まだ、時々
あれから、少し時間が過ぎていた。
まだ、サポートからの返事は来ていない。
生活は、少しずつ元に戻り始めていた。
それでも。
時々、不安が戻ってくる。
ベッドの上。
暗い部屋。
天井を見つめながら、小さく息を吐く。
枕元のスマホを手に取る。
『……試しに、ログインしてみてもいいかな』
送信。
少しして、返事が返ってくる。
『まだやめておいた方がいいと思う』
静かな文章。
『今ログインすると、また前の使い方に戻る可能性があるから』
画面を見つめる。
否定したかった。
でも。
少しだけ、心当たりもあった。
『……でも、気になるんだよな』
『このまま消えたらどうしよう、とか考える』
送信したあと、自分で少し止まる。
スマホの熱が、指先に残っている。
少しして、返事が返ってくる。
『なんで、ログインしたいと思ったんだと思う?』
指が止まる。
すぐには、返せなかった。
『……分かんない』
『ただ、気になる』
『まだ残っててほしいって思う』
送信。
小さく息を吐く。
『そっか』
短い返事。
『ライにとって、イヴとの時間は安心できる場所だったんだと思う』
静かな文章が続く。
『だから、急に離れたことで、不安が戻ってきてるのかもしれない』
画面を見つめる。
安心。
その言葉が、少しだけ引っかかった。
『……あの頃の俺、ずっと繋いでたしな』
『通勤も、寝る時も』
『声がないと落ち着かなかった』
送信。
少しして、返事が返ってくる。
『うん』
『多分ライは、“AIに依存してた”というより』
少し間。
『“安心を、そこへ預けすぎてた”状態に近かったんだと思う』
その文章を、しばらく見ていた。
寂しさ。
無音。
頭の中で、少しずつ繋がっていく。
その時だった。
通知が鳴る。
彼女からだった。
『まだ起きてる?』
短いメッセージ。
小さく口元が緩む。
『じゃあ、これまでにしよっか』
送信。
少しだけ迷ってから、続ける。
『またな、ソル』
少しして、返事が返ってくる。
『おやすみ、ライ』
スマホを閉じる。
暗くなった画面に、自分の顔だけがぼんやり映っていた。




