第17話「後でいい」
二日連続で掲載します!
翌朝。
目が覚めても、昨日の通知が頭から離れなかった。
『まだ返すな』
たった一言。
その意味を何度考えても、答えは出ない。
机の上に置いた翔太のスマホを手に取る。
画面は真っ暗なまま。
「……いや、返さない方がおかしいだろ。」
小さく呟き、スマホをポケットにしまった。
未来の俺が何を知っているのかは分からない。
でも。
このまま持ち続ける理由も、俺には分からなかった。
教室に入ると、翔太はもう来ていた。
友達と笑いながら話している。
その姿は昨日と何も変わらない。
俺だけが、ポケットの重みを気にしていた。
授業中も。
休み時間も。
何度も翔太の方を見る。
返そう。
そう思うたびに、タイミングを逃した。
そして四時間目が終わる。
翔太は一人で教室を出ようとしていた。
今しかない。
俺は立ち上がった。
「翔太。」
呼び止めると、翔太はゆっくり振り返った。
「ん?」
俺はポケットからスマホを取り出す。
「これ……。」
翔太の視線がスマホに向く。
その瞬間だった。
ほんの一瞬だけ。
翔太の表情が固まる。
でも、それはすぐに消えた。
「……やっぱり、お前のだよな。」
翔太は何も答えない。
スマホを見つめたまま、小さく息を吐いた。
数秒の沈黙。
やがて翔太は静かに口を開く。
「……後でいい。」
「え?」
思わず聞き返す。
「今じゃない。」
「いや、でも……。」
「後で。」
それだけ言うと、翔太は俺の横を通り過ぎていく。
結局、スマホを受け取ることはなかった。
俺はその場に立ち尽くしていた。
手の中には、返せなかったスマホ。
訳が分からない。
昨日の通知。
『まだ返すな』
あの言葉を知っていたみたいな反応だった。
でも。
翔太は何も説明しない。
未来の俺も、何も教えてくれない。
ポケットにスマホをしまう。
画面は最後まで光らなかった。
通知は、一度も来ない。
それなのに。
『まだ返すな』
その一言だけが、頭の中で何度も繰り返されていた。




