を削り代償として特異的で強い力を手に入れる。6等星から一等星までランク分けがなされている」
「第3!それはすなわち星座の加護!これは世界で14人しかなれない」
「はいはーい」
「なんだ」
「12星座だよね?なんで14人なの?」
「いい質問だ!それはすなわち双子座は2人契約できることと
もうひとつ、昔は13星座だったんだ。その名残で、未だにへびつかい座の加護も残っているからだ」
「話を続けるぞ。すなわちその星座の加護の代償は生命力と人間性の変化だ。趣味嗜好や考え方や歩き方に至るまで星の精霊と同化していく」
ハシェルはセラフィエルを思い出した。セラフィエルは年々セラフィムに同化していると言っていた。ゾッとした。
「で、だ。12星座にはその代わり4属性がある。火の星座水の星座風の星座地の星座だ。」
先生は書き記したあと前を見る。
「この中にも星と契約しているからと慢心している者もいるだろう。だが惑星の加護も侮るなよ?星の魔術師にはなれんが立派な魔術師や魔術師軍人になった人を俺は知ってる」
そして話終わると先生は壇上の棚から水晶を出した。
「今からこの水晶に全員手をかざせ。属性によって色が変わり、加護を受けてる惑星の紋章が現れる。そしてそのあと保有魔力量と提供魔力量負荷試験を行う。計測計があるから……」
「はいせんせー!」
「なんだ」
「提供魔力量負荷試験てなんですかーー?!」
「そんなことも知らんのか!」
先生はびっくりしながらも説明を続ける。
「星、太陽、月、は石と違い魔力の源が臓器になっていることはない。故に星や太陽や月から魔力を提供してもらっている。
その提供魔力に対しどれほどの量を耐えることができるのかを測定する。これが高いと使える魔力量が増えたり、攻撃されても耐えれたりする。一昔前までは痛みを伴う計測方法だったが、今は痛みは伴わないから安心するように!」
ノアはそれを聞いて安心したのか席に座り直す。
「じゃあまずは惑星の属性分けからだ!順番に並べ!」
その声で生徒たちはゾロゾロと水晶に1列に並ぶ。
「火星は赤!木星は緑!土星は橙!水星は青だ!それぞれ色を見たら俺に教えるように!虚偽の申告はするなよ!どうせ後でわかるからな!」
生徒たちは順番に水晶に手をかざしていく。
「緑だわ!」
「橙だー土星か」
次々に色が変わる水晶は見ていて楽しい。
レフィーナも手をかざす。すると水晶は緑に変化する。
レフィーナは微笑みながらハシェルに手を振る。
ついにハシェルとノアの番が回ってくる。ハシェルはレフィーナに手を振り返した。ノアが手をかざすと水晶は青に変わり、☿のマークが浮き出てきた。水星だ。
ノアは大きな声で先生に向かって叫んだ。
「せんせーー!青でーーす!」
「名前も言わんかノアーー!」
先生はノアの調子になれたようで、軽く言葉を返す。
ハシェルの番が来た。ハシェルは不安になりながら手を翳す。
すると半分ずつ、白と赤が現れた。♂と♅のマークが現れる。
ハシェルは思わず魔導書を捲る。この記号は…火星と天王星だ。何かの間違いだろうか。ふたつも現れるなんて。ノアも不思議そうにしている。
「先生ー!赤と白なんだけど!!白ってなんだったけ!?」
一気にクラス中がざわつき、色々な声が飛び交う。
すると先生は驚いてもう1回試すように言い、水晶のところまで寄ってきた。ハシェルは先生や他の人の居る前でもう一度手を翳す。先程と同じように赤と白が現れ、火星と天王星のマークが現れる。先生は唸る。
「ふたつ持ちか…だが悪いな、天王星の力はまだよく分かっていないんだ。火星の方は力を伸ばしてやれるが。」
「わかりました。」
ハシェルはノアとレフィーナの方に向かう。
ノアはキラキラとした瞳でハシェルの手を取る。
「ふたつも持ってるなんてすごいよ!流石ハシェル!」
「ハシェルすごいね。」
レフィーナも嬉しそうに遠くから小さく拍手をしてくれた。
すると後ろからまた歓声が上がる。サダルスウドだ。
「サダルスウドくんはやっぱり1級魔術師ね!一等星のサダルスウドとも契約してるし、何より見て!3つ持ちよ!」
