39話
高台の上は風が心地よく吹いていた。
カスミは背中の翼を軽く広げて立ち、村全体を見下ろしていた。
薄い灰色の髪が風に揺れ、銀色の瞳が遠くまで届くように輝いている。
ラファは静かに高台を登り、カスミの横に並ぶ。
彼女はカスミの横顔を優しく見つめ、穏やかな声で言った。
「カスミ、いつも空から村を見守ってくれてありがとう」
カスミは翼を小さく畳みながら、ラファに向き直った。
彼女は明るい笑顔で答えた。
「ラファ様! えへへ、どういたしまして。でも、私はみんなが元気に暮らしてるのを、空から見るのが好きなだけで、好きなことをやってるだけで、お礼を言われるようなことじゃないですよ」
「ふふっ、私はあなたのそういうところが、いいと思うの」
ラファは少し間を置いてから、静かに本題を切り出す。
「カスミ、今日はあなたに大事な話をしたいの。……もしよかったら、巫女候補になってみない?」
カスミは銀色の瞳を大きく見開く。
彼女は翼を少し広げて驚きの表情を浮かべ、すぐに興奮した声で言った。
「えっ、私が巫女候補に!? 本当にいいの? ラファ様がそう言ってくれるなんて……夢みたい!」
ラファは優しく微笑みながら続けた。
「あなたはいつも村のことを空から見てくれて、子供たちにも神様の話を熱心に伝えてくれている。その明るさと行動力が、巫女としてとても必要だと思うの」
カスミは翼をパタパタと小さく動かしながら、胸の前で両手を握りしめた。
彼女の声が弾むように続いた。
「神様の空を、もっとみんなに伝えたいってずっと思ってたんです! 巫女候補になれたら……神様の翼になれる気がするよ!」
ラファはカスミの肩にそっと手を置いた。
「それじゃあ、これから一緒に勉強して、神様のことをもっと深く知って、村の皆を導ける巫女を目指そうね」
カスミは翼を軽く広げて喜びを表し、ラファに勢いよく抱きついた。
彼女はラファに抱き着きつきながら、興奮した声で言った。
「ありがとう、ラファ様! 私、頑張るよ! 神様の空を、みんなにちゃんと届けたい!」
ラファはカスミを優しく抱き返した。
二人は高台の上で風を受けながら、笑い合う。
高台の風は、二人の決意を優しく包み込むように吹き続けていた。




