24話
角人の二人は仮設小屋の毛皮の上に横たわったまま、浅い息を繰り返していた。
男は、時折まぶたを震わせ、女は苦しそうな顔で額に汗が浮かぶ。
二人の体は弱っているが、異常はない。
ただ、悪夢を見ているのだ。
リョウは神殿の奥から、切り離した触手の一部を送り、その様子を見ていた。
目を覚ました角人の男が水を飲もうとして体を起こし、すぐに力なく倒れ込む。
女も同じように体を支えきれず、横になったまま動かなくなった。
世話役の女衆が、手を貸し二人に水を飲ませる。
リョウの頭にはラファの姿が頭に浮かんだ。
彼女が初めて縄張りに入ってきたときも、こうしてやせ細っていた。
モンスターに遊ばれるように追い回され、家族を失い、ただ逃げ続けるだけの毎日だったらしい。
リョウは触手を軽く地面に這わせながら考えた。
縄張りの外は今も変わらず危険だ。
普通の人類にとっては、歩くだけで命の危険が常に付きまとう場所なのだ。
角人の二人がようやく水を少し飲み、目を閉じて休み始める。
女の呼吸がやや落ち着きを取り戻し、胸の上下がゆっくりになる。
リョウは切り離した触手の視界で、縄張りの端を確認する。
縄張りである二キロの範囲内は静かだが、その外側ではモンスターの気配がうごめいている。
ラファたちのように、弱った人類がいつまた逃げ込んで来てもおかしくない。
村の人間たちは、小屋の周りで角人の二人を交代で見守っている。
男が水を運び、小屋の中で女が布を湿らせて角人の額に当てる。
誰もが静かに作業を続け、声を出さずに動き回った。
リョウは触手をゆっくり巻きながら内心でつぶやく。
(外の世界は本当に過酷そうだ)
ラファたちが生き延びてここに来られたのは、ただの幸運だったのかもしれない。
角人の男が再び薄く目を開け、ぼんやりと天井を見つめる。
この縄張りがなければ、角人の二人もラファたちも今頃生きていないだろう。
普通の人類にとって、外はそれほどに厳しい場所なのだ。
見守る人間たちの足音が静かに響き、村の時間がゆっくりと流れていくのだった。




