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命の大きさ  作者: 黄金の右脚
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団三郎が地球に到着しちゃった!? でも、まだ魔獣が完成してないぞ。どうしよう!!


「うーん……」


 いきなりだが、俺は学校の図書室で、歴史の本を読み漁っている。

 ちなみに、探しているのは団三郎の資料だ。


 これはヴィズゥネスに聞いたことだが。団三郎は地球の出身だというのだ。

 しかも、数百年も前から地球にいたという。

 そこで、歴史の本を調べれば 『団三郎のことが分かるかも知れない』 そう思い、調べている訳だ。


 しかし、すでに9冊調べたものの、団三郎のことは何も載ってない。

 そもそも、団三郎とは何者なのか?

 正体不明な相手ほど怖いものはない。

 俺は目に見えない恐怖を振り払うかのごとく、団三郎の資料を探した。


「ダメだ~~~」


 勉強嫌いな俺としては珍しく頑張った方だが。団三郎のことはまったく分からなかった。

 そもそも冷静に考えてみたら、数百年も生きられる人間がいる訳がない。

 人間の寿命は、持って百年。

 数百年生きられる人間なんて、世界中探してもいないだろう。

 そうやって考えると、団三郎の謎は深まるばかり。

 結局、いつものようにヴィズゥネス達の宇宙船に行くことに。


 ◇


「はいやぁ! たぁ! とぅ!」


 宇宙船にいくと。ヴィズゥネスが三度笠を被り、新道中合羽を羽織って、刀を振り回していた。


「……ヴィズゥネス、なにやってるんだ?」


「あ! 離岸さん」


 かなり夢中になって刀を張るっていたらしく。

 俺が不意に話し掛けると、ヴィズゥネスは驚いて若干よろけてしまう。


「いやあ~、恥ずかしいところを見られてしまいましたね」


「そういうのはいいから。それどうしたんだ?」


 俺はヴィズゥネスの服を指差す。


「実を申しますと……」


 ヴィズゥネスの話しによると。

 ドラ助六とヴィズゥネスは、地球人研究のために、山に捨ててあったテレビを修理して使用。

 その際にヴィズゥネスは時代劇に影響され、侍にハマってしまったとのこと。


「てな訳なんですよ」


「ふーーーん」


 話しを聞く限り、ヴィズゥネスがテレビに影響されたのは明らかである。


「しかし、なんなんだよ。その、お〇すびまんみたいな恰好は?」


「よくぞ聞いてくれました!」


 俺がコスチュームの事を問うと。待ってましたと言わんばかりにヴィズゥネスの目が輝く。

 それは子供が興味を示すときの目にとても似ていた。

 ちょっと嫌な予感。


「この恰好は、お侍さんのコスチュームを真似したものなのですよ♪」


(予感的中)


 案の定、ヴィズゥネスは時代劇の話題を語ってきた。


「映画 『オサムライ3』 に登場した 『お侍さん』 が刀を振り回して敵を倒す姿がカッコよくて♪」


 ヴィズゥネスに質問したとき、いやな予感がしたが。

 思った通りになってしまった。

 こういうのは、話してる本人は楽しいかもしれないけど。興味のない話題に突き合わされるコッチとしては退屈なだけだ。

 しかし、そんな俺の気持ちなど知らないヴィズゥネスは30分もの時間、映画オサムライ3のことを話し続けた。


「……ってなお話です♪」


「わかった、わかった」


 長かった話しからようやく解放された。

 話してる方は楽しいから、体感時間は10分ぐらいにしか感じないと思うが。

 聞いてる方は退屈な時間を過ごしているので。体感時間は90分ぐらいに感じた。


「しかし、その衣装はどこで調達したんだ?」


「これは町に行って買ってきたのですよ」


「なにっ!?」


 まさかの事態。

 宇宙人が町でうろついてたなんてことが知られたら、大騒ぎになってしまうからだ。


「ヴィズゥネス、オマエはなんてことをしちくれたんだ!」


「すいません。でも、ドラ助六が一緒に町に行こうと、強引に誘ってきたのですよ」


「なに!? それは本当か!」


「はい。それで、つい誘惑に負けてしまって」


 ヴィズゥネスが嘘を言ってるようには見えなかった。

 首謀者はドラ助六に間違いなさそうだ。


「ドラ助六のヤツ!」


 俺は怒って宇宙船の中にいるドラ助六の部屋に向かった。

 しかし、そこでも、また呆れることが。

 宇宙船の入り口が開けっ放しだったのだ。


(なんと不用心な!)


