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guilty 41. 自転車通学してたらオカルトファミリーに誘拐されていた

 俺の通う私立亀頭高等学校は生徒の自主性を重んじる校風として知られている。一応は制服も用意されてはいるが、私服で登校も咎められないし、何ならバカ殿スタイルや葉っぱ隊スタイルとか落武者スタイルでも許されるだろう。昔、悪ふざけでクラスの男子が鈴木そ●子にも負けないくらいの厚化粧ナース服で登校してくるというちょっとした事案が発生した。しかし、生徒どころか先生もそいつのコスプレに対して何のツッコミもなく、淡々と何事もなかったかのように授業は進んでいったのであった。いっそのこと怒られた方が救いがあるやつ。


 ただし、それはあくまで学園内だけのことであって対外的なことに関しては滅法厳しいのだ。前に話した風俗飴ちゃん女装ゴリラ事件もその一つであるが、少しでも世間様に迷惑を掛けるようなことがあれば生徒指導室でお尻ペンペンでオギャアアンである。きっとこの学園の頭頂がサハラ砂漠な校長は世間体を滅茶苦茶気にする私利私欲に服を着せたような身も心もとっても醜い脂汗にまみれた百貫デブなのだろう。……。滅茶苦茶言っているが、実は只のイメージである。


 登下校に関しても結構なルールを強いられていて、平日の買い食いは勿論のことゲーセンやバッティングセンターといった娯楽施設の立ち寄りも禁じられている。勿論、よゐ子が胸を張って歩いているような僕にとっては縁のないことでございませう。……。バレていないから嘘は言ってないな、うん。


 登下校の方法も学年が変わる事に申請が必要で面倒臭い。徒歩、自転車、バイク、セグウ●イ、一輪車、保護者によるゴー☆ジャスな自家用ジェット機でお出迎え等々、登下校は多岐にわたる。事前申告は面倒臭いがその手続きひとつで如何様な登校をしても良いのである。そして、複数申告も可能というお堅いのか緩いのか良く分からない変な学園である。……今、ふと一瞬、学園がオムツを履いている姿を想像してしまった俺はきっと疲れているのだろう。


「今日の俺はロードバイク通学の気分だぜ」


 憎たらしいほど雲の無い太陽のカンカン照りな朝。太陽の光でしかめっ面の俺はロードバイクもとい使い古しのオンボロママチャリの傍にいた。え?ロードバイクをママリチャリとはだって?うるせえ、思春期の陰キャはな、ママチャリをロードバイクと呼びたくなるお年頃なんだよ。そうさ、ほおら、御覧遊ばせ。遠目から薄目で見ればこのママチャリも段々とロードバイクに見えてくるに違いない。


「キャハハハハ! ぶりぶりざえモーン! ぶりぶりー!」


 俺の横を小学生のガキンチョが走り抜けた。

そのガキンチョのランドセルがロードバイクもとい使い古しのオンボロママチャリに思いきり当たり、これまた思いきり転倒する。その所帯染みた一連の倒れ方にママチャリ特有の哀愁が漂う。


「……行くか、学校」


 使い古しのオンボロママチャリを立て直す。

俺の登校スタイルは基本的には自宅から駅までチャリ、そして駅から電車でGO!である。しかし、今日の俺の気分は最あ…最高であるから自宅から学校に直接チャリで重役ご登校である。自宅の最寄り駅から三駅先が学校の最寄駅である。距離にして約10キロ。運動音痴どころか運動力皆無な陰キャな俺にとっては朝から賽の河原で鬼に逆立ちで熱々の湯豆腐を爆速で食わされているようなものであるが、自分からこのような地獄ルートを選んだのは訳がある。


「チャリ通学ならモンスターとエンカウントすることはないだろうしな」


 モンスターとはリアルモンスターのことではない。俺にとっては天敵で、手に負えない奴らのことである。脳の九割がたが痴漢に支配されている異星界女に、メンヘラ重すぎヤバ過ぎコワ過ぎいつか事案女とか色々……毎日のようにこんなモンスター女どもと付き合っていたら俺の身体が壊れてしまう。


「はあ、はあ……それに、偶には運動も健康に良いし、な!」


 嘘である。

ギコギコとまるで前に進まないチャリを漕ぎながら俺は考える。毎日、こんな修行僧のような通学をしていたら俺の身体は壊れてしまう。モンスターとエンカウントしないのは良いが、俺の身体が肉体的に壊れてしまう。この通学方法は今日これっきりにしよう。そうだ、ポジティブシンキングタイムだ!痴漢女とかメンヘラ女に出会わないだけでも儲けものじゃありませんか!


