↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
未来の自分からの指示は、すべて正しいはずだった  作者: ゆうあ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
21/25

第21話「思い出せ」

――本当に、それだけだったのか。


家に帰ってからも、翔太の言葉が頭から離れなかった。


『思い出せ。』


何度考えても、意味が分からない。


俺はトイレで翔太のスマホを拾った。


それだけだ。


少なくとも、俺の記憶では。


ベッドに寝転び、天井を見る。


目を閉じる。


あの日のことを、最初から思い返してみる。


授業中。


先生の声を聞きながら、俺は窓の外をぼんやり眺めていた。


その時だった。


翔太が手を挙げた。


「先生、トイレ行ってきていいですか。」


「ああ。早く戻れよ。」


「はい。」


翔太はそう言って、教室を出ていった。


俺は少ししてから、翔太を追って教室を出た。


廊下を歩く。


翔太の姿は、もう見えなかった。


そのまま男子トイレへ向かった。


扉を開ける。


中を見渡す。


誰もいない。


「……翔太?」


呼んでみる。


返事はなかった。


少し待った。


それでも何も聞こえない。


「翔太?」


もう一度呼ぶ。


やっぱり返事はない。


そこで俺は、床に落ちているものに気づいた。


スマホ。


ケースの欠けた角。


翔太のスマホだった。


そこから先も覚えている。


拾った。


画面を見た。


そして教室に戻った。


翔太は、何事もなかったように座っていた。


そこまでは間違いない。


俺は目を開けた。


「……」


何かがおかしい。


翔太を追ってトイレに行った。


でも、トイレには翔太がいなかった。


そして、翔太のスマホだけが落ちていた。


それなのに。


「……何がおかしいんだ。」


もう一度、目を閉じる。


先生。


翔太。


廊下。


トイレ。


「翔太?」


スマホ。


何度繰り返しても、同じだった。


でも、翔太は言った。


『思い出せ。』


俺が何かを見落としている。


そう言いたかったんだろう。


「……」


俺はもう一度、あの日のトイレを思い浮かべる。


誰もいない。


静かなトイレ。


流れ続ける蛇口。


床に落ちたスマホ。


――その前。


「……待て。」


俺は身体を起こした。


スマホを見つける前。


俺は何をしていた?


「翔太?」と呼んだ。


それは覚えている。


でも。


その前に何かあった。


ほんの数秒。


何かを見た。


何かを聞いた。


……いや。


違う。


俺は、何も見ていない。


何も聞いていない。


そう思った瞬間。


なぜか、背中が冷たくなった。


俺は机の上を見る。


そこには、まだ返せていない翔太のスマホが置いてある。


「……翔太。」


思わず名前が漏れた。


あいつは、あの日のことを知っている。


そして俺に、


『自分で思い出せ。』


と言った。


だったら。


俺が思い出すべきなのは、スマホを拾ったことじゃない。


その前だ。


俺はもう一度、目を閉じた。


そして、あの日の数秒間を思い出そうとした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。