余韻
「……」
戦いが終わった後、俺は採石場で地球魔獣を見つめ直している。
待機中の地球魔獣はトカゲやワニのように四足歩行生物のような体勢で四肢を密着させていた。
改めてじっくり見てみると、その大きさと強さが伝わってくる。
また、地球魔獣に乗っかってる城に目をやると……。
「あ! これ小牧城じゃねぇか!?」
どっかで見たことがあると思ったら、それは俺の地元にある 『小牧城』 だったからだ。
「はい、そうですけど」
ヴィズゥネスもそのことを認める。
「小牧に誰もいなくなってしまったので、魔獣をコントロールする装置として小牧城を拝借しました」
「んうまぁ!?」
ヴィズゥネスの言い分に、俺は鳩が豆鉄砲を食ったかのようにきょとんととした。
はっきり言って、大切な建造物を勝手に改造するのはどうかと思ったが。
小牧城みたいなデカイ建物を半日でコントロール装置に改造したばかりか、飛べるようにするなんて凄い技術力である。
ヴィズゥネスの技術力を再認識させられるな。
「しかし……」
俺とヴィズゥネスがそんな話しをしているときにドラ助六は地球魔獣の上に乗っかって何かやっていた。
「凄いよ! 頭の先っちょから尻尾の先っちょまで測ってみたら全長二千六百九十一デシメートルもあった!」
「大きさ調べてたのか!? てか、ややこしい単位使うな!」
はっきり言って、デシメートルなんて単位が使われることなんて殆どない。
大抵、デシメートルを使うぐらいの大きさを測るときは、センチメートルかメートルで事足りるからだ。
まあ、それはともかく。
ドラ助六が調べたお陰で、地球魔獣の正確な大きさが分かった。
「地球魔獣の方が大妖怪よりもデカイから強いぞ♪」
ドラ助六は自信満々にそう言った。
確かに、団三郎の魔獣・大妖怪の大きさは二百三十メートルぐらいなので、地球魔獣よりも小さい。
しかし、生物の大きさイコール強さではない。
また、地球魔獣は竜脚類 (バロサウルス) をベースにしている為、首と尾がえらく細長く。それで全長の数値を稼いでいるに過ぎない。
その為、胴体の大きさだけで見たら地球魔獣と大妖怪のサイズ差は同じか、下手をすれば地球魔獣の方が小さいかも知れない。
「僕が調べなかってら地球魔獣の大きさは分からなかったんだよ。どうだい、凄いだろぅ♪」
ドラ助六はドヤ顔で俺とヴィズゥネスに迫ってくる。
「誉めて欲しいんだよ」 というオーラを出しまくっている。
(なんとあからさまな態度なんだ!)
「はい、ドラ助六は凄いです」
呆れ気味な俺とは違い。ヴィズゥネスは普通に誉めている。
オマケにその言っているときの口調と眼差しは嘘偽りのない真っ直ぐなもの。
外見は邪悪なのに、心はとんでもなく透き通っている。
そういうのサラッと言えるなんてすげぇな (汗)
(ヴィズゥネス、アナタは何者なんだ)
「えへへへぇ♪」
一方、誉められたドラ助六は上機嫌。
まるで犬のように尻尾振って興奮していた。
しかし、犬がするとかわいい仕草だが。ワニのようなゴツい尻尾のドラ助六がやっても、かわいいとは思えないな……。
◇
「では、そろそろ山に帰りますか」
「そうだな」
「うん!」
いつまでも採石場に居座る訳にもいかないので。
暫しの余韻を味わった後、俺達は山に帰ることに。
「では皆さん、城の中に入ってください」
「わかった」
「お宅訪問♪ お宅訪問♪」
ドラ助六の変なテンションはともかく。
俺達は城の中に入る。
「……」
小牧城に遊びに行ったことはあるので、城の中は大体把握していたが。
城の中は変化らしい変化はなかった。
正直、大改造されたメカニカルなの想像してただけに少し残念だ。
「んで、ヴィズゥネス。操縦室はどこだ?」
「はい、操縦室は3階です」
「そうか」
そんで、俺達は3階に。
小牧城の3階は元は情報コーナーで、小牧市内の文化財やお祭りなどを紹介した映像を見ることができたが。そのモニターを操縦席にしたようだ。
「元は2階の長久手合戦コーナーを操縦室にしようと思ったのですが。3階をメイン操縦室にして、2階をサブ操縦室にしまして……」
ヴィズゥネスはしばらく改造した小牧城の説明をした。
だが、専門的過ぎてチンプンカンプン。
「ポカァーーーーン……」
このオーバーテクノロジーを俺が理解できる筈もなく。頭がオーバーヒートしそうになった (汗)
「それでシステムはですね」
「説明はもういいから。そろそろ山に帰ろうぜ」
長くなりそうだったので、俺は話しを強引に終わらそうとした。
「……それもそうですね」
特に疑問も持たず、ヴィズゥネスは帰ることを理解してくれた。
「飛翔!」
「おわっ!?」
ヴィズゥネスが操縦すると、地球魔獣は空高く飛び上がる。
「出発ぅ!」
そして地球魔獣は山に向かって飛んでいく。
しかし、大妖怪にも言えることだが。翼が無いのに、魔獣はどうやって空を飛んでいるのだろうか?