貴族であろう女子のその声にハシェルとノアは慌ててサダルスウドの方を見る。
サダルスウドは青、濃い青、そして緑が出ていた。
「おお!サダルスウドは水星、海王星、木星か。流石だな!」
先生も驚きながら賛辞を送る。サダルスウドは胸を張っていた。そして笑みを浮かべながら皆に手を上げる。上の席の方を見るとスピカがはいはい、とでも言うように笑っていた。
「ふん。3つ持ちなんて当然ですよ。」
すると先生も嬉しそうに言う。
「水星、海王星、木星はどれも極めやすい惑星だ。それにお姉さんのプロキオンも海王星、水星、木星だから分からないことがあったらお姉さんに聞くといい。」
会場からもまばらに拍手が聞こえてくる。
最後の1人まで測り終わると先生は次は棚から何かを出す。
「次は魔力量と提供魔力負荷試験を行う。この測定器の握るところが見えるか?そこを掴むように!」
それは測りの形をしていて、メモリが円形に並んでいる。上に受話器のようなものが設置されていて、それを掴めということだろう。羅針盤のように赤と青の針がふたつ並んでいてゼロから針が動く仕組みだ。
「魔力量は100以下は一般的に無魔力者。500以上は高い、1000以上だったら1級魔術師。魔力量負荷も100以下は耐性なし、500以上は高い、1000以上だったら1級魔術師だ。分かりやすいだろ?さっきのサダルスウドやハシェルみたいなことがあるかもしれないから俺も一緒に見て記録するぞ。」
また先程と同じように生徒全員が計りの前に1列に並ぶ。
「480かぁ…あと少しで高いのに!」
「おれ501だったぜ!」
「220って低いよな?」
そんな声が聞こえてくる。
レフィーナの番が回ってきた。
レフィーナが静かにゆっくり計測器の持ち手を握る。
すると赤と青の針が右を向く。会場は誰が1番の数値をだすかでガヤガヤと賑やかになってきた。会場の様子を見ているうちに遂にノアとハシェルの番がまわってきた。
まずはノアからだ。ノアは勢いよく計測器の持ち手の部分を掴む。すると赤い針と青い針が同時に動き始めた。2つとも同じくらいのところで動きを止める。
「魔力量730に魔力量負荷750。バランスが取れている。
いいぞ。おまえは優秀になるぞノア!!」
「えっへへ」
ノアは褒められて嬉しそうだ。
会場からも今日いちばんはこの子かな?いやまだふたつ持ちと3つ持ちがいるぞ、という声がちらほら聞こえてくる。皆の視線がふたつ持ちだったハシェルに集まる。
ハシェルもドキドキしながら装置を握る。
すると青の針は動かず、赤の針だけが勢いよく右を向いた。
「なっ…」
先生は驚いている。魔力量はゼロ。予想通りだ。だが、魔力量負荷は…
「10000以上!?」
先生のその声に会場は一気にどよめいた。
ほかの教師や生徒たちは呆気にとられている。中には数値を見ようと立ち上がるものまでいた。
「あっ、あの、間違いじゃ…」
ハシェルが控え気味に言うが、先生は首を振る。
「機械に異常は見られない。これが正確な数値だ。」
先生のその言葉を皮切りに一気に拍手が巻き起こった。
初めて包まれた熱を帯びた拍手喝采にハシェルは身を竦めた。ノアは呑気にすごいすごいと飛び跳ねている。レフィーナは目を丸くしてハシェルを見ている。サダルスウドはふん、と拗ねて顔を横に向けて数値を見ないようにしている。
「10000越えといえば4大魔女や四大聖人に匹敵する
ハシェル、おまえは只者じゃない。きっとおまえは何かを成し遂げるために生まれてきたんだ。誇りに思いなさい。」
拍手の中で、賛辞のなかで、ハシェルはぼんやりパルの予言を思い出していた。――運命の子。その言葉が何故か思い浮かんだのだ。誰にも言われていないが、どこか心の中でそのことばだけが腑に落ちた。
「10000越えなんて君すごいね!」
ハシェルは声をかけられはっと振り向く。そこにはメガネをかけたソバカスの茶髪の少年がいた。その姿を瞳に映した瞬間、ばしゃり。カメラで写真を取られる。
「えっ、えっ、なんですか?」
ハシェルが困惑しているとその少年はハシェルの手を握る。
「こんにちは!僕記者をやってるジョン!よろしくね!
