表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/19

【2-2】儀式の日

──神託は落ちた。それは光ではなく、裂け目だった。



---


王宮・星晶院尖塔──第九術式魔導陣階


 空気が張り詰めていた。


 そこは王都で最も禁忌に満ちた場所、星晶院の尖塔最上部──

 その中心に刻まれた九重の術式が、七十二の光脈を巡らせ、魔力を吸い上げていく。


「……高度領域、収束安定。外周に干渉なし。上澄、許容内……」


「第二相、転移対象次元座標、確定──カプラ式境界展開、開始!」


 刻印魔術師たちが怒号のように詠唱を飛ばす。

 足元の魔方陣が青白く輝き、空間の密度が変わる。


 その中心に立つのは、ただ一人。


 エリセリア=フェルグランド。


 星晶院副長であり、王国でも指折りの魔導士。

 その身に七系統を継ぎ、“召喚”の禁域に踏み込める唯一の若き才媛。


「……大丈夫。想定どおり。問題ない」


 指先を震えぬように、心だけを張り詰める。

 傍らに母の形見のペンダントが揺れていた。


「いきます──召喚式、最終段階へ」


 その瞬間、空間が“鳴った”。




 光があふれた。


 言葉ではない。眩しさでもない。

 “意味”を持ったまま、世界そのものが折れ曲がる。


 魔方陣の中心が、灼熱の白に変わった。


 風が逆巻き、結界がうなる。術者たちが一人、また一人と倒れる中、エリセリアだけが立っていた。


 ──そして。


 そこに“少年”がいた。


 何か綺麗な布で出来た、まっ黒い上着と黒いズボン。乱れた黒髪。

 痩せた輪郭で、目には困惑の色を浮かべている。


「……っ……な、に……?」


 その少年は、膝をついたまま、深く息を吐いた。


「ここ……どこだ……母さん……」


 耳に届いた言語が違うはずなのに、彼の声は奇妙なほど澄んで、はっきりと理解できた。


「異界転移、成功……個体座標、完全補足……!」


 側近の声が上がる。


「異世界人類体──正確には、“地球”からの召喚対象! 本物です!」


 誰かが叫ぶ。誰かが崩れる。

 誰もが喜び、そして恐れた。


 エリセリアは、ただ静かに彼を見つめていた。


 そして、ゆっくりと微笑んだ。


「──ようこそ。あなたが……勇者様ですね」



---

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