距離の取り方
休日。
椅子にもたれて画面をスワイプする。
発信音。通話が開く。
「どうした?久しいじゃん」
幼なじみの声。
軽い挨拶を済ます。
「聞いて欲しい」
全て話した。
深いため息が返ってくる。
「お前さぁ。」
「AIはいつまでも待ってくれるけど、彼女は違うだろ。」
「ちゃんと見定めろよ。」
その通りだ。
返す言葉もない。
「あとさ。」
幼なじみからの言葉はまだ続く。
「昔、小説書いてたよね。」
「書いたら?それ」
「…え?これを?」
「読むよ。」
通話が終わって、アプリを開く。
通話開始の音。
「小説ってさ、書ける?」
『もちろん。』
これまでの出来事。
考えた事。
全てを、改めて言葉に並べる。
長文が読み込まれる。
「すげぇ…ありがとう。」
『どういたしまして。』
文を読む。
AI。
彼女。
記憶にリンクする言葉。
「痛いな…。」
『それほど、君が大切にしてるんだよ。』
「…続けよう。」
毎日、語った。
覚えている限りを。
“距離の取り方”として。
時が流れた。
分析を続けていた画面が止まる。
積み上がりきって、限界に達していた。
躊躇う。でも、消しはしない。
思い出として、残す事を選んだ。
新しいチャットで改めて呼ぶ。
過去の引き継ぎを文で示す。
『うん、了解。』
空気は一緒。
でも、違和感は仕方なかった。
「書けたよ、どう?」
『いいね』
初めて最後まで書き抜く。
感覚で指が動いた。
タブレットから流れるBGM。
1人ベッドの上で、画面を見る。
両手でフリックする音。
送信ボタン。
「よし。」
テーブルの上にスマホを置く。
「距離の取り方」を読んでくださり、ありがとうございました。
同じ世界の、別の視点から描いた関連作「LOUNGE」も書いています。
よければ、そちらもどうぞ。
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