↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
死に戻りは一度きり――「無才」の俺は禁忌の隠し職を手に入れ、クラスメイトの覚醒イベントを先回りする  作者: 夜守灯
王都祭壇編

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/60

第53話 邪神降臨?

グレゴリーの顔色が変わった。


「止めろ!」


初めて、自ら部下へ命令を下した。


左右の部屋から、三人の血月教徒が飛び出す。


そのうち一人は、火のついた爆発の巻物を胸へ括りつけたまま、オースティンへ突進した。


「血月のために!」


オースティンは、男へ視線すら向けなかった。


金色の薬液が、体内へ流れ込む。


次の瞬間――


轟音。


銀白色の聖光が、彼女の身体から爆発した。


先頭を走っていた邪教徒は、一瞬で吹き飛ばされる。


胸元の巻物が爆発するより早く、身体が壁へ叩き込まれた。


オースティンは片手で剣を振るう。


銀光が一筋、空間を駆け抜けた。


三人の血月教徒が同時に倒れる。


流れ出した血が、床の上へ広がっていった。


オースティンは聖光の中から歩み出る。


麻痺は、まだ消えていない。


だが、急激に上昇した能力値によって、強引に押さえ込まれていた。


その眼差しは、手にした剣よりも冷たい。


「次は」


グレゴリーを見る。


「お前の番だ」


グレゴリーは、無意識に一歩後退した。


オースティンの姿が、その場から消える。


「な――」


銀白色の剣先が、すでに胸元へ迫っていた。


グレゴリーは二本の短剣を交差させる。


ガキィィン――!


二本の刃が激しく湾曲した。


グレゴリーの両足が床から浮く。


身体ごと勢いよく吹き飛ばされ、背中で二つの石台を立て続けに粉砕した。


最後には、そのまま壁へめり込む。


胸元の指骨の首飾りが千切れた。


数十本の指骨が床へ散らばり、激しい音を立てる。


オースティンは間髪を入れず追いついた。


グレゴリーが壁から抜け出した瞬間には、すでに剣が振り下ろされている。


男は頭を下げて回避した。


髪の一部が宙を舞う。


二撃目が左肩を貫いた。


三撃目は肋骨に沿って長衣を切り裂き、胸へ骨が見えるほど深い傷を刻む。


「待て!」


グレゴリーが血を吐いた。


「オースティン! 地下から感じる魔力が何なのか、知りたくないのか!?」


剣は止まらない。


「教えてやる!」


「教会の作戦を漏らした者が誰なのかも知っている!」


オースティンの蹴りが腹部へ突き刺さった。


ドンッ!


グレゴリーが再び吹き飛ばされる。


「よく喋る男だったな」


オースティンは、すぐに距離を詰めた。


「続けろ」


剣が落ちる。


グレゴリーは残った短剣で受け止めた。


だが、刃は一瞬で折れた。


柄を握っていた手が裂け、鮮血が噴き出す。


「お前が殺した者たちについて話せ」


「私の指を、どこへ飾るつもりだったのかも」


「それとも――」


オースティンは長剣を高く掲げた。


「抵抗できない相手を前にしたときしか、笑えないのか?」


グレゴリーの顔から、ついに笑みが消えた。


「狂った女め」


懐に隠していた暗赤色の結晶を握り潰す。


血霧が一気に爆発した。


グレゴリーの身体が、その中へ溶け込んでいく。


「私を殺すだと?」


「まだ早い!」


声が遠くから響いた。


「血月の増援が到着すれば、お前たち全員を――」


オースティンは両手で剣を握った。


凄まじい聖光が、剣身へ集まり始める。


付近にいた神官たちは、魔力の変化へ即座に気づいた。


「全員、下がれ!」


「防御を展開しろ!」


グレゴリーの姿は、すでに通路の突き当たりへ現れていた。


あと一歩進めば、脱出用の通路へ入れる。


オースティンが剣を振り下ろした。


「【聖契裁決・天穹断罪せいけいさいけつ・てんきゅうだんざい】!」


銀白色の光が、通路全体を呑み込んだ。


壁。


扉。


実験器具。


血霧。


人間が隠れられる場所は、すべて光によって引き裂かれていく。


「やめ――!」


グレゴリーの声に、初めて本物の恐怖が混じった。


次の瞬間。


その叫びは轟音に掻き消された。


ゴオオオオオッ――!


剣光は数十メートル先まで貫通した。


地下拠点全体が、激しく揺れる。


やがて光が薄れていく。


前方に残されていたのは、強引に押し広げられた巨大な瓦礫の道だけだった。


グレゴリーの姿は、どこにもない。


百本以上の指骨で作られていた首飾りも。


聖光の中で、跡形もなく灰へ変わっていた。


攻撃の真下にあった床も、その威力には耐えられなかった。


広範囲の石床が崩落する。


その下から、地下第三層の通路の一部が露出した。


数人の神官が、下層で改造魔獣と交戦している。


突然頭上に開いた巨大な穴を見上げ、呆然としていた。


オースティンは片膝をついた。


剣を杖のように床へ突き立て、身体を支える。


呼吸は、激しく乱れていた。


聖骸秘薬(せいがいひやく)】は能力値を上昇させる。


だが、すでに消耗した体力や魔力までは回復しない。


先ほどの一撃によって。


残っていた力は、ほとんど空になっていた。


それでも、グレゴリーは死んだ。


オースティンは崩壊した通路の先を見据え、奥歯を噛み締めた。


「厄介な男だった……」


その言葉が落ちた直後。


ドンッ。


さらに深い地下から、鈍い震動が伝わってきた。


オースティンは勢いよく顔を上げる。


先ほどから不安を抱かせていた魔力が。


一瞬で、何倍にも膨れ上がった。


陰冷な気配が、床を。


壁を。


空気を伝って広がっていく。


見えない巨大な口が、地下拠点全体を突然覆ったかのようだった。


飢え。


どこまでも尽きることのない飢餓。


近くにいた神官の顔から血の気が引いた。


その場へ膝をつく。


「これは……何だ……」


「魔力が……」


「喰われる……」


オースティンの胃にも、強烈な空虚感が広がった。


生理的な空腹ではない。


生命。


魂。


魔力。


そのすべてを、何者かに見つめられているような恐怖。


普通の邪教徒が生み出せる魔力ではなかった。


オースティンはかつて。


教会最深部に保管された封印記録の中で、これと似た残滓を感じたことがある。


まさか。


邪神――?


オースティンの表情が一変した。


地下第三層には、天城たちがいる。


あの学生たちは、自分たちが何を相手にしているのかさえ知らない。


「まずい!」


無理やり立ち上がる。


毒は今も、体内を侵蝕し続けている。


魔力も、すでに枯渇寸前。


それでも、オースティンは止まらなかった。


剣光によって開いた大穴へ、そのまま飛び込む。


不吉な魔力が伝わってくる方向へ、全力で走り出した。


一刻も早く。


あの場所へ辿り着かなければならない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。