38話
広場で、ホルンは地面に座っていた。
緑がかった短めの髪が少し乱れ、頭に二本の角が生えている。
彼女は切り離された小さな触手を両腕でぎゅっと抱きしめ、頰を強く押しつけていた。
ティアは静かに近づき、ホルンの後ろに立った。
ホルンは触手を離さずに顔だけを上げ、ティアに気づく。
「ティア様!」
ティアはホルンの隣に腰を下ろした。
彼女はホルンが抱きしめている触手を優しく見つめながら、穏やかな声で言った。
「ホルン、今日も神様の触手にずいぶん夢中みたいだね」
ホルンは触手をさらに強く抱き寄せ、嬉しそうな顔でうなずいた。
彼女は触手の表面に頰を擦りつけながら答えた。
「この感触が本当に最高なのです。神様の一部をこうして抱いていると、胸がいっぱいになります」
ティアは小さく微笑み、ホルンの肩にそっと手を置いた。
彼女は少し間を置いてから、静かに本題を切り出す。
「ホルン、もしよかったら、巫女候補になってみない? あなたはいつも神様のことをこんなに熱心に想ってくれている。きっと良い巫女になれると思う」
ホルンは触手を抱いたまま体をぴんと伸ばした。
彼女の黄金色の瞳が大きく見開かれ、驚きと喜びが一気に広がる。
「わたしが……巫女候補に……?」
ティアはうなずき、ホルンの目をまっすぐに見つめ、柔らかい声で続ける。
「ええ。あなたなら子供たちにも神様の素晴らしさをちゃんと伝えられると私は思ってるの。私たちと一緒に、神様のために頑張ってみない?」
ホルンは触手を胸に強く押しつけ、興奮で頰を赤く染めた。
彼女は少し声を弾ませながら答える。
「わたしでいいのなら……ぜひ、巫女候補になりたいです! 神様のためなら、どんなことでも頑張ります」
ティアはホルンの頭を優しく撫で、立ち上がりながら、ホルンに手を差し伸べる。
「それじゃあ、これから一緒に勉強しよう。神様のことをもっと深く知って、村の皆を導ける巫女を目指そう」
ホルンは触手を大切に抱いたまま、ティアの手を取って立ち上がった。
彼女の顔には喜びと決意がはっきり浮かんでいた。
二人は神殿の方へゆっくりと歩き始めり。
ホルンはまだ触手を離さずに歩きながら、時折触手に頰を寄せた。
神殿の奥ではリョウは触手を通して、二人の様子を見守っていた。
ホルンはこれから巫女候補として、新たな一歩を踏み出すことになるのだった。




