表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
骨の中  作者: 無夜
2/7

§1黒

 ああ、畜生。

 お袋見てると、すっげーいらつく。

 部屋の中にいても、階下でかすかに響く押し殺した足音さえ許せないって感覚。

 自分を押さえるために外に出てぶらついていたら、見慣れないビルが出来てて。

 あ、できちゃいない。途中で放置されたって感じの。

 いいや。こん中でタバコでもふかして、落ち着こう。落ち着かないと、またお袋を殴りたくなる。

 中の階段昇って、適当な階で止まる。

 三階。これより上に行くのはめんどーだったし。これでいいや。

 風を浴びようと、もう少し開けた部屋に出てみたら、同じ制服を着ている奴と鉢合わせた。

 やべえ。

 タバコ見られた。

 見たことある奴だ。奴は非常階段から降りていこうとしていたようだったけど。

 それより前に女が飛び出してきた。

 見慣れない制服。

「あ・人がいたんだ」

 甘ったるい声が、俺の気に触った。



 お袋は怯えたように俺を見る。

 たしかに俺は気に入らなけりゃ、皿は投げ割るし、花瓶も叩き壊す。

 でも、そんなに距離を作ることねーじゃん。

 親父もいなくて、二人っきりの親子だってのにさ。去年ぐらいから、かな。いきなり、はっと気がついた顔をして、俺を避けだした。

 時々夜中に、寝言で俺に対して謝っていた。「ごめんね。ごめんね。・・・・・・んであげなくて」

 鬱々と泣きながら。

 俺も精神的にかなりやばい。

 お袋はまだ二十九だった。苦労したせいで年食って見えるけど、まだまだ綺麗だし、男だっていっぱい言い寄るのに、独り身で、ずっと俺を一人で育ててくれた。

 俺だっていらいらなんてしたくない。

 なんとか、前みたいに、「母さんのために良い子になるから」と言っていたいのに、お袋の態度がそれを許してくれない気がした。

 最近になってすごくいらつく理由は、お袋の襟元からちらりと見えた、鎖骨の上の古い傷のせいだ。

 もう癒えて白い跡になっているだけなんだけどさ。あれは歯型だった。

 意識したら、それから駄目だ。

 すごくいらいらしてきた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