早速だけどあとで取材させてね!」
ハシェルは驚く。記者がなぜこんなところに。
「僕これから3年魔術師養成学校専任の記者になったから!」
そういうとジョンは観客席に戻っていく。
賑やかな人だ。ふと横を見るとサダルスウドがいた。
「邪魔ですよ。どいてください。」
サダルスウドはハシェルをうざったく感じているようだ。
「観客の拍手を浴びて誇らしいですか?魔力量0なのに滑稽なことです。僕がお手本を見せてあげますよ。」
そしてサダルスウドが計測器の持ち手を握る。するとそれを見て観客が一気に盛り上がる。
「3つ持ちが測るぞ!」
「プロキオンの弟だろ!?絶対今回の最強はあいつだ!」
青い針と赤い針がゆっくりと右を向く。
「魔力量1700魔力量負荷1200!」
先生の驚いた声が響く。
「わおわおわーお!!サダルくん!ブラボーね!」
1人、キャラが濃ゆそうな人が観客席にいた。濃い化粧でボブだが、どう見ても男の人だった。そして魔術師軍人関係者だろう、腕章をしていた。その観客席の列を見てみるとデネブやアルデバラン、リゲルまでいた。勢揃いと言った感じか。ここに魔女が来たら瞬殺されそうだな、とハシェルは思った。
サダルスウドに向けても拍手が響く。ふとレフィーナを見ると嫌そうな顔をしている。ハシェルはそっと尋ねる。
「あの、サダルスウドと仲悪いんですか?」
するとレフィーナは綺麗な眉を斜めに釣り上げた。
「あの子、リゲルの崇拝者でしょ。だから嫌なの。」
えっ、とハシェルは驚く。リゲルさんといえば、感じの良い人だった。それに強くて軍人魔術師として功績もあげている。
それの一体何が気に入らないのだろうか。
「あいつは善人の皮を被っているだけ。実際凄くやな奴よ話してみたらわかるわ。」
「えっ、あの、お二人の関係って……」
ハシェルは恐る恐る尋ねる。レフィーナは嫌そうに答える。
「婚約者よ」
「こ、こ、こ、婚約者!?リゲルさんと!?」
「ええ、そうなの」
レフィーナは困ったように言う。
そして左手の薬指の指輪をみせる。
「これ、私が4歳の時にリゲルが私に渡した魔法の指輪らしいんだけど、正直外したいのよね。でも絶対外すなっておじい様が」
「えっ4歳の時に婚約指輪を?」
「この指輪年々指に合わせて大きくなるんだけど決して外れないの。結婚も勝手に決められたものだし。」
するとノアもやってきた。
「ねえねぇハシェルその子と仲良いの?」
「さっき仲良くなったレフィーナさんです。」
「よろしくお願いします」
「よろしく!!」
「こちらはノアです。」
「よろしく!」
「よろしくお願いしますわ」
ノアはブンブンとレフィーナの手を握って上下に振る。
その時先生の声が聞こえた。
「よし!いまの計測値と属性でクラス分けを行った。あとは4人のエステラに挨拶をしてもらうから全員席に着けー!」
エステラとはなんだろう。ハシェルは席に着きながら後ろのサダルスウドに聞いた。
「あの、サダルスウド、エステラとは何ですか?」
するとサダルスウドはふん、と鼻を鳴らす。
「そんなことも知らないんですか? エステラとは4つの属性のトップですよ。火星のマールス、水星のメルクリウス、土星のサトゥルヌス、木星のユピテルです。」
「そうなんですね…知りませんでした」
ハシェルは無知を恥じるがサダルスウドはそんなことより気になることがあるようだ。
「ハシェル君、魔力負荷が高いからあの魔女の攻撃で痛がらなかったんですね。なぜ高いんですか?なにか訓練でも?」
サダルスウドは興味津々でこちらを見る。
「いえ…特に訓練などは……」
その時サダルスウドがしぃ、と指を立てた。
振り向くと4人の学生が壇上に立っていた。
1人は短くて赤い髪、1人は長い青い髪、一人は眼鏡に緑のお下げ、ひとりはオレンジの短髪だった。
赤い髪の人から順に挨拶をするようだ。
「俺は火星のエステラ、マールスだ。火魔法が使える。火星属性になったヤツらは俺が面倒を見るからな。よろしく。」
長い青い髪の女性が次に壇上に上がる。
「……私はメルクリウスです。水魔法が使えます。水星属性の人達は困ったことがあれば私に相談してください。よろしく」
緑のおさげの少女が慌てながら壇上に上がる。
「私はユピテルっ!えと、あの、よろしくお願いしますっ!」
ユピテルは顔を真っ赤にしながら挨拶をするとドタドタと慌ただしく壇上をおりた。次に来たのは橙の短髪男子だ。
「俺はサトゥルヌスだ!土星属性の子は遠慮なく俺に相談してきてくれ !」
そういうと4人はぺこりと頭を下げた。
会場から拍手が巻き起こる。入学式はこれで終わりのようだ。
拍手が終わると続々と会場の人々が席を立つ。
「新入生諸君は今から読み上げる生徒は俺の担当だ!
