17話
リョウが群体としての、能力を手に入れてから一か月後。
ティアは村の端の空き地に立っていた。
木剣を軽く構えて体を少し沈め、ラファの方へ視線を向けた。
ラファも対面に立ち、木剣を両手で握り直す。
彼女は息を整えながら魔力を丹田から全身へ巡らせる。
二人は魔力が体を巡ると同時に、身体強化の魔法を発動させた。
木剣にもそれぞれ武器強化の魔法がかかり、刃の部分が淡く光る。
ラファが先に踏み込んだ。
彼女は剣を横から振り抜き、ティアの胴体を狙って一気に間合いを詰める。
ティアは体をわずかに横にずらしただけでその一撃をかわす。
その動きは滑らかで、無駄が一切なかった。
ラファはすぐに体勢を立て直し、連続で剣を突き出した。
三度、四度と速い連撃を放つが、どれもティアの前で空を切る。
ティアは後ろに一歩下がりながら、常人では剣ごと腕を粉砕されるだろう剣を、軽く受け流した。
彼女の表情にはまだ余裕が残っていた。
「もう少し速く動いてみて」
ラファはうなずき、魔力をさらに強く循環させた。
彼女は低く沈んでから跳ね上がり、剣を上段から振り下ろす。
ティアは剣を斜めにしその攻撃流しながらも、途中で武器強化の魔力を弾けさせ、剣を弾く。
予想外の衝撃でラファの体が少し浮き、彼女は慌てて体勢を整え着地する。
ティアは攻めなかったが、今の一瞬でティアが攻めれば勝負はついていただろう。
ラファはそのことに、一瞬悔しげな表情を浮かべ魔力が乱れるが、一呼吸し精神を持ち直す。
気を取り直したラファはすぐに横に回り込み、剣を水平に薙いだ。
ティアはステップを踏み、まるで剣が透過したように見えるかわし方をすると同時に、驚いたラファの肩を軽く突いた。
ラファの体が一瞬よろけた。
彼女は歯を食いしばって体勢を保ち、再び剣を振り上げた。
ティアは剣を片手で持ち、ラファの攻撃をすべて見切ってかわす。
彼女はステップを小さく刻みながら、まるで遊ぶように距離を調整する。
ラファが全力で突進してきた。
剣を斜めに振りながら体当たりを狙うが、ティアは体を回転させてその勢いをかわした。
ティアの木剣がラファの背中を軽く叩いた。
音が小さく響き、ラファは前につんのめった。
「ムキになりすぎないで、しっかり相手に集中して」
ラファは息を荒げながら振り向き、再び構え直した。
彼女は魔力を剣先に集中させて、フェイントを混ぜながらも連続で突きを繰り出した。
ティアはすべての突きを最小限の動きで避け、時折剣で軽く弾いた。
「うん。私の動きをよく見てる良いフェイントだよ。ラファ」
彼女の足運びは乱れず、呼吸も整ったままだ。
村の人間と獣人たちが少し離れた場所からその様子を見ている。
男の一人が腕を組んで小さくうなずき、女の一人が子供を抱きながら静かに見つめていた。
ラファが大きく息を吸い、剣を両手で高く掲げて振り下ろした。
ティアは体を横に滑らせてその一撃を完全に外し、すぐに剣先でラファの喉元を軽く突いた。
ラファの動きが止まった。
彼女は木剣を下ろして肩で息をした。
ティアは剣を肩に担ぐように持ち、静かに笑った。
彼女の体にはまだ魔力が満ちていて、試合を続けられる余力が十分に残っていた。
「もう一回、最初からやってみる?」
ラファはうなずきながら剣を構え直した。
彼女の瞳には悔しさと同時に、ティアの強さへの憧れが浮かんでいる。
ティアも再び構えを取る。
彼女はラファの次の動きを待つように、足を小さく動かしながら魔力を体内で循環させる。
リョウは神殿の奥から二人の様子を複数の視点で眺めていた。
ラファが再び踏み込み、ティアがそれを滑らかに受け止める。
試合は続くが、ティアの余裕は最後まで崩れないのだった。




