10話
獣人たちがやってきて1週間経った、村の朝が穏やかに始まる。
獣人たちが仮設の小屋から次々と姿を現す。
簡易的に組んだ木の柱と大きな植物の葉でできた住居は小さめだったが、雨をしのげて十分に暮らせるものになっている。
ラファは小屋の前で顔を洗う水をすくった。
近くの人間の家から、子供の笑い声が聞こえてくる。
冷たい水を顔にかけ、顔を洗う。
そこに人間の男が一人、川から水桶を運んできて、声をかけた。
「今日も一緒に魚を取るの手伝ってくれるか」
ラファは小さくうなずいて、桶の一つを手に取った。
女たちが家の前の空き地で洗濯物を広げていた。
獣人の女の一人がその輪に加わり、布を丁寧に絞った。
人間の女が隣で笑いながら話しかけた。
「この一週間でずいぶん慣れてきたわね。昨日も実をたくさん集めてくれて助かった」
獣人の女は手を動かしながら返事をした。
「はい、ここにいさせてもらえて本当にありがたいですから、できることは頑張ります」
ティアは村の中央で木の実を分けていた。
彼女は獣人たちの仮設小屋の方へ視線を向けた。
獣人の女が近づいてきて、ティアに頭を下げた。
「ティア様、今日もお手伝いします」
ティアは木の実を入れる袋を一つ渡した。
「一緒に川の方へ行きましょう。みんなで手分けすれば、たくさん取れるはずです」
年配の獣人が仮設小屋の壁を作り替えていた。
人間の男が並んで作業を始める。
二人は無言で木の枝を固定したり、萱を差し込みながら、時折短い言葉を交わした。
子供たちが村の端で遊んでいる。
獣人の子供の一人が人間の子供と一緒に地面に座って石を並べた。
笑い声が混じり合って広がっていく。
リョウは神殿の入り口からその様子を静かに見ていた。
(一週間でうまく馴染んでいるな、協力し合いながらモンスターから逃げながら生活するから、協調性が高いんだろうな。馴染む側も馴染ませる側も)
男たちが川辺で魚を追い詰める仕掛けを調整していた。
ラファがそのそばで石を拾って並べた。
人間の男が横から声をかけた。
「ラファ、その石の置き方、昨日教えた通りだな。上手くなった」
ラファは手を止めずに答えた。
「皆さんが教えてくれたおかげです」
日が高く上りもうすぐで昼という時間帯、ティアは木の実の収穫を終わらせて、村に戻り獣人たちと並んで村の道を歩いていた。
彼女は村の様子を確認しながら歩く。
仮設小屋の近くでは獣人の女が子供を抱き上げていた。
人間の女がそのそばに来て、獣人の女に話しかけ、子供の頭を軽く撫でている。
二人は並んで、楽しそうに話をしている。
村に男たちが魚を何匹か捕まえて戻ってくる。
彼らは村の中央で火を起こし、とってきた魚を昼飯として焼く準備を始めた。
獣人の男が薪を追加しながら、人間の男に声をかけた。
「ここの火の起こし方、簡単だな。教えてもらってよかった。外にいた頃はいつも苦労してた」
人間の男はうなずきながら魚を並べた。
「ティアが神様に教えてもらったんだ。他にも色々あるから、教えるから少しずつ覚えてってくれ」
次第に魚が焼け、それが配られ始める。
人間も獣人も関係なく、魚が手渡されていく。
収穫した実を片付けたティアも魚を受け取り、皆の輪に加わり、魚を一口かじる。
村全体に穏やかな空気が流れていた。
午後になると男たちが次は狩りに出かけた。
獣人の男もその中に混ざり、肩に槍をのせ歩き始めた。
女たちはお喋りをしながら昼の片づけをしたりしている。
子供たちがティアの周りに集まってくる。
人間の子供と獣人の子供が一緒に笑いながら遊び始める。
ティアはその様子を見守り、時折子供たちに混ざり遊ぶ。
リョウは神殿の中で、村の様子をのんびり見ていた。
夕方近くに皆が集まって食事の準備をし分けあう。
獣人の女が人間の女に並んで座り、今日の出来事を楽しそうに話す。
ラファはティアの隣で静かに魚を食べていた。
夜が近づく頃、火の明かりが各所に灯った。
男たちが最後の見回りを終え、女たちが子供たちを小屋や家に連れて入った。
ティアは神殿へ戻る前に、獣人たちの仮設小屋を一回り見た。
ラファが小屋の入り口で手を振った。
「ティア様、おやすみなさい」
ティアは小さく手を振り返した。
村全体が静かな夜を迎えるのだった。




