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未来の自分からの指示は、すべて正しいはずだった  作者: ゆうあ


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第14話 「何でもない」

「まだいたんだ」

前の廊下から出てきた雨宮が、少し驚いたように言った。

「ああ」

短く返す。

「帰らないの?」

「今から帰るところ」

そう答えてから、自分でも少し間があった気がした。

「ふーん」

雨宮はそれ以上聞かなかった。


「雨宮こそ」

「先生に呼ばれてた」

「そうなんだ」

会話が途切れる。

気まずい。

少し前まで、こんなことはなかったはずなのに。


「じゃあ、私もう行くね」

雨宮が歩き出そうとする。

その時だった。

「雨宮」

気づけば呼び止めていた。

雨宮が振り返る。

「ん?」

言葉が出てこない。

ポケットの中のスマホを握る。

何を聞くつもりだったんだ。


「……いや」

「また?」

雨宮が少し笑う。

「最近そういうの多いよね」

「そうか?」

「うん」

雨宮は頷く。

「話しかけてきたと思ったら、何でもないって言うし」

「……」

「変なの」

最後だけ、いつもの調子だった。


少しだけ安心する。

でも、それと同時に迷う。

聞くなら今しかない気がした。


「雨宮ってさ」

「うん?」

「……翔太と話したりする?」

言った瞬間、後悔した。

なんでそんなことを聞いたんだ。


「翔太くん?」

雨宮は少し考える。

「たまに話すよ。クラスも同じだし」

「そっか」

「急にどうしたの?」

「いや、別に」

反射的にそう返していた。

雨宮はじっとこちらを見る。

「またそれ」

「……」

「今日は本当に変」


ポケットの中のスマホを握る。

話そうと思えば話せる。

でも。

『雨宮から離れろ』

あの通知が頭をよぎる。

結局、何も言えなかった。


「じゃあ、今度こそ帰るね」

雨宮は小さく手を振る。

「……おう」

今度はちゃんと返事ができた。

雨宮が歩き出す。

数歩進んだところで、ふと振り返った。

「悩みがあるなら、一人で抱え込まない方がいいよ」

それだけ言って、今度こそ去っていった。


その背中が見えなくなるまで、なんとなくその場に立ち尽くしていた。

俺も帰ろうと歩き出す。

ポケットの中のスマホに触れる。

結局、何も話せなかった。

聞きたいことは、まだたくさんあるのに。


昇降口へ向かおうとした、その時。

ポケットの中でスマホが震えた。

思わず足が止まる。

取り出す。

画面には通知が一件。

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