22話
数週間の時が過ぎた。
リョウは神殿の奥で縄張りの様子をのんびりと魔法で確認していた。
徐々に広がり、半径二キロほどになった範囲の端の方で、弱った気配が動いていた。
疲れ切った足音が地面を擦るように進み止まる。
リョウはすぐにティアとラファに声をかけた。
『二人とも、縄張りの端に誰か入ってきた。角が生えた種族の男と女だ。かなり弱ってる。すぐに村の人間を連れて様子を見に行ってくれ』
ティアは神殿の床から立ち上がり、ラファと顔を見合わせた。
彼女はすぐに外へ出て、近くの家に声をかけた。
男たちが棍棒を手に、集まってくる。
ラファが先頭に立って走り始めた。
ティアがその横に並び、村の人間たちが後ろに続く。
道は村の中心から離れるにつれて、地面が荒くなっていく。
一行は黙って進む。
誰も広がった縄張りの端まではまだ行ったことがなかった。
リョウの声が時折ティアとラファの頭の中に届き、正確な方向を伝える。
やがて開けた草地が見えてきた。
そこに男と女が倒れていた。
男の頭には一本の太い角が生え、女の頭には二本の角が左右に伸びていた。
二人はぼろぼろの服を着て、顔色が死人のように灰色だった。
男の一人が近づいて膝をついた。
彼は男の胸に手を当てて息を確認した。
「生きてる。かなり弱ってるが、まだ息はある」
女の一人が水筒を出し、彼女は女の唇を少し湿らせて、男の口にも同じようにした。
村の人間たちは互いに目配せをしながら、二人の体を慎重に抱き上げた。
「村まで運びましょう」
ティアの言葉で、一行はゆっくりと村の方へ引き返し始める。
村に着くと、すぐに空いている仮設小屋に二人の角人を運び込み。
地面に敷いた毛皮の上に寝かせた。
女の一人が湿った布で二人の顔を拭き始めた。
ティアは小屋の入り口に立って皆を見回した。
「皆で看病しましょう」
ラファが水を汲んで持ってきた。
彼女は角人の唇に少しずつ水を含ませた。
村の人間たちは小屋の周りに集まり、静かに次の指示を待っていた。
リョウの声がティアとラファの頭の中に届いた。
『二人とも、あとは村人たちに任せておくといい』
ティアは小さくうなずき、村人に後を任せると言い、ラファと一緒に小屋の外へ出る。
村の空気はいつも通り穏やかで、遠くから子供たちの声が聞こえていた。
角人の男と女は小屋の中で浅い息を繰り返している。
村の人間たちは交代で様子を見て、二人の世話をする。
夕方近くになると、二人の顔色が少しだけ良くなっていた。




