第15話「信じるな」
画面には通知が表示されていた。
『信じるな』
思わず足を止める。
信じるな。誰を。
短い言葉。でも、その意味は分からない。
頭に浮かんだのは、さっき別れたばかりの雨宮だった。
「悩みがあるなら、一人で抱え込まない方がいいよ」
その言葉が頭の中で繰り返される。
信じるな。雨宮を?
どうして。
意味が分からない。
スマホをポケットにしまう。考えても答えなんて出ない。そう自分に言い聞かせながら、昇降口へ向かった。
靴を履き替える。
周りには部活帰りの生徒が何人かいた。笑い声。話し声。
いつもと変わらない放課後。でも、俺だけが違う場所にいるみたいだった。
校門を出る。ふと振り返る。
夕焼けに染まる校舎が見えた。当然だけど、そこに雨宮の姿はない。
それなのに、なぜか少し気になった。
『信じるな』
また通知を開く。
誰を信じるなっていうんだ。
雨宮か。翔太か。それとも、未来の俺か。
そこで、ふと気づく。
俺は今まで、一度も通知を疑ったことがなかった。
理由なんて何一つ教えてくれないのに、ただ未来の自分だと信じて従ってきた。
『動くな』
『話すな』
『雨宮から離れろ』
『正しい』
『探すな』
どの通知も、結局理由は分からないままだ。
それでも、俺は従った。
どうして。
未来の自分だから?
本当に未来の自分なのか?
そもそも、どうして未来の俺がこんなことを知っているんだ。
「……何なんだよ」
小さく呟く。
もちろん返事はない。
駅へ向かう途中、ポケットの中のスマホに触れる。
もう一つのスマホ。翔太のスマホだ。
相変わらず、何の変化もない。昨日からずっと、そのまま。
立ち止まり、少し迷ってからスマホを取り出した。
黒い画面。当然、ロックは解除できない。
でも、今までちゃんと見ようとしたことはなかった。
スマホを裏返す。ケースの端が少しだけ欠けていた。
見覚えがある。
確か、少し前、翔太が机の角にぶつけていた気がする。
間違いない。これは翔太のスマホだ。
だったら、どうして翔太は探していないんだ。
気づけば、駅のホームに着いていた。
電車が入ってくる。ドアが開く。
乗り込もうとして、足が止まる。
俺は、何を信じればいいんだ。
その時だった。
ポケットの中でスマホが震える。
反射的に取り出す。
画面には通知が一件。
『後ろを見るな』
息が止まる。
なぜ。
どうして今。
ゆっくりと顔を上げる。
ホームには何人か人がいる。特別おかしなところなんてない。
それなのに、嫌な予感だけが胸の奥で膨らんでいく。
その時。
背後から足音が聞こえた。
コツ。
コツ。
ゆっくりと。
確実に。
こちらへ近づいてくる。
思わずスマホを握りしめる。
振り返るべきか。
それとも――。




