【2-5】光と影
星晶院・議事階 奥密室
「魔力供給ライン、低下率7%。星脈回復の兆候なし。召喚の代償は、想定以上です」
「ならば、勇者には“依存”させねばならぬ。我が国の魔術技術に、そして彼女に──」
「フェルグランド嬢には引き続き“内密の件”を進行させていただいております」
「アークロウ衛兵については?」
「すでに、いくつか“火種”を撒いております。『魔力情報の不正流出疑惑』『詰所での魔術器具の私用』──」
「勇者が“彼”に疑念を抱けばよい。我らは口を出す必要などない。……“彼女”が動く」
会議室の蝋燭が、ゆらりと揺れる。
---
宮廷魔術師官室・夜
「……ふぅ」
書類に魔術封蝋を押し終えたエリセリアは、窓の外を眺めて微笑した。
報告書には、ほんの一文が添えられていた。
> 『勇者天野様、魔術理論適合率:異常に高い傾向。国家的依存が見込まれる。
なお、レイン=アークロウ氏に関して、魔力反応に不穏な揺らぎあり。調査を要す。──』
「……少しずつでいい。“レイン”には気づかれないように」
言葉は誰にも届かない。
だが、表情はやわらかく、美しかった。
まるで、それが“恋人の名を呟く”ような調子だった。
---
夜・王都詰所前
「……最近、エリのことで何か知らねえか」
レインは、かつての同僚に訊ねた。
「いや……けどな。上の人間ってのは、仲間を選ぶとき、もう下なんか見てねぇよ」
「……それでも」
「衛兵なんてのはよ、都合が悪くなったら、いくらでも替えが利く。お前、いいかげん目ぇ覚ませよ」
その言葉が、レインの心に刺さった。
だが、彼はまだ──信じたかった。
「エリは、そんな奴じゃねぇよ……」
──だがその時、すでに地面には、
“火種”がいくつも撒かれていた。
---




