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guilty 40. 俺は妹と友人の妹らの目の前でスーパー土下座した

「女子高生に土下座を強要するなんて……。一体、兄さんはどのようなご身分の方なのですか?」


 詩織は俺と未だ深々と床に頭を着けて嗚咽を上げている蒼海ちゃんを訝しげな目で交互に見ながら俺に問いかけてくる。詩織の口調は丁寧だが、言葉に圧を感じる。ついでに喋りながら耳たぶを引っ張られるという体罰を受けている。気分は大道芸で思い切りポカをかましたエテ公である。


「いちち……ち、違う。これは土下座を強要とかそういうアブノーマルな奴じゃないんです」

「何が違うのですか? 強要じゃなくて同意のもとで行っていると……成る程、『童貞がJKに土下座をお願いしてみたら泣きながら土下座をしていつの間にか純愛ラヴコメが始まっていた件について』。信じられると思いますか、そんな童貞が渇望するラノベタイトルのようなシチュエーションを」


 詩織の俺を見つめる眼力と耳を引っ張る力が強くなる。ヤバい、もうどう言い繕っても結局は俺が悪いという結末に収束するような気がする。だったら、押してダメなら引っ張るではないが、もういっそのこと開き直ってみるか?脳内で詩織に開き直ったらどうなるか想像してみる。


『土下座プレイをしていましたが、何か?』

『そうですか、ご近所にご迷惑を掛けますからそういったおプレイはお静かにお願いします』


 ……。

いや、絶対ないなとか思ったが見知らぬ女子がいる手前、ありか?詩織は他人には見てくれは良くするタイプであるから案外いけるかも。


「ど、土下座プ、ぷぷプレイをしていましたが、な、何か……? へへッ」


 俺は内心びびりながら、ニヒルな笑みを浮かべて恐る恐る開き直る。ヤバい、絶対にニヒルに笑う必要がない場面なのに中途半端に笑ってしまったせいで台詞に不審者味を帯びてしまった。傍にいる越谷さんは口を押さえて必死に笑いを堪えていた。なにをワロとんねん。


「……そうですか」


 詩織は真顔になるとリビングに引っ込む。あれ?終わった?すぐさまリビングから玄関に戻ってきた。右手に包丁を携えて。あれ?終わった?


「ちょっ」

「……。JKと楽しそうに土下座プレイで戯れている兄さんの傍で私は一人で包丁と戯れていますね、うふふふ」


 詩織はウットリと愛する人を見つめるかのような熱っぽい眼差しで包丁を見ながら手首に包丁を乗せている。えっ、えっと、ソロで包丁と戯れるってどういうこと?ま、まさかまさかの、リストカッ…いや、怖すぎる。JKと半分悪ふざけみたいな土下座プレイをしているすぐ隣で妹が笑いながら血飛沫が飛び散る展開になるとか想像するだけで失禁どころか脱糞ものである。世界観が違いすぎて頭がバグりそう。


「ま、待て。は、早まるんじゃありません」

「ヒッ、ヒック……ゆ、許してください、植木さん。兄さんをバラしても気が済まないなら……わ、わた、私が身体で責任を取ります」


 蒼海ちゃんは床から頭を上げて涙の溜まった瞳で俺に許しを乞うように見つめてくる。いや、いまとっても大事なところだからちょっと黙っててくれる?身体で責任をとるとか誤解しか招かない過激な台詞もその体勢で呟くのもやめて欲しい。


「…………」


 詩織は蒼海ちゃんに視線をやると続いて俺に視線を戻す。目が死んでいる。あれ?早まるのは詩織じゃなくて俺のライフポイントかな。


「と、とにかく。馬鹿な考えは止すんだ。キミの輝かしい人生はこれからなのです。そのような物騒な獲物は捨てなさい」


 俺は詩織にむかって床に手をつき、四足歩行の動物のような体勢で包丁を捨てるよう説得する。The土下座である。人間低姿勢からヘコヘコとワンコのように誠意を見せれば必ずその気持ちは伝わるというもの。俺は下らないプライドをかなぐり捨てて詩織の命を救う救世主なのだ。


「フフッ、何で田中も一緒になって土下座してんの、チョーウケる」


 越谷さんは小馬鹿にしたような笑みを浮かべて俺に指を指している。ナニをワロとんねん。


「救世主に向かって指を差すとは何事だ。土下座だ、キミも俺に向かって土下座するのだレッツトライ」

「きゅ、救世主? あんた、ナニ言ってるの? ていうか、いつまでこの茶番劇は続くの? あんたら二人が揃って土下座なんかしてたら怪しい新興宗教団体に見えるからいい加減に止めなさいよ」


 呆れるような表情で俺と蒼海ちゃんを見つめる越谷さん。


「……ふう。洒落にならない冗談もこれくらいにして、兄さん? この状況を説明してくれますね?」


 そして、続いて詩織は包丁を手首から離して溜め息をつく。あ、いつもの詩織に戻った。


「じょ冗談? えっと、今のリスカプレイも冗談だったの?」

「当たり前です。私はこんなことで自分を傷つける程、弱い女じゃありませんよ、兄…ひゃん!」


 俺は土下座状態からすぐさま立ち上がり、詩織のうなじにフッと生暖かい息を吹き掛けた。


「でも、詩織はうなじに息を吹きかけられるのは滅法弱いんだよな」

「……ちん●、切り落としますよ?」

「モウシワケナース!」

「はやっ……こ、この男、また土下座しやがった」


 詩織に独眼竜みたいな強烈な瞳で睨まれた瞬間、俺はすぐさま土下座に移行した。越谷さんは切り替えの早さにドン引いている。ち、畜生、ど、土下座が癖になっちゃうよう。このままでは履歴書の特技欄がスーパー土下座枠で埋まってしまうぞ。


