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15 真聖剣エクスガブバー

 目の前の光が徐々に弱まっていく。


 僕はまた死んだんだ。また生まれ変わるなら、今度は生き物がいいかな。


「なんだこの輝きは?」


「ちょっとボウヤ、どうしたんだい?」


 何やら外が騒がしいな。

 ゆっくりとまぶたを開けてみる。


 目の前には血と炎と廃墟になった街並み。

 まるで地獄の様な光景、今度の転生先も失敗のようだ。


 などと呆けている場合ではない。


(僕生きてる!?)


 状況は変わっていない。オバちゃんは変わらず頭の上で騎士の大剣を防ぎ続けている。

 唯一変わったところがあるとするならば、それは僕自身だ。聖剣は砕けたはずなのにオバちゃんはまだ戦っている。


(さっきの光はもしかして…)


 僕は少し考えて、一つの結論に辿り着いた。まさかとは思ったがこれ以上時間はかけられない。


(オバちゃん、僕の身体小さくなってない?)


 僕の意外な質問にオバちゃんは驚いた顔をした。


「あぁ。折れたと思ったらキラキラして縮んだけど無事だったのかい?」


 思った通りだ。心なしかオバちゃんの声にも余裕が戻った気がする。


(今ならアイツの剣を簡単に跳ね返せるはずだよ)


「何だって?」


(いいから。大丈夫だよ、僕を信じて)


 半信半疑ながらもオバちゃんが腕を上げる。すると呆気ないほど簡単に、騎士の大剣を押し戻すことが出来た。

 思わぬ事態にそのまま2、3歩騎士が後ずさる。


 その光景を目にしてマリアンヌは口を開けている。でも一番驚いているのは、押し返したオバちゃん本人だろう。


「この力はなんだ、何が起こっている?」


 騎士の態度にも焦りの色が出始めた。


(さぁ反撃開始だ)


 今更だがFOQ(フォッキュー)は王道RPGである。最後はラスボスである魔王を倒してハッピーエンド、これは絶対だ。


 だからガヴリールは途中で折れるが、ちゃんと最後には勇者が勝つのだ。


 確かに聖剣を失ってからゲーム難易度は大幅に跳ね上がる。

 だが魔王城での決戦前に、ドワーフの鍛治職人がガヴリールを打ち直してくれる。良くあるパワーアップイベントというヤツだ。


 決戦前だけあって復活した聖剣、真聖剣の力は凄まじい。

 装備した勇者の全パラメータ上昇、毒や麻痺などの状態異常無効、毎ターンパーティ全員のHPとMPを回復とトンデモ性能になっている。


「スゴイね、何だか身体が軽いよ」


 オバちゃんはグルグルと肩を回してみせた。マリアンヌの唇もピンク色に戻っている。思った通り真聖剣に覚醒したようだ。


「でも一体何がどうなってるんだい?

 折れちゃうとは聞いたけど、変身するなんて聞いちゃいないよ」


 オバちゃんの疑問ももっともだ。ゲームと同じように、最初は僕も死んだと思っていた。


 だから、たった一つだけある負けイベの回避方法を失念していた。


 魔人の騎士との戦闘で10ターン経過する。


 ネットでも未だに語られる噂だ。

 それこそレベルをカンストまで上げても上手くいくか分からない。だが、それを満たせば負けイベントを回避していきなり聖剣が覚醒するらしい。


 らしい、というのは確証がないからだ。話は聞くが、実際に条件を満たした動画もアップされていない。

 だから攻略情報というよりもデマの類だと思っていた。この瞬間までは。


「おのれぇ!」


 後退した自分が許せないのか、騎士は大剣を振り回した。おそらくはじめての経験だったのだろう。

 傷つけられたプライドはそのまま怒りとなってオバちゃんに襲いかかる。


 だがオバちゃんは剣を構えない。むしろ無駄のない動きで騎士に歩み寄って行く。

 ただでさえ人間離れしているオバちゃんだ。そのうえ今は体力全快で、身体能力は大幅に引き上げられている。


 攻撃を完全に見切っていた。最小限の動きで即死級の一撃を次々に躱すその姿は、まさに「当たらなければどうという事は無い」を体現していた。


 そのまま懐に入り込むと、挨拶がわりの一撃をお見舞いする。見事鎧の腹に命中し、騎士の身体が僅かに宙に浮いた。


「凄いじゃないかこの剣。縮んだと思ったら大したモンだよ」


(そうさ。これこそが生まれ変わったガヴリールの真の姿、その名は……)


 そこまで言ってしまったと思った。この剣には唯一にして致命的な弱点があったのだ。


「その名は?」


 楽しそうにオバちゃんが顔を覗き込んでくる。


(……エクスガブバー)


「エクス……なんだって?」


(真聖剣エクスガブバーだ!)


 唯一にして致命的な弱点、それは名前がクソカッコ悪いと言う事だった。

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