2白
彼女とそいつと、なんとなくそのビルでよく会うようになった。
待ち合わせなんかしていない。
ただ、いくと居る。
話はするけど、オタク会話なんだ。
相手の名前なんかなくったって会話が出来て。お互い名前を名乗ることさえしなかった。
適当な会話。
適当に流れる時間が心地よかった。
会話から察して、たぶん同じ年の彼女は、とても可愛かった。
俺はしだいに彼女に惹かれてて。
彼女もまんざらでもないかなって。
あいつは、話に乗るときもあれば、一人でタバコを吸っているときもあって。
そして。
「えっ?」
と声を合わせて、その音域と長さがあまりにもぴったりなことに気がついて俺達はぎょっとした。
彼女はこう言ったのだ。
「双子の兄弟じゃないの?」
誰かに似ていると、思ったのだ。
でもそれは自分だとは思いもしなかった。
鏡に映る影と、本人同士の姿はまるで違うのだ。
そいつと、初めて喋った。
互いに父親が居ないこと。
互いに、母に似てない容姿であること。(俺の場合は、ばあちゃんがそう言っていたからそうだと思うだけで)
彼女は面白そうに俺たちの話を聞いていたけど、おもむろに立ち上がった。
「ごはんの時間になっちゃう。じゃあね」
と、やっぱり軽い音を立てて、階段を下りていってしまった。
長い髪が揺れて、残る甘い香りが、最近切なく感じる。
「ってことは俺らの親父は共通かもしれねーってことか。すっげー偶然だな。うちもかなり遠くから引っ越してきたんだぜ?」
微かに怒りを感じる。
相手の目が、笑ってない。
俺も笑っていなかっただろう。
俺にとっては母を自殺に追い込んだ男。
こいつにとっては母親と自分を苦労させている男だ。
その想像はまったく、楽しくなかった。