呼ばれた者は俺に着いてくるように!」
先生はそういうと名前を読み上げる。次々に生徒が立ち上がり、先生の元へ歩いていく。ハシェルと離れ離れになるのだろうか。ノアは不安になった。だが、その不安はすぐにかき消されることとなる。
「ハシェル!ノア!」
先生が読み上げた名前に2人同時に嬉しそうに立ち上がる。
「レフィーナ!サダルスウド!」
なんとレフィーナとサダルスウドも呼ばれた。
ハシェルとノアはレフィーナの方を見る。レフィーナは吃驚していたが、徐々に口角が上がる。
「ハシェル、ノア、同じクラスになれて嬉しいですわ」
終いにはとても可愛らしい笑顔を見せてくれた。
ノアもやったね!とレフィーナの手を握る。
「なんですか。たわむれて。たかが同じクラスになっただけじゃないですか、はぁ…」
サダルスウドは溜息をつきながらハシェル達を尻目に先生の方へ向かう。ノアとレフィーナはムッとしながらこそこそ内緒話をした。あれが世にいうガールズトークなのだろうか。
「感じ悪いねー」
「ねー」
そんな声が聞こえてきた。すると先生がこちらをみる。
「ほらお前たちが最後だぞー。早くこっちこい!」
ハシェル、ノア、レフィーナは慌てて先生のもとへ向かう。
「よし!揃ったな!いくぞ!」
先生の掛け声で会場をあとにした。そして20人程度が列をなし、かもの子供のように先生の後を着いていく。
教室に着くと先生は属性に分けて席を決めようとしたが、ノアとレフィーナは、なにかコソコソ話をしたあと、レフィーナが先生に挙手をする。
「先生!仲良い子と一緒の席がいいです!」
すると先生は快く頷いた。
「いいだろうレフィーナ!その意見を取り入れる。席は自分たちで決めてよし!」
結果として、クラス中が雑然とし始めた。一緒に座ろう、だの、君はいや、だの。サダルスウドは人気でもう既に取り巻きを二人侍らせている。サダルスウドはハシェルたちの後ろの席に陣取った。
「サダルスウド様、こいつらとお知り合いなんですか?」
「腐れ縁です」
「どうせしょうもない連中でしょう」
するとレフィーナとノアが勢いよく振り返る。
ハシェルは慌てて2人を止めようとしたがもう遅かった。
「僕の方が年上なんだからサダルスウドの方が気遣いすべきじゃん!?それなのになんかやな感じー!」
「その性格だけは治すことをオススメしますわ、ハシェルに魔力量負荷耐久試験で負けたサダルスウドさ、ま♡」
ノアもかなり口が強い方だがレフィーナも負けていない。ハシェルに負けた、と言われた瞬間サダルスウドの眉がピクリと動いた。
「はあ?」
サダルスウドがドスの効いた声を出した。これはまずい。
「ならハシェル魔法で決闘しましょう。今すぐに…」
サダルスウドのこめかみの血管がピキピキと音を立てる。
だがそれは途中で打ち切られた。先生が来たからだ。
「魔法決闘は教師がいて、正式な場じゃないとできないぞ。物騒なことを言ってないで、俺の話を聞きなさい。ノア、レフィーナ、サダルスウド」
サダルスウドは何かを言い返そうとしたが辞める。
なんにせよ、これから魔術師養成学校学校生活が始まるのだ。ハシェルとノアは期待に胸をふくらませた。
パル(設定)
後世で賢者として名を残す彼は3000年前奴隷でもあった。
その当時錬金術は誰でも使うことが出来た。
真理の扉。それを錬金することが各国の名だたる錬金術師たちの目標でもあった。そうとも露知らず、有名な錬金術師の奴隷であったパルは研究の手伝いをする中で自力でその答えを導き出し、こっそり真理の扉を作ってしまう。真理の扉に鍵はかかっておらず、実はパルは開けるか迷っていたが、それを見たパンドラが一緒に開けようと提案。
パルとパンドラは一緒に真理の扉を開けてしまった。
後世では、パルひとりが開けたと思われているが、実はパンドラが興味津々に開けたいと強請って開けている。
パルはおじいちゃん口調だが若作りしたいと思っている。
趣味は杖を手入れすること、好きな食べ物はアジの南蛮漬け。
小さい時に人攫いに攫われており、両親とはその時に離れ離れになってしまった。1人屋敷に売られ、心細かったパルを見て先に売られてきたパンドラが励ましてくれた。実はパンドラの方が歳上である。神々の世界に行ってからは概念としてふわふわと不安定に存在していた。現世を観測することは可能であり、パルは何世紀もの間現世を観測していた。それにより意識を保っていた。ノアに呼ばれてからは意識が消える不安もなくなりすこぶる快調。




