32話
学校用の小屋の中は子供たちでいっぱいだった。
リーフは大きな板の前に立ち、緑がかった長い髪を耳にかけた。
彼女は深く息を吸ってから、静かに話し始めた。
「みんな、今日は神様のことをたくさん話そうと思います。神様はいつも私たちを見守ってくださってます。だからまず、神様に感謝する気持ちを一番大切にしましょう」
子供たちは体を少し前へ乗り出した。
一人の男の子が目を輝かせてリーフを見つめた。
リーフは板に神様の文字を丁寧に書きながら続けた。
「神様は触手で村全体を守ってくれてます。縄張りを広げて、モンスターを遠ざける。外の世界では生きるのも難しいのに、ここでは安心して遊んだり、食べたり、眠ったりできる。これは全部、神様のおかげなんだよ」
彼女は神様という文字の横に、感謝と書き加えると、板を子供たちに見せながら、声を少し大きくした。
「神様に感謝する気持ちを、毎日忘れないようにしましょう。朝起きたときは、『神様、今日も守ってくださりありがとう』って心の中で言う。食事のときは、『今日も神様のおかげで食べられます』って祈る。寝る前には『今日も無事に過ごせました。ありがとうございます』って伝えるの、神様がいてくれるから、私たちはここにいられるんだからね」
子供の一人が手を挙げた。
「リーフ先生、神様はいつも私たちを見守ってくれているんですよね!」
リーフはうなずき、すぐに答えた。
「そうだよ。村の中で小さな神様を見たことがある子は多いと思います。神様は自分の触手を切り離して、村の中を回って、私たちを見守ってくれてるの。それにとても強くて私たちを守ってくれる。見た目が怖くても、心は一番優しい。だから私たちは神様を信じて、村のために頑張るの」
比較的村に来て日の浅い、一人の子供が手を挙げていう。
「リーフ先生、神様は怖い姿なのに、優しいんですか?」
リーフは優しく微笑んでうなずいた。
「うん。姿はモンスターみたいに見えるかもしれません。でも神様の心は誰よりも優しくて、強い。見た目で判断してはいけません。神様は私たちを命がけで守ってくださっているんですから」
リーフは板に「信仰」という言葉を書き、子供たちに繰り返し言わせた。
「信仰って、神様を信じて、感謝して、村のために頑張ること。みんなも巫女であるティア様たちのように、神様を心の中心に置いて生きていきましょう。そうすれば、どんなことがあっても怖くないよ」
彼女は板に感謝の言葉をいくつも書き足した。
子供たちは体を寄せ合いながら、文字を一生懸命に目で追った。
リーフはさらに言葉を重ねた。
「神様は村の皆の事を大切に思っています。だから皆もそれを理解して神様のことを大切に思ってほしいです」
授業の後半は子供たちに板を回して、神様の文字と感謝の言葉を自分で書かせる時間になった。
リーフは一人ひとりのそばを回りながら、優しく声をかける。
「上手に書けたね。神様も喜んでくださってるよ」
子供たちは夢中になって文字を書き、感謝の気持ちを声に出して繰り返した。
それが落ち着いてくると、一人の女の子が興奮した顔で言った。
「リーフ先生、神様の話をもっと聞きたいです」
リーフは微笑みながら頷く。
「いいですね。村には今、たくさんの人類がいます。これは神様が縄張りを五キロまで広げてくれたから、みんなが一緒に暮らせるようになったからですね。神様がいなかったら、私たちは外でモンスターに追い回されて、家族と離ればなれになっていたかもしれません。──」
リーフが話す内容を、子供たちは目を輝かせて聞き入っていた。
授業が終わる頃には、皆がリーフの周りに集まって神様の話を続けていた。
一人の角人の子がリーフの手を握った。
「リーフ先生、明日も神様の話をしてくれますか」
リーフはうなずきながら、子供たちの頭を順番に撫でた。
授業が終わっても、子供たちはなかなか小屋から出ようとしなかった。
リーフの授業は特に神様の話が多く、だからこそみんなが夢中になった。
ティアとラファは小屋の外からその様子を静かに見ていた。
小屋の中は、子供たちの声でいっぱいだった。




