62話
縄張りの外から帰ってきたユイトは、自分の家の扉を押し開けた。
体はまだ少し震えていて、顔色も悪かった。
母親がすぐに駆け寄り、ユイトを抱き上げた。
父親も薪を置いて立ち上がり、ユイトの顔を覗き込んだ。
母親はユイトの背中を優しく撫でながら言った。
「サバイバルから帰ってきたのね。怖かったでしょう?」
ユイトは母親の胸に顔を埋めたまま、小さくうなずいた。
父親が母親の隣に座り、ユイトに静かに語り始めた。
「ユイト、お前が経験した外の世界は、お父さんとお母さんが子供の頃に普通に暮らしていた場所だ」
母親がユイトの髪を優しく撫でながら続けた。
「私たちも、毎日モンスターに追いかけられて、食べ物を探すのも命がけだった。家族が一人のこらず生き延びるのは、本当に奇跡みたいなことだったよ」
父親はユイトの目を見て、言葉を続ける。
「夜になると火を囲んで震えながら眠り、朝になるとモンスターに怯えながらまた逃げ続ける。それが普通の生活だった」
母親がユイトの頰を両手で包み、静かに言った。
「だからこそ、今の村がどれだけ神様のおかげでできているか、お前にもわかったでしょう」
父親がうなずきながら、ユイトの肩に手を置いた。
「神様の縄張りがなかったら、お前は今も外で逃げ回るしかなかった。モンスターに遊ばれるように追いかけられて、家族を失うかもしれない毎日だった」
母親がユイトの額に自分の額を軽く当てた。
「神様にどれだけ感謝しないといけないか、今回のサバイバルでちゃんと分かったよね」
ユイトは母親の胸に顔を埋めたまま、小さくうなずいた。
涙が頰を伝っていた。
父親が優しい声で言った。
「神様のおかげで、私たちは安心して暮らせている。お前もこれからは、毎日神様に感謝する気持ちを忘れないようにな」
母親がユイトの背中をゆっくりと撫でながら、静かに言った。
「神様の温かさを、ずっと胸に抱いていてね」
ユイトは両親に抱かれながら、小さく声を絞り出した。
「うん……神様、ありがとう……」
家の中は静かだった。
日の光が窓から差し込み、家族三人を柔らかく照らしていた。
ユイトは両親の温もりに包まれながら、サバイバルで感じた恐怖と、神様への感謝を胸に刻み込んでいた。