謎である。
◇
地球魔獣が山にドシンと着陸。だが……。
「あれ?」
どういう訳か宇宙船が無い。
「おい、ヴィズゥネスどうなってるんだ。違う山に着陸しちゃったじゃないか!」
「そんな筈は……。ちょっと調べてみますので、少々お待ちください」
ドラ助六に言われて、ヴィズゥネスが調べるが……。
「調べてみましたが。間違いはありません」
場所に間違いはなかった。
「じゃあ、なんで宇宙船が無いんだ?」
「それはわたくしにも分かりません」
この不思議な出来事に2人は首を傾げるばかり。
「よいしょ!」
煮え切らない2人に痺れを切らした俺は、城から出て勝手に調べることにした。
「……これは!?」
すると、宇宙船に押し潰されたと思われる木々が露出していた。
(もしや!)
「ヴィズゥネス、地球魔獣で直ぐに飛んでくれねぇか!」
「え? なんでですか?」
「いいから早く!」
「は、はい!? 分かりました!」
慌ててヴィズゥネスは地球魔獣を飛ばす。
そして4階の展望室から山を眺める。
「やっぱりそうか!」
「なにがやっぱりなんですか?」
「そうだよ、離岸。僕達にも分かるように説明してくれ」
2人が揃って俺に質問してくる。
「あれを見てみろよ」
俺は山を指差す。
「「ん? ……あれは!?」」
上空から眺めると、それはなぎ倒された木々がくっきりと宇宙船の形になっていた。
そう、宇宙船は何者かによって盗まれたのだ。
「うわーーーーーー! どうなってんだこれ!?」
事態の深刻さにドラ助六は頭アッパラパーに抱え込んでメチャクチャにパニクる。
「宇宙船を盗んだのは、まず間違いなく狸達でしょう」
ドラ助六とは打って変わって、ヴィズゥネスは冷静に分析していた。
「しかし、狸達はどうやって宇宙船を運んだんだ?」
宇宙船の大きさは百五十メートル級。
正確な重さは分からないが、相当な重量だと思われる。
そんなデカくて重い物を運べる訳がないし、そもそも宇宙船を引きずったような跡もない。
俺の頭では、どうやって運んだのかまったく分からなかった。
「考えられる方法は、宇宙船そのものを操縦して運んだとしか考えられません」
「ヴィズゥネス、あの宇宙船は飛べないんじゃなかったっけ?」
宇宙船は不時着したときにかなりの損傷を受けていたので、飛べる訳がない。そう思っていた。
「はい。主翼の片方がもげて、エンジン出力が低下しているので、宇宙まで飛ぶことはできません」
「だろーーーー」
俺の予感的中。だが……。
「ですが、大気圏内であれば飛行可能です」
「なんと!?」
信じられないことだが。宇宙船はあのようなボロボロな状態でも飛べるらしい。
「しかし、飛べるには飛べるのですが。宇宙船の入り口にはロックがかかっているので、我々以外入ることができない筈なのですが……」
「だよな。合い言葉のこと知ってるのは俺達だけだよな」
なんて、俺とヴィズゥネスが話していると。
「あ!」
ドラ助六が何か思い出す。
「ごめんなさい。僕です」
なんと、原因はドラ助六だった。
「「なんですとぉ!?」」
ドラ助六の打ち明けに、俺とヴィズゥネスは声を揃えて驚いた。
「ドラ助六、いったい何やらかしたんだよ!?」
俺は軽い発狂状態でドラ助六を問い詰める。
「いやぁ、急成長エキスを取りに戻ったときに扉を締め忘れてた」
「おバカ!!」
「ひゃあ!? ごめんなさい!」
俺が怒鳴りつけるとドラ助六は土下座して謝る。
「ドラ助六、だいたいオマエはだな!」
しかし、この深刻な事態を引き起こしたドラ助六を簡単に許すことができず、ネチネチと失敗を非難するが。
「まあまあ、離岸さん。そんなに責めてはドラ助六が可哀想ですよ」
しょんぼりするドラ助六を見ておれないと思ったヴィズゥネスが助け舟を出す。
「しかしヴィズゥネス、コイツはだな」
「離岸さん。今は仲間を責めるよりも、どうするか考えることが先決です!」
ヴィズゥネスは強い眼差しで俺の目を見詰める。
「……まあ、確かに」
正論な上、こんな真剣な眼差しで見詰められたら、そう言うしかなかった。
「それに、宇宙船には舷側に2連装サイドガンが1門装備されているだけで、大した戦力にはなりません」
「そうなのか?」
「はい」
「じゃあ大丈夫か」
俺はヴィズゥネスの言葉を信じることにした。
しかし、この楽観的な判断が間違っていたことをこのときの俺達は、まだ知らない……。