 ぶおおおおん。


 息を切らせてハアハア言いながらチャリを漕いでいると突然真横から、何かが通りすぎたような劇風を肌で感じた。


「あっぶね!」


 いや、かすった!今、腕にチョーンって当たったよ!いや、誰?なんすか今の!?何事かと俺はチャリをその場に止めて、前方を見る。すると、黒塗りの霊柩車みたいな車が走っていた……かと思うと急ブレーキをかけた勢いで制動が効かなかったのか斜めに止まっていた。サーキット場かな。


「ばっ、バカヤロー!! アブねえじゃねえか、てやんでい!!」


 危うく事故りかけたことに肝を冷やしながらも俺は感情を爆発させた。いや、てやんでいとか初めて口にしたわ。兎に角、滅茶苦茶な運転をする不届きモノに月に変わってオシメしてやらなければ気が済まない。俺の怒声に気付いたのか、霊柩車みたいな車の後部座席のウインドウが少しずつ降りてきた。畜生、一言どころから二言三言、文句を言わなきゃ気が済まない!


「バカヤロー! なんつー運転をして」

「あ……ヒッヒヒッ、は、ハニィだあ、うわあい」 

「バッバカヤロッ……」(←小声)


 ギエピー!

車の後部座席のウインドウから姿を現したのはまさかの薬師寺サンであった。う、ううう、ウッソだろオイ。な、なんでこの厄災女がここに……お前、電車通学やったやないかい!


「き、奇遇ですねハニー。こんなところでも出会うなんてやはり私たちは運命の黒い糸で繋がれているというわけですね、ウヘッ、ウヘヘヘッ」


 俺は突然の出来事に呆然としていると薬師寺さんは指先をツンツンしながら下衆な笑みを浮かべる。奇遇?ほ、本当に奇遇なの?何か言いようのない悪意みたいな引力で引っ張られているような気がしてならないのですが。


「や、薬師寺サン……な、なんでここに」

「……薬師寺サンなんてイヤです。『ハニー』って呼んでください」

「い、いや、こんな人通りの多い往来で『ハニー』はだいぶきつ……」

「『ハニー』って呼んでくれないとあの封鎖中の踏み切りに車で突撃します」


 薬師寺サンは天使のような愛くるしい笑顔でバーが下りて電車が通過している踏み切りを指差す。いや、台詞と表情が絶望的に噛み合っていない。おかしいな、挨拶をしてるつもりがいつの間にか悪魔と契約しているような儀式に様変わり。このままでは霊柩車みたいな車が本当に霊柩車みたいになっちゃうよう。


「い、いや…やめて。は、早まらないで、ハニー」

「ウッ」


 俺が呼び掛けると突然白目になって涎を足らしながら痙攣しだす薬師寺サン。エッ。ちょっなにナニなになに、怖い怖い怖い。急なホラー展開はやめて。


「おや……これはこれは。お久しぶりでございますね植木様」


 今度は前方の運転席側のウインドウが開き、謎の白髪のジイサンが現れた。あ、この間、薬師寺さんのハウスで見かけた運転手だ!ていうか、お宅のお嬢様なんか痙攣して瀕死になっているんですけど大丈夫ですか?


「ああ、その点に関してはご心配ございませんぞ。お嬢様は植木さまのお言葉に感動(エレクト)しただけでございます、ハッハッハッ」


 謎の白髪の爺さんはパチパチと拍手する。感動って書いてエレクト呼びはやめて。そして、当前のように俺の思考を読むのはやめて。


「ところで……その様子はご登校に困ってらっしゃるのでは?」

「いや、困ってないです」

「成る程、ではその人妻チャリは後部座席に積込んで頂いて、植木さまはお嬢様のお隣の席へ」


 聞いてよおじさん!人の話をさあ。

ていうか、ママチャリを人妻チャリとか呼ぶ人初めて見た。断れる雰囲気でもないし、ジイサンの目力がなんかヤバかった。俺は仕方なくチャリを後部座席に乗せ、薬師寺サンが座っている座席とは反対側の扉を開いた。


「あら、誰かと思ったら植木くんじゃないの、いらっしゃい」


 扉を開けると薬師寺サンのママこと美夜さんが満面の笑みを浮かべて座席に座っていた。ヒエエエイ!ま、ママああああああ!?

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