14話
朝になり、ティアがゆっくり体を起こし、隣に横たわるラファの肩に手を置き、ゆらす。
ラファも目をこすりながら起き上がり、二人は無言で神殿の奥を見た。
リョウの声が二人の頭の中に直接届いた。
『ティア、ラファ、今日は他種族のことを詳しく知りたい。獣人たちの生活も落ち着いてきたし、村の獣人と人間どちらにも聞いて回ってくれ』
ティアは小さくうなずいた。
彼女はラファの手を軽く握って神殿の外へ出た。
二人は村の中央へ向かいながら、歩く途中で獣人の仮設小屋の前を通った。
ラファが先に声をかけた。
「朝からすみません。他の種族の話、聞かせてもらえませんか」
年配の獣人が小屋の入り口に座ったまま顔を上げた。
彼はゆっくりと頰を掻きながら答えた。
「他種族か。俺たちの部族は昔、森の奥で俺たちみたいな、狼の獣人じゃなく、猫耳の連中と出会ったことがある」
ティアが隣で続けて聞く。
「他にはどんな種族がいたんですか?」
年配の獣人は少し考えてから口を開いた。
「それ以外は、鳥の羽が生えたやつらもいたな。昔はそんなに珍しくなかったな。俺が知る限りだとそれくらいだ」
ラファが少し体を近づけて聞いた。
「子供はできるんですか? 他の種族と」
「子供はできるな。でも生まれてくるのは俺が知る限りだと、必ずどちらかの種族だ。俺の知り合いの獣人が人間の女と一緒になった時は、獣人の子が生まれてた」
「そうですか。ありがとうございました」
「おう。また聞きたいことがあったら聞いてくれ」
ティアがラファの腕を軽く引いて、次の家へ移動した。
二人は人間の家の方へ歩きながら、寄生触手を通じてリョウに今の会話をそのまま伝えた。
リョウはすぐに返事をよこした。
『種族が混じって暮らしても、問題はなかったか知りたい。』
人間の男が家の前で薪を割っていた。
彼は二人が近づくと作業を止めて顔を上げた。
「ティア、どうした。ラファも一緒にいるな」
ティアが切り出す。
「他の種族のことを知りたくて。昔の話で何か覚えてることありますか」
男は斧を地面に立てかけて腰を下ろした。
「他の種族か。俺の爺さんが話してくれたことがある。遠い森に角が生えた種族がいたそうだ。交易に来るときはいつも黒い石器をたくさん持ってきてくれたらしい」
「その種族と人間が一緒に子供を作ったら、どうなるんですか」
ラファが男に聞いた。
男は少し笑みを浮かべて答える。
「確か子供はできるらしい。兄弟が多くて、人間と角の種族どちらもいたって聞いたな」
ティアが男にさらに質問を続けた。
「獣人ともそういう話はありますか。ラファたちの種族と人間で」
男は頷きながら言う。
「あるよ。昔、部族で獣人の男と人間の女が一緒になったことがあった。生まれた子は人間だったな」
二人は礼をいい男の家を後にして、次の獣人の小屋へ向かった。
ラファが歩きながらティアに小さく話しかけた。
「ティア様、2人とも子供については、同じようなことを言ってますね」
ティアがうなずいた。
彼女は寄生触手を通じてリョウに今の会話をそのまま流した。
リョウがすぐに反応する。
『面白いな。子供は必ず片方の種族になるのか。もっと他の種族の例も集めてくれ』
獣人の女が小屋の前で、リョウからティアを通して伝わった方法で、布を織っていた。
彼女は二人が来ると手を止めて迎えた。
「ティア様、ラファ、今日は何の用?」
ラファが先に口を開いた。
「他の種族の子供の話を知っていたら聞かせてください」
女は布を膝の上に置いて考え込んだ。
「猫耳の種族と鳥の羽の種族が一緒にいた話は聞いたことがあるわ。子供に関しては、子供が生まれたけど、兄弟でも猫耳の子も生まれれば、羽の生えた子だって生まれたって話ね」
ティアが女の隣に座って聞いた。
「混ざった子は絶対にいないんですか」
女は首を横に振った。
「聞いたことはないわね。どちらか一方の血が強く出るんだって。そんな話だったはずよ」
ラファが少し体を寄せてさらに聞いた。
「それで皆はどうやって暮らしてたんですか。他の種族と一緒に」
女は微笑みながら答えた。
「普通に暮らしてたよ。交易したり、狩りを手伝ったり。子供が生まれても問題はなかったみたいだし」
二人は女の小屋を離れて村の端の方へ歩いた。
人間の女が川から水を汲んで戻ってくるのとすれ違った。
ティアがすぐに声をかけた。
「ちょっと聞きたいんです。他の種族と人間の間で子供の話、知ってますか」
人間の女は立ち止まって、桶を地面に置いて答える。
「知ってるわ。私の叔母が獣人の男と一緒にいた時期があったの。生まれた子はかわいい獣人だったわよ」
「他の種族も同じですか」
女はうなずいた。
「同じよ。角の種族と人間の間でも、子供は角が生えた子か人間の子かのどちらかだって聞いた」
ティアがラファの腕を軽く引いて神殿の方へ戻り始める。
二人は歩きながら寄生触手を通じてこれまでの会話をすべてリョウに伝えた。
リョウが満足した様子で声をかける。
『よく集めてくれた。混血は生まれないのか……』
二人は神殿の入り口に戻って座った。
ティアがラファの手に自分の手を重ねた。
ラファは静かに息を吐きながら周りの村の様子を眺める。
人間の男が薪を運んでくるのが見える。
獣人の子供がそのそばで一緒に歩いていた。
二人は神殿の入り口から、村を眺め穏やかな朝の時間を見つめるのだった。
お読みいただきありがとうございます。
よろしければ、ブックマーク、評価などいただけると非常にうれしいです。
作者のモチベーションにもつながります。
よろしくお願いいたします。




