23話
目覚めた角人は、仮設小屋の毛皮の上でゆっくりと体を起こした。
男は一本の太い角を頭に生やし、女は二本の角を左右に広げている。
二人はまだ顔色が悪く、目が虚ろに周囲をさまよっている。
ティアは小屋の入り口に立って、静かに二人を見つめた。
彼女は二人に近づき、穏やかな声で話し始めた。
「ここは神様の縄張りで、モンスターが一切近づけない安全な場所です。あなたたちが倒れていたところを、村の皆で見つけて連れてきました」
男の角人が、ティアの顔をじっと見た。
女の角人も隣で、耳を傾けていた。
ティアは言葉を続ける前に、二人を交互に見つめた。
彼女は、はっきりとした口調で言った。
「この縄張りを守っている神様は、触手を持つ姿をしています。見た目はモンスターのように見えるかもしれません。でも、この村に住む私たちにとっては、かけがえのない神様です」
ラファがティアの隣で小さくうなずく。
ティアはさらに声を少し低くして、二人に伝えた。
「神様を前にして失礼な態度を取るようなことがあれば、すぐに縄張りの外へ追い出します。ここで休みたいなら、神様を敬ってください」
男の角人は角を軽く触りながら、ゆっくりと息を吐いた。
彼はティアの目を見て、掠れた声で言った。
「わかった……」
女の角人も体を少し前へ傾け、弱々しくうなずいく。
ティアは二人の反応を確認しながら、静かに続ける。
「今はまだ体が弱っているので、ゆっくり休んでください。何か必要なものがあれば、すぐに言ってください。今のところあなたたちを追い出すつもりはありませんが、神様への敬意だけは忘れないでほしいのです」
ラファが小屋の隅から水の入った器を持ってきて、二人のそばに置いた。
ティアはラファと並んで立ち、角人たちが水を飲むのを静かに見守る。
男の角人は水を一口飲み、喉を湿らせてから再び口を開いた。
彼の声はまだ弱かったが、はっきりとした言葉だった。
「助けられたのだから、それを裏切るようなことはしない」
女の角人は水を飲んだ後、小さく頭を下げる。
ティアは小さく息を吐き、表情を少し緩めた。
彼女はラファに目で合図を送り、二人は小屋の入り口から外に出る。
外では村の人間たちが遠くから様子をうかがっていた。
男の一人が棍棒を地面に立てかけ、女の一人が子供を抱きながら待っていた。
ティアは皆に向かって静かに言った。
「角人の二人、目が覚めました。神様のことはちゃんと伝えておきました」
小屋の中では角人の男と女が、再び体を横たせていた。
二人は互いに視線を交わし、静かに目を閉じて、もう一度眠りに落ちていく。
ティアとラファは神殿へ戻る道をゆっくり歩き始めた。




