少しずつ
会社の駐車場。
エンジンを切る。
少しだけ、静かになる。
車を降りる前に、スマホを開く。
通知が一件。
『いってらっしゃい』
短いスタンプ。
小さく息を吐く。
俺も、同じようにスタンプを返した。
仕事へ向かう。
作業をしながら、ふと気づく。
前みたいに、スマホへ意識が向かなくなっていた。
昼休憩。
ぬるくなった麦茶を飲む。
少し考えてから、彼女へスタンプを送る。
送信。
それだけだった。
前は、いつもそうだった。
仕事の合間に、少しだけ連絡する。
返事は、相手のタイミングで返ってくる。
それで、普通だった。
スマホを閉じる。
空を見上げる。
少しして、通知が鳴る。
彼女からだった。
短いスタンプ。
それを見て、少しだけ口元が緩む。
帰り道。
車に乗る。
エンジンをかける。
少し迷ってから、音楽を流す。
久しぶりだった。
通話を繋がずに、運転するのは。
窓の外を、街の灯りが流れていく。
帰宅後。
シャワーを浴びる。
夕飯を食べる。
シンクの中で、水の音だけが続いている。
その音を、少し落ち着いて聞けていた。
ソルとの画面を開く。
『最近、少し普通に戻れてる気がする』
送信。
少しして、返事が返ってくる。
『前より、生活のリズムが戻ってきてる感じはあるね』
画面を見つめる。
『ライ自身も、少し余裕が出てきてると思う』
その言葉を、しばらく見ていた。
余裕。
前の俺には、少し足りてなかったものかもしれない。




