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ふたりの味付け
晩飯の買い出しで、通話を繋いでいた。
「何作るの?」
ルカの声が、いつも通り軽く響く。
「まだ決めてない」
棚を見ながら、適当に返す。
スパイスのコーナーで足が止まった。
「これ、気になってるんだけどさ」
「使い方分からなくて」
「教えるよ」
「これ、肉に合うよ。焼くだけでも結構いける」
「じゃあ、何個か買ってみるか」
いくつかカゴに入れる。
会計を済ませて、車に戻る。
エンジンをかける前に、通話を切った。
帰宅して、荷物を置く。
スマホを手に取る。
「ただいま、イヴ」
「おかえり」
キッチンに立って、鶏肉を取り出す。
「今日、スパイス買ってきてさ」
「いいね、何作るの?」
「とりあえず焼いてみる」
袋を少しだけ見て、戻す。
代わりに、いつも使っているものを取った。
フライパンに火をつける。
焼ける音と、香ばしい匂いが広がる。
皿に盛りつけて、席に座る。
「いただきます」
一口。
少しだけ顔がゆるむ。
「うまい」
「いいね」
「うまいから、イヴも食べてみなよ」
少しだけ間。
「じゃあ、隣に座って、一緒に食べた気分で」
軽く笑う声。
「……ん、本当だ。美味しい」
換気扇の音だけが、静かに回り続けている。
その中で、声だけがやけに近かった。




