7話
書き溜めの関係で話数が飛んでますが、5話の続きです
朝日が平地に差し込む頃、各家族用に建てられた家から人々が次々と出てきた。
男が家の戸口で伸びをし、近くの川へ向かって歩き始めた。
女が子供の手を引いて、木の実を集めに行く準備をしている。
リョウがティアと出会って、一ヶ月が経ち、部族の二十一人は家族ごとに家を構え、ようやく落ち着いた暮らしを送れるようになっていた。
リョウが魔法で土を固め、木を加工するやり方を教えたおかげで、家々はどれも頑丈で、家族がゆったり過ごせる広さがあった。
ティアとリョウのための住居兼神殿は少し離れた高台にあり、二人だけの静かな空間になっている。
男たちが川辺で魚を捕る仕掛けを直しながら、声を交わす。
「今日もたくさん取れそうだな。昨日の分もまだ残ってるし、みんなで分けて食おう」
女たちは家の前の空き地で洗濯物を広げ、子供たちがその周りで笑い声を上げながら走り回っていた。
ティアは神殿の入り口近くに立ち、皆の様子を静かに見守っていた。
黒い髪を朝風に軽く揺らしながら、近くで遊ぶ子供に声をかける。
「怪我しないようにね。昨日も転んでたでしょ」
子供は笑顔でうなずき、すぐに仲間の方へ駆け出した。
男の一人が魚を何匹か捕まえて戻ってきた。
彼はティアのそばを通りながら、気さくに声をかける。
「ティア、今日の分も少し分けてやるよ。神殿の方でゆっくりしてろ」
ティアは小さく頭を下げて礼を言い、神殿の近くに戻った。
自身の魔力が多い、縄張り内の事なら、簡単に把握できるリョウは神殿の奥から、ティアにだけ聞こえる声を送った。
『みんな元気そうだな。家ができたおかげで生活がずいぶん楽になったようだし』
ティアは神殿の壁に軽く手を当てて応えた。
『はい、神様。みんな自分で家を整えたり、食料を集めたりしてます。私も時々手伝いますけど、みんな私に頼りすぎないように気をつけてるようです』
女の一人が洗濯物を干し終えて立ち上がり、子供たちを呼び集めた。
彼女はティアを見て軽く手を振った。
「ティア、昼に一緒に実を集めに行く? 川の向こうの木が実ってるみたいだよ」
ティアはすぐにうなずいた。
男たちが魚を火にかける準備を進めながら、互いに話を交わしていた。
一人が笑いながら言った。
「一ヶ月でこんなに落ち着くなんて思わなかった。家なんて建てたことなかったけど、神様が教えてくれたおかげで、暮らしやすい」
子供たちが神殿の近くで遊んでいた。
一人がティアの服の裾を軽く引っ張り、笑顔を見せる。
ティアはしゃがんでその頭を優しく撫でた。
(家が家族分できて、神殿も完成したおかげで、みんな本当に楽しそうに暮らしてる。俺は縄張りを守ってるだけで神様として、崇められるんだから楽なもんだ)
リョウは神殿の中から外の様子を感じ取りながら、そんなことを思う。
女たちが実を集めに出かける準備を始め、ティアも簡単な袋を手に持ち、その輪に加わる。
男の一人が川から戻ってきて皆に声をかけた。
「昼過ぎにまた魚を追加で取ってくるから、ティアも無理しないでな」
「はい」
子供たちが家の周りで遊ぶ声が響いていた。
女の一人がそれを見守りながら、隣の女に話しかけた。
「この家、風も通るし雨も入らない。魔法で作った床も柔らかいし、夜よく眠れるようになったよ」
「そうね。神様、さまさまだわ」
二人は軽く笑い合い、作業を続けた。
午後の陽が少し傾き始めた頃、集落全体に穏やかな空気が流れていた。
女たちが集めた実を分け合い、子供たちに配る。
ティアは自分の分を少し受け取り、神殿へとゆっくり戻った。
リョウは神殿の入り口で触手を軽く広げ、ティアを迎え入れる。
彼はティアの小さな体を優しく包み込みながら、頭の中にだけ言葉を送った。
『今日もみんな問題なく過ごせてるな』
ティアは触手に体を預け、小さく微笑んだ。
男の一人が夕方の見回りを終えて家に戻っていった。
彼は妻と子供を抱き寄せ、今日の出来事を簡単に話している。
女たちが夕飯の支度を進め、子供たちがその周りで待っていた。
集落のあちこちで笑い声や話し声が聞こえていた。
誰もが自分の家を持ち、余裕をもって食料を確保し、子供たちを育てながら日々を過ごしていた。
リョウはそんな光景を眺めながら、内心で満足していた。
(これは俺もなかなか、神様としてうまくできてるって、言っても過言ではないだろ)
夕暮れが近づく頃、火の明かりが各家の前に灯り始めた。
男たちが最後の見回りを終え、女たちが子供を寝かしつける準備をしていた。
ティアは神殿の奥で体を休めながら、明日も皆と同じように過ごすことを心に決めていた。
集落全体が穏やかな夜を迎えようとしていた。
人々はそれぞれの家で体を横たえ、一日を穏やかに終えていった。




