11話
リョウは神殿の奥で村の様子を静かに見守っていた。
一週間が過ぎ、獣人たちの姿はすっかり日常になっている。
そんな中で、リョウは孤児だというラファという獣人の少女に、目をつけていた。
彼はティアに声を届ける。
『ティア。ラファという獣人の少女に、巫女候補にならないかと打診してくれ。なるつもりがあるようなら、神殿に連れてきてくれ』
ティアはラファを探し声を掛ける。
「ラファ、神様があなたに話があるそうです。巫女候補にならないかと、お考えです」
ラファは一瞬目を丸くした。
彼女は少し考えてから、村で良くしてもらってることを思い、小さく頷く。
「私でいいのなら……お受けします」
ティアはラファの手を軽く引いて神殿へ連れて行く。
神殿の中に入ると、ラファの足が止まった。
リョウの触手がゆっくりと動いている姿が目に入った瞬間、彼女の体が硬直した。
過去の記憶が一気に蘇った。
モンスターに家族を奪われた夜の光景が頭をよぎり、ラファは後ずさりながら震え始めた。
「う……っ……」
リョウは触手を一本優しく伸ばし、ラファの肩にそっと触れた。
温かい魔力が触手を通じて流れ込み、彼女の心に安心感を与える。
ラファの震えが徐々に収まり、瞳の恐怖の色が薄れていった。
リョウはもう一本の触手をラファの腹部に近づけ、ゆっくりと沈みこませた。
ラファは一瞬体をびくりとさせる。
そんな彼女に痛みを感じさせることなく、触手の一部が彼女の中に残る。
寄生した触手を介してリョウの声がラファの頭の中に直接響く。
『大丈夫だ、ラファ。お前はもう安全だ。ここは俺の縄張り。お前は俺の巫女候補になるんだ。安心して、俺を信じろ』
声は優しく、繰り返し安心を植え付け、ラファの心に「神様は守ってくれる」という思いが少しずつ染み込んでいく。
彼女は自然と体をリョウの触手に預けるようになった。
ティアはその光景を、静かに見守っていた。
リョウは事前に用意させていた簡単な食事をラファに与える。
ラファは神殿の中で座り、温かい魚の身や木の実のスープなどを口に運ぶ。
食事が進むにつれ、寄生した触手がその栄養を元にラファの体を少しずつ整え始めた。
やせ細っていた頰に肉が付き、こけていた体が健康的な丸みを帯びる。
肌の色つやが良くなり、乾いていた唇が柔らかさを取り戻す。
ラファは自分の体に変化を感じながらも、リョウに言われるままに食事を続けた。
それからしばらくして、ラファの体が完全に健康を取り戻すと、食事が終わる。
リョウは彼女の体に触手を伸ばし軽く巻きつけると、頭の中に語りかけた。
『よく頑張ったな、ラファ。これからはティアと共に巫女として村を守るんだ。俺を信じていれば、もう怖いことはない』
ラファはぼんやりとした目で頷く。
彼女の様子からは、もう恐怖の影を感じない。
ラファはリョウの触手に安心したように体を預ける。
ティアはそんなラファの隣に座り、静かに見守った。
神殿の中は穏やかな空気に包まれていた。
ラファは安心した表情で目を閉じ、ゆっくりと眠りについた。
リョウは二人の少女を触手で優しく包む。
(これで獣人の巫女も手に入れた。今は問題ないが、将来的に人間しか巫女がいないことが、問題になるかもしれないからな)
村の時間は静かに進んでいく。
獣人たちも、人間たちも、この神殿の中で起こった出来事を知る者はいないのだった。
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