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異世界に転生したら触手で、助けた少女に神様って言われたので神様ごっこします!  作者: frandre scarlet


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35話

 朝の村、リョウの触手の一部──太さは人間の腕ほどの触手──がゆっくりと石畳の上を這っていた。

 村人たちは遠くからその姿を見つけると、自然に道を空ける。


 触手が近くを通ると、人間の男は頭を下げて目礼した。

 角人の女が両手を胸の前で合わせ、静かに祈るような仕草をする。

 蔓人の若い男は畑の端で立ち止まり、頭を下げる。

 誰も近づこうとはせず、ただ敬意を表すだけだ。


 触手はさらに進み、畑の水路沿いをゆっくりと移動した。

 獣人の女が洗濯物を干す手を止め、遠くから小さく頭を下げる。


 そのとき、角人の少女ホルンが道の向こうから走ってきた。

 彼女の頭には二本の角が生えている。

 ホルンは触手を見つけると、すぐに顔を明るくした。


「小さな神様~!」


 彼女は緑がかった髪をなびかせ、大声を上げながら一直線に触手へ駆け寄り、迷わず抱きついく。

 ホルンは両腕でしっかりと触手を抱きしめ、触手にぴったりと密着する。


 村人たちはその様子をちらりと見ただけで、すぐに作業に戻る。

 男の一人が薪を運びながら小さく肩をすくめ、女の一人が洗濯物を干しながら軽く笑った。

 ホルンのこの行動はもういつものことになっていた。

 ホルンは触手の表面に頰を強く押しつけ、左右に顔を擦りつけた。


「この感触最高なのです!今日の小さな神様は特に温かくて、柔らかさが違う!」


 彼女は目を細めて触手をさらに強く抱きしめた。

 触手の先端が軽く動き、ホルンの背中を優しく撫でるような仕草をする。

 ホルンはそれを喜び、笑顔を浮かべたまま、触手を離さない。


「えへへ、今日のは新しい小さな神様ですね! 四番目様より柔らかくて、でも五番目様より硬い感じがするのです! それに今までの小さな神様より細いです!」


 彼女は顔全体を触手に埋めるように頰ずりを続け、時折小さな声を上げた。

 村人たちは道を歩きながらも、ホルンの姿を横目で見ては「またか」と小さく息を吐いた。

 一人の蔓人のおばさんが水桶を運びながら軽く会釈をして通り過ぎた。

 ホルンは触手を離さずに体を少しずらし、今度は触手の先端部分に顔を近づけた。


「小さな神様、今日も村を回ってくださってありがとうございます。ホルンは毎日この感触を感じたくてたまらないのです!」


 彼女は触手の表面を指で優しくなぞりながら、満足そうな息を吐いた。

 触手はホルンの頭の上で軽く巻き、髪を優しくなでるような動きをする。

 ホルンはそれを嬉しそうに受け止め、さらに体を寄せる。

 触手は柔らかい人形のように、少し変形する。


 周囲の村人たちは普段通りに動き続けていた。

 畑では蔓人の男たちが鍬を振るっていた。

 人間の女が洗濯物を干し終え、角人の子供たちが広場で石を蹴って遊んでいる。

 ホルンは触手を抱きしめたまま、目を閉じて深く息を吸った。


「この温かさ、柔らかさ……。ホルンはこの感触だけで、今日一日頑張れそうです!」


 彼女は触手に何度も頰を押しつけ、時折小さなキスをするような仕草を繰り返した。

 触手はゆっくりと動きを止め、ホルンの体を包むように形を変えた。

 ホルンはそれを当然のように受け入れ、触手の中に体を沈めるように寄りかかった。


 村の空気は穏やかで、遠くから鳥の声が聞こえてくる。

 ホルンは触手を離さずに地面に座り続け、時々小さな声で神様への言葉を呟く。

 彼女は他の村人たちとは明らかに違う目で触手を見つめていた。


 三人はリョウとつながっているため、どの触手が今、ホルンと一緒にいるのかを正確に把握できる。


 ホルンが言うとおりに、彼女が今抱きしめている触手は、今朝切り離されたばかりの新しい触手で、彼女が番号で呼ぶ通りの順番でその触手は生まれていたのを、三人は知っている。

 だが普通の村人には、そんな違いは分からない。

 ホルンは触手を抱きしめながら、体を少し揺らした。


「小さな神様、ホルンはもっと神様のことを知りたいのです。この感触をみんなにも伝えたい……でも、まずはこの温かさと柔らかさを独り占めなのです!」


 彼女の声は明るく、村の通りを少し響かせた。

 近くを通る獣人の女がホルンを見て小さく微笑んだ。

 触手はホルンの背中を優しく撫で続け、ホルンはそれを喜び、触手に頰を何度も擦りつける。


 村の朝はゆっくりと進んでいく。

 畑では仕事の手が動き、道では人々が挨拶を交わす。

 ホルンは触手を抱いたまま、満足げな顔だ。


「新しい小さな神様……。ホルンはちゃんと分かっているのですよ。神様のすべての小さな違いを、ホルンは覚えているのです」


 ホルンの行動は村の日常に溶け込みながらも、彼女だけの熱い信仰を表していた。

 村人たちはそれを「いつものホルン」と受け止めている。

 触手はホルンの体温を感じ取りながら、ゆっくりと動きを再開する準備をした。

 ホルンはそれを察して、名残惜しそうに触手を抱きしめた後、触手を地面に降ろすのだった。


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