36話
広場で子供たちが遊んでいる。
一人の男の子が勢いよく走り出し、足を滑らせて地面に転び、膝から血がにじむ擦り傷ができた。
男の子は痛そうに顔を歪めて座り込む。
周りにいた子供たちが心配そうに集まってきた。
「大丈夫? 血が出てるよ」
その声に、近くにいたミズハがすぐに駆け寄った。
彼女は青みがかった長い髪を軽く揺らして男の子の前にしゃがみ込んだ。
穏やかな瞳で傷口を見つめ、そっと手を近づけた。
「痛いよね。少しの間、じっとしていて」
ミズハは両手を傷口の近くに当て、静かに魔力を流し始めた。
手のひらから柔らかい温かさが広がり、擦り傷の周囲の皮膚がゆっくりと修復されていく。
血が止まり、傷が薄くなり、数瞬後にはほとんど跡が残らないほどになった。
男の子は目を丸くして自分の膝を見下ろす。
痛みはすっかり引いていた。
「わあ……もう痛くない!」
ミズハは優しく微笑みながら男の子の頭を軽く撫でた。
「よかったね。走るときは気をつけて」
年下の子供たちがミズハの周りに集まってきた。
一人の女の子が彼女の袖をそっと掴んだ。
「ミズハお姉ちゃん、すごい……魔法が上手」
別の男の子も興奮した顔で言った。
「ミズハお姉ちゃん、僕もさっき指を切っちゃったんだけど……」
ミズハは困ったように小さく笑いながら、その子の指を優しく見せてもらった。
小さな切り傷に再び手を当て、魔力を流した。
傷がみるみるうちに塞がっていく。
同級生の少女が声をかける。
「ミズハ、ほんとにすごいね。まだ巫女候補にもなっていないのに」
大人の女が通りかかり、感心した様子で言った。
「ミズハ、もうケガを直せるくらいの魔法が使えるのかい! すごいね」
ミズハは立ち上がりながら穏やかに頭を下げた。
「いえ、私なんて……」
彼女は謙遜するが、魔法に補助が入るリョウによる触手の寄生を受けていないのに、擦り傷程度とはいえ、自然に治せる魔法を使えるのは、魔力の扱いが優秀な証拠だった。
子供たちはミズハの周りに集まり、彼女の手に触れたり、袖を握ったりしながら離れようとしなかった。
「ミズハお姉ちゃん、明日も来てくれる?」
ミズハは優しくうなずいた。
「もちろん」
広場では子供たちの笑い声が再び広がり始めた。
ミズハは穏やかな表情でその様子を見る。
彼女は、村の子供たちにとって、とても頼れる存在なのだった。




