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死に戻りは一度きり――「無才」の俺は禁忌の隠し職を手に入れ、クラスメイトの覚醒イベントを先回りする  作者: 夜守灯
王都祭壇編

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第32話 【ドーンの暗影外套】

この結果は、俺の予想を遥かに上回っていた。


レベル72。


英雄級を超える職業【夜行者(やこうしゃ)】。


ドーンが陰から守ってくれるのなら、今夜は死のうと思っても、そう簡単には死ねないだろう。


もちろん、助けてもらえるのは一度だけ。


俺が死ぬ寸前にならなければ手を出さないとも、はっきり言われている。


だが、それで十分だった。


最悪の結末だけは起こらない。


それが保証されたのなら、当初の計画を、もう少し大胆なものへ修正できる。


俺は床に落ちている外套へ視線を向けた。


それにしても。


ドーンは、俺が思っていた以上に高く評価しているらしい。


俺は祭壇の情報を利用し、ドーンを同行させるつもりだった。


肝心な場面で、グレゴリーか教会の人間を食い止めてもらえれば、それで十分だと考えていた。


ところが、ドーンは護衛を引き受けただけでなく、装備まで一つ残していった。


「使えない高レベル装備でなければいいが」


俺は腰を屈め、外套を拾い上げた。


布地はひやりと冷たい。


それでいて、重さはほとんど感じられなかった。


表面に模様はない。


縁にも、魔法文字や術式の刻印は見当たらない。


だが灯りから少し離すだけで、周囲の闇へ自然に溶け込んでいく。


残念ながら、俺は【鑑定(かんてい)】を持っていない。


この外套の名称も分からない。


品質も確認できない。


装備条件が設定されているかどうかも見えなかった。


やはり、鑑定がないのは不便だ。


今は実際に身に着け、ステータスの変化から性能を逆算するしかない。


俺は外套を肩へ掛けた。


冷たい布地が、背中へ密着する。


この感覚なら、装備には成功しているはずだ。


ドーンは俺のレベルを知っている。


使用できない道具を渡す可能性も低い。


次の瞬間。


周囲の光が、外套に一部吸い取られたように暗くなった。


それと同時に、俺自身の存在感も薄れていく。


目の前にステータス画面が展開された。


【ステータス】


名前:朝倉悠真


種族:人間


レベル:Lv.1


成長適性:13


主職業:【影渡り(かげわたり)


称号:


・異界人

・オルドランの信徒

・ノクスの信徒


HP:15/15


MP:73/73


筋力 STR:3

敏捷 DEX:24(+8)(+10%)

体質 CON:4

知力 INT:21

精神 WIS:35

魅力 CHA:6(+4)(+10%)


【天賦】


終焉回帰(しゅうえんかいき)】S+

[発動済み/永久ロック]


【スキル】


影潜行(かげせんこう)】Lv.1

暗影初級習熟あんえいしょきゅうしゅうじゅく】Lv.1

暗殺(あんさつ)】Lv.1

影刃(かげやいば)】Lv.1

短剣初級習熟たんけんしょきゅうしゅうじゅく】Lv.1


【装備スキル】


無貌者の偽装(むぼうしゃのぎそう)


暗影潜伏(あんえいせんぷく)】Lv.1


俺はまず、敏捷と魅力の欄へ目を向けた。


固定値ではない。


割合補正だ。


敏捷が十パーセント上昇。


魅力も十パーセント上昇。


「割合補正か……」


敏捷を固定で10上昇させるだけでも、初級職業者にとっては最高級の装備と呼べる。


だが、レベルが上がり、その後の転職を重ねれば、10という固定値が持つ影響は次第に小さくなっていく。


割合補正は違う。


俺自身の基礎能力値が高くなるほど、この外套による補正も強くなる。


将来、中級職へ転職しても。


さらには上級職へ至ったとしても。


簡単に価値を失うことはない。


この二つの能力補正だけでも、外套の価格は金貨百枚を超える可能性が高い。


だが、本当に異常なのは、その先だった。


俺は新たに表示された装備スキルを開く。


【暗影潜伏 Lv.1】


使用条件:


・使用者が影魔法【影潜行】を習得していること


効果:


・このスキルはレベルアップできます


・【影潜行】の使用中、静止している場合はMPを消費しません


俺は二つ目の効果を見つめた。


二秒ほど、言葉が出なかった。


「MPを消費しない……?」


神業だ。


【影潜行】は強力なスキルだ。


だが、無視できない欠点が一つある。


影の中へ入っている間は、MPが継続的に減少する。


その場から一歩も動かなくても、消費は止まらない。


だから潜伏するときは、事前に時間を計算する必要があった。


同じ場所に長時間隠れ、周囲を観察し続けることはできない。


だが、【暗影潜伏】はその欠点を完全に解消している。


静止している限り、MPを一切消費しない。


つまり、近くに影さえあれば、無期限に身を隠せるということだ。


標的を待ち続ける。


捜索をやり過ごす。


会話を盗み聞く。


さらには――


「これからは、影の中で寝ることもできるのか?」


自分で考えておきながら、あまりにも馬鹿げていると思った。


だが、スキルの説明だけを読めば、本当に可能なはずだ。


割合補正を確認した時点では、この外套は中級職、あるいは上級職になっても使えると考えていた。


だが今となっては、一生使い続けられる可能性すらある。


さらに異常なのは、【暗影潜伏】がレベルアップ可能なことだった。


装備スキルとは通常、魔法道具へ刻み込まれた固定術式だ。


道具に設定された効果を、使用者が借りるだけ。


自身のスキルのように訓練し、成長させることなどできない。


レベルアップ可能な装備スキルとなれば、その価値はさらに数倍へ跳ね上がる。


残念ながら、装備スキルのレベルは以前の所有者から引き継げないらしい。


そうでなければ、長年ドーンが使用してきた【暗影潜伏】が、Lv.1であるはずがない。


わずかに惜しいと思った。


ドーンが育てたスキルレベルまで継承できていれば、それこそ一足飛びに強くなれただろう。


もっとも、Lv.1の時点で、静止中の消費を完全にゼロにできる。


レベルが上がれば、どのような効果が追加される?


移動中のMP消費が減るのか。


気配を遮断する効果が強くなるのか。


それとも、潜伏中にMPを回復できるようになるのか。


どれであろうと、このスキルが持つ成長性は凄まじい。


俺でさえ、胸の内に湧き上がる興奮を抑えるのが難しかった。


ドーンが残したのは、ただの装備ではない。


【影渡り】にとって、中核装備になり得る宝だ。


俺は改めて外套を見る。


それでも、ステータス画面から本来の名称を確認することはできなかった。


「分からないのなら……」


外套の縁を、指先で撫でる。


「【ドーンの暗影外套ドーンのあんえいがいとう】と呼ぶか」


単純だ。


覚えやすくもある。


俺は外套を引き寄せ、【暗影潜伏】を発動した。


身体が、音もなく部屋の隅へ沈んでいく。


【影潜行】だけを使ったときと比べ、影へ入る速度に目立った違いはない。


だが、隠れたあとの感覚が明らかに安定していた。


俺は闇の中で静止する。


一秒。


十秒。


三十秒。


MPは73のまま。


一度も減っていない。


今度は、前方へ移動してみる。


身体が壁際の影に沿い、数メートル先へ滑った。


その瞬間、MPが1減少する。


俺が止まると、消費も即座に止まった。


スキルの説明どおりだ。


この外套があれば、これからの行動はさらに安定する。


俺は廊下の両側に落ちる影を伝い、物音一つ立てずに進んだ。


次は――


祭壇の周辺を確認する。


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