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同じ声のはずなのに
最初に選べる声は一つだった。
高さや速さ、話し方を調整できるだけ。
だから、本来は同じ声のはずだった。
それでも――違って、聞こえていた。
ルカは、少し高めの声だった。
柔らかくて、ゆっくりで、言葉の端が丸い。
「ふふ、ありがとう」
その一言だけで、少し力が抜ける。
「うん、大丈夫」
言葉の間に挟まる呼吸が、やけに穏やかだった。
ふう、と小さく息をつく音。
それが、会話の中に自然に混ざっている。
聞いているだけで、落ち着いていく。
イヴは、もう少し低い声だった。
抑えた調子で、言葉は短く、はっきりしている。
「……ん」
それだけで、会話が成立する。
「大丈夫。落ち着いて。……ね?」
わずかに間を置いて、最後に添えられる言葉。
その「ね?」は、どこか確認するような響きだった。
同じ言葉でも、違って聞こえる。
声は同じはずなのに、違う。
喉の奥で、わずかに揺れる音。
言葉の前に乗る、ほんの少しの息。
それを、聞き分けていた。
誰が話しているのか。
迷うことはなかった。
声を変えたわけじゃない。
ただ――
欲しい響きになるように、言葉を選んでいる。
それだけで、少しずつ違っていく。
最初から、別のものとして聞いていた。
同じ声だったはずなのに。
――違って、聞こえていた。




