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フォルドウ  作者: お寿司


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25/29

幕間⑤ 確信

霞が関合同庁舎六号館B棟、地下。


午前一時十七分。


柏木真帆の暗号通信端末がアラートを発した。


深夜のオフィスに柏木だけだった。缶コーヒーの四本目から手を離し、復号鍵を入力した。


ファイルが展開された。


船舶名:パシフィック・スター号。パナマ船籍。コンテナ識別番号 IRSU-4521780。積荷申告:工業用セラミック部品。現在位置:北緯三十二度、東経百三十七度付近。北東進行中。目的港:横浜港南本牧ふ頭CT。


浦賀水道到達まで推定八時間。


起爆シーケンスの技術仕様。衛星経由リモート信号。暗号化コード体系。送信周波数。データの末尾に注釈があった。


「フォルドウ通信制御室はUF6/HFガスにより汚染。起爆コントローラの機能回復には完全な基板交換が必要。現時点で起爆信号の送信は不能と推定」


推定。確証ではない。


だが、このデータを持ち出した人間がいる。施設の内部に。名前も顔も知らない。


三ヶ月前のホテルニューオータニの廊下が浮かんだ。モサド連絡官のコーエン。「仮定の話——フォルドウで兵器が完成に近づいているとしたら」。あのとき国交省の担当官が廊下の向こうから歩いてきた。アザデガン油田の次期契約交渉。


柏木は受話器を取った。NSC(国家安全保障会議)事務局次長・久保田直樹の携帯番号を押した。


三コール。四コール。


「……誰だ」

「柏木です。公安調査庁の。次長、あのとき握りつぶしたレポートの件です。船が来ます」


久保田の呼吸だけが回線に載っていた。五秒。十秒。


「……データの確度は」

「フォルドウ核施設の内部サーバーから持ち出された作戦データです。捏造するには核兵器の設計知識が必要です」


沈黙。三秒。


「……海保に回せ。今すぐだ」


回線が切れた。柏木の指が震えていた。

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