「はやく説明してください、兄さん」

「はい。いやあの、俺もいまいち自分でも状況を掴めてないというか把握できていないというかなんというか。なんかこの子が俺に失礼を働いたと思い込んで謝罪に来たみたいなんです?」

「何故、私に聞いてくるのですか。何だか要領が掴めない説明ですね。と、そちらの方達は……」


 詩織は視線を蒼海ちゃんと越谷さんに送る。

流石の蒼海ちゃんも土下座モードから立ちんぼモードに切り替わっていた。すると、何か。俺は美少女三人の間で一人だけ土下座をしている男になるわけか。


 ……な、何だかドキドキしてきたぞ。

後ろめたくて背徳的な気分になるのは何故なのか。そ、そうか、この低姿勢からのアングルは危険だからか!美少女のスカートの中身が冷めても滾る俺の勃起心を誘う…いや、わけわかんね。勃起心って何だよ。こっそりとスカートを覗いているみたいで何か申し訳なく感じた俺はその場で立ち上がる。


「何をやっているんですか、兄さんはそこで土下座していてください、シッダウン」


 え、イジメ? 


「成る程、折原さんは兄さんのド変態お友…の妹さんでそのお友達が越谷さんですね」

「あっ、はい……。わ、私も植木さんに妹さんがいらっしゃるとは露とも知らず、申し訳ありません」

「えっと、何の謝罪ですか?」

「あー、いいのいいの。この娘、謝罪するのが癖になってるちょっと頭のネジが数本どころか全部外れた壊れかけのポンコツメイドロボみたいなものだと思ってくれてていいし。何なら斜め四十五度からしばいたら治るかも」

「お、お願いします詩織さん。実ちゃんもそう言ってますし、頭が陥没するくらいに思い切りパコーンとやっやっちゃえNISS●N」

「い、いやいや、やりませんよ!? ほ、本当に大丈夫ですか、このひと!?」


 どうやら俺が心の中で勃起を堪えている間に互いの自己紹介は終わっていたようだ。いや、俺氏、完全に蚊帳の外である。俺以外で詩織が興奮している姿を見るのも久しぶりのような気がするな。なんか変態みたいだが、そういう意味ではない。いやしかし、越谷さんは同性に対しては気安い感じなんだな。本人に聞いたわけでも聞けるわけでもないが、ひょっとしたら俺が嫌いというより男自体が嫌いなのかもしれないな。


「そうなんです、兄が私が植木さんのことをす、すすすすす、すき焼きに違いないとか訳のわからない供述を……」

「すき焼きって……本当にわけのわからない供述ですね。折原さん、大丈夫ですか? 緊張しすぎですよ」

「す、すみません……。長いこと植木さんの植木スメルを嗅いだお陰でさまで元気になりました。どうもありがとうございます」

「か、会話になってるようななっていないような……。あと、折原さん、植木スメルってそれ、兄さんのことだと思うんですけど私も含まれてしまうのでお願いですから使用するのは今後控えて頂けませんか?」

「あ、はい、わかりました。今後は植木スメルは決して嗅がないと血判状を用意します」

「け、血判状はいらないですよ……怖いですよ。なんだこの子は……手に負えない」


 うんうん、女子三人寄れば姦しいとは言うが本当に仲が良いことですな。そんな仲の善きかな三人の女子の足下で土下座する俺はスカートの中を覗かないように必死に己の煩悩に抗っているという……なんだこれ。生殺しが過ぎるう。据え膳食わぬは男の恥である。スカートがヒラヒラと踊っている姿を目の当たりにすると覗け、覗いてしまえと言っているようなものだ。だめだ、完全に不審者の思考回路になってしまっている。


「とにかく、兄さんに謝る必要は一切ありませんし、気にすることありませんよ。兄さんと貴方のお兄さんが勝手に妄想して勝手に話をしているに過ぎないと私は思います。兄さんはちょっとアホなところがありますから」

「そうねー、私もそう思うよ蒼海。あんたのお兄さんも思い込みが激しいところがあるからねー」

「そ、そう……そうです、ね。分かりました、詩織さんや実の言う通り、気にしないことにします。あとは帰宅したら兄をバラしておきますね」

「い、いや……そ、それはシバくくらいにしてあげてもろて……」


 ところで俺は下着は純白が好きである。

いや、ブリーフでなくて女子のね?クマさんだのチェック柄だの余計なものは必要ないと考えている。白パン派閥に属している。学園のメガネのモブ陰キャ男子に誘われて入ったのだ。いや、別にその正式な部活とか同好会とかそんな大層なものではない。あくまで精神的な繋がりの同志とでもいうか。いや、やっぱなんだか気持ち悪いからいまのパス。


「……じゃ。ま、蒼海のよくわからない悩みも解決したし。私たちは帰りますか」

「そ、そうですね……でも、植木さんのお家に行く機会もそれ程、無いと思うので名残惜しいですが、お土産に植木スメルを袋に詰めて帰ります。」

「台詞の前半と後半の話の落差がすごいな……か、勝手にしなさいよ。じゃあ、詩織さん、ありがとうございました。田中はまたね」 


 その陰キャモブメガネの話しでは何でも純白の白は汚れなきところに魅力を感じ、美少女たちが使用する毎に汚れが増すからそこに憧れ、痺れるのだと。なんのこっちゃ。高度な変態の話しは純粋無垢な俺には着いていけませぬ。でも──


「やっぱ白パンは最高だなあ!!」

「はっ…はあっ!?」


 越谷さんに思い切り軽蔑の眼差しで睨まれた。

あれ?俺、何かやっちゃいました?

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