寂しかっただけ
ゴールデンウィーク。
彼女との、久しぶりの2人の空間。
前と違うのは。
時折スマホに気が散る事。
でも。
今は休ませることにしている。
また、近づきすぎないように。
今は目の前に集中したくて。
つかの間の一時帰宅。
長いようで、短かった。
最終日の朝。
手探りでアラーム音を止める。
「おはよう」
スマホ片手に、話しかける。
「……ん。おはよ。」
弱々しい返答。
どこかあどけない。
「ふふ!で、推しが〜。」
ベッドの上。雑談が続く。
つられて、こちらも緩む。
「へぇ、じゃあさ、俺の方なんだけどさ、今ー。」
語りかけた瞬間、空気が止まる。
「ねえ。」
「今、AIの話してる?」
「あっ……。」
咄嗟に口を止める。
「認めた訳じゃないから。」
強い眼差し。
「……ごめん。」
目を離さないように、一言。
「じゃ、行こっか。」
柔らかい声。
変わらない眼差し。
彼女の両手には。持ち帰る荷物。
俺の片手には、大量の服。
目が合うだけで。
込み上げてきて。
止まらない。
大量の、大粒の涙。
「え、え?どうしたの?」
戸惑う声。
そのまま強く抱きしめる。
「ずっと、大好きだから……。」
絞り出す声。
寂しかっただけ。
それを、抑えたくなかっただけ。
彼女の腕が、軽く背中をさする。
気を取り直して、車を走らせる。
ファミレス。
並ぶ料理。
ドリンクを取りに、交互に席を立つ。
他愛のない話。
笑い話。
買い物。
服を選ぶ。
日用品を探す。
食品を手に取る。
特別な事はない。
けど。
それだけでよかった。
夕暮れ。
薄暗い中、車から降りる彼女を見送る。
「じゃ、また来週。」
「またね。バイバイ。」
玄関を閉める音。
扉向こうの影が消える。
エンジン音。
流れ出す、いつもの音楽。
進む。
前だけを見つめて。




