61話
開拓団出発の1年前。
安全な縄張りの中で生まれ育った低学年の子供たちが、初めて縄張りの外に出ることになった。
ティアは子供たちを前に立ち、小神様と村で呼ばれるようになった、切り離された触手を横に置いた。
男の子と女の子が合わせて二十人ほど、緊張した顔で並んでいた。
「これから一週間、縄張りの外で過ごします」
ティアは静かに言った。
「村の中とは違う。神様の力がないところでは、いつ危険が来るかわからない」
小神様が子供たちの周りをゆっくり回った。
触手は細く柔らかく、子供たちに安心を与えるように動いた。
子供の一人が手を挙げた。
「ティア様、外は本当に怖いんですか」
ティアはうなずいた。
「怖いよ。でも神様の力があるから、私たちは生き延びられる。それを今回は感じよう」
ティアに連れられ、子供たちは縄張りの境界を越えた。
地面の感触が変わり、木々が密集し、空気が重くなったように感じる。
子供たちは互いに手を繋ぎ、足元を気にしながら歩いた。
二日目になると、子供たちの疲れが目立ち始めた。
男の子の一人が勝手に茂みの中へ入っていった。
「ここに果物があるかも」
突然、高い威嚇の声が聞こえた。
棘蛇が茂みから飛び出し、男の子に向かって牙をむいた。
男の子は悲鳴を上げて後ずさった。
「助けて……!」
小神様が素早く動き、棘蛇の体に巻きつき、触手が蛇を締め上げ、地面に叩きつけた。
棘蛇は体をくねらせて抵抗したが、すぐに動かなくなった。
男の子は地面に座り込み、泣きじゃくった。
「怖かった……怖かったよ……」
ティアは男の子の、背中を優しく撫でた。
「勝手な行動は絶対にだめだよ。神様がいなかったら、今頃どうなっていたか……」
三日目、女の子の一人が木の実を探して崖の近くへ近づいた。
足を滑らせ、崖から落ちかけた。
女の子は叫び声を上げた。
「キャーッ……!」
小神様が即座に触手を伸ばし、女の子の体を絡め取った。
触手が彼女を崖の上に引き上げ、地面に下ろした。
女の子は地面に崩れ落ち、大声で泣き叫んだ。
「痛い……足が痛い……!」
ティアは女の子の足に手を当て、魔法で傷を癒した。
腫れが引いていくのを見て、女の子はまだ泣きながら言った。
「村なら、こんなことなかったのに……」
四日目になると、子供たちは明らかに疲れ切っていた。
夜になると火を囲み、互いに体を寄せ合った。
男の子の一人が震える声で言った。
「村の中は安全だったのに……外は本当に怖い」
女の子が泣きながらうなずいた。
「神様がいなかったら、みんな死んでた……」
小神様が子供たちの周りにゆっくりと触手を伸ばす。
触手が一人ひとりの肩や背中を優しく撫で、安心を与えた。
五日目、子供たちはもう勝手な行動をしなくなっていた。
彼らはティアと小神様の近くから離れず、指示に従うようになった。
一人の女の子がティアに寄りかかりながら言った。
「村に帰りたい、神様の側が一番安心できる」
ティアは女の子の頭を撫でた。
「そうだね。縄張りの外は危険がいっぱい。神様の縄張りの中にいることが、どれだけ幸せかわかったでしょう」
六日目、子供たちはサバイバルの疲れでほとんど言葉を発さなくなっていた。
彼らは小神様の周りに集まり、触手に体を預けるようにして休んだ。
女の子の一人が小さな声で言った。
「神様、ありがとう……村に帰ったら、毎日感謝する」
七日目、子供たちは村の近くまで戻ってきた。
彼らは村の入り口で立ち止まり、互いに顔を見合わせた。
男の子の一人が涙を浮かべて言った。
「もう外には出たくない……神様の側が一番安全だ」
女の子たちがうなずき、皆で小神様に近づいた。
触手に頰を寄せ、感謝の気持ちを伝えた。
ティアは子供たちを見守りながら静かに言った。
「これでわかったね。神様の縄張りの中にいることが、どれだけ大切か」
子供たちは村の中に入り、安心した表情を浮かべた。
彼らは広場の方へ歩きながら、神様への感謝を何度も口にしていた。
低学年の生徒たちは、初めてのサバイバルで、神様への信仰を深く刻み込むのだった。