 これでは、せっかく決めた合い言葉も意味がなかった。

 俺はますます腹を立てながらドラ助六の部屋に向かう。


「おい! ドラ助六!!」


 俺はドラ助六の部屋の扉を開けて、大声で叫んだ。


「おわっ!?」


 呑気にアニメを見ていたドラ助六は意表を突かれてビックリ。

 緊張の無さが露骨にでた、哀れな姿である。


「どうしたんだい離岸。そんな怖い顔して?」


 状況がイマイチ理解できてないらしく。

 ドラ助六は間抜け面で俺に問い掛ける。


「ドラ助六、勝手に町に行ったそうじゃねえか」


 俺はニヒルな表情で厭味っぽくドラ助六を問い詰める。


「ドキッ!?」


 俺の言葉に、ドラ助六から焦りの色が見えた。


「なんのことやらぁ~。僕が出掛けた証拠があるのかなぁ?」


 ドラ助六は平静を装ったが。目が泳いでいる。

 その上、あからさまに俺から視線を合わせようとしない。

 動揺が表情に表れてるのは誰の目から見ても明らか。

 

 俺は推理小説の主人公が、犯行の証拠を容疑者に突きつけるかのように、ドラ助六を問い詰める。


「ダラダラ、ダラダラ」


 ドラ助六はガマの油を採取されるガマガエルのごとく、タラリタラリと汗を流す。


「今謝ったら許してやるぞ」


「ごめんなさい」


 俺が譲歩すると、ドラ助六は速攻で謝ってきた。

 コイツはチャンスを逃さず有効活用する、要領のいいヤツなのか?

 それとも、プライドが無いのか?


 ……それはともかく。

 宇宙人が町中でうろついてたなんて知れたラ大事だ。

 そんなことになれば。今まで秘密裏に進めていた計画もパーになる。

 だから、2人には山から出ないように注意深く言っておいたのだが。約束は破られてしまった。

 なので、俺はドラ助六に取調べと事情聴取をする。


「いやあ~。無人販売所で芋を買いに行ったら、町が見えたもんで、気になって行っちゃったの」


「そんな理由で……」


 行動理由はあまりに衝動的で、呆れて言葉を失った。

 

 しかも、聞いてみると。ヴィズゥネスは始め、町に行く事に反対してたという。

 それを強引に説得して一緒に町に出掛けたたとのこと。

 ドラ助六の好奇心は (悪い意味で) 旺盛である。


「……まったく。今回は許すが、もうするなよ」


「はい」


 一応反省しているようで。ドラ助六はショボンとしていた。


「しかし、町は楽しかったか?」


「スッゴッく楽しかった♪」


 可哀想だと思い。ちょっと話題を変えてみると、元気いっぱいに返事してくる。


「……ちゃんと反省しているか?」


 なんだか反省してるか怪しくなり、もう1度聞いてみた。


「はい……」


 そうすると、ドラ助六は急にテンションの下がった、元気無さそうな返事をした。

 これがは反省したか、反省して無いのか、判断に困るな(汗)


「それから、ドラ助六。門番であるオマエが入り口を開けっ放しにしてどうする」


 また、入り口を開けっ放しにした理由も問い詰めると……。


「あ! 作戦失敗した奴は!?」


「遅いよ!!」


 と、コントみたいになってしまった(笑)


 その後、俺はドラ助六にたっぷりお灸を据えるのだった……。


 ◇


 さて。

 反省会 (?) も終わると。俺達はドラ助六の部屋で会議を開始する。


「それで、魔獣の成長具合はどうなっている?」


 ドラ助六に質問したが。


「……」


 返事がない。


「ん?」


 よく見てみると、ドラ助六は何かを真剣に見つめていた。

 彼の視線の先を見ると。


「てっ!?」


 テレビが着いていた。


「ドラ助六! 会議中にアニメを観るな!!」


「だって、途中観がったから、続きが気になって」


 あろうことかドラ助六は、さっき観てたアニメのDVDをいつの間にか再生していた。


「そんなにアニメが観たいか?」


「うん!」


 問いかけてみたが。返事は即答だった。


「そもそも、なんてお話観てんだ?」


「俺、〇インテールになります。」


「ぶっ!?」


 ドラ助六が観ていたお話は、美少女アニメだった(笑)


「なんでそんなもん観ようと思った!?」


 理由を問い詰めるも。

 あまりに予想外の作品だったので、俺は動揺してセリフがカミカミ。

 舌が縺れているのは明らかだった。


「いやあ~。パッケージのテイ〇イエローを見ていたら、なんだか他人みたいに思えなくって」


「そんな理由で……」


 普通、こんな理由で 『俺、〇インテールになります。』 のDVDを買うヤツはいないだろう。

 しかし、髪型や髪の色は違うとはいえ。ドラ助六とテイ〇イエローの雰囲気はよく似ていた。

 特に、発情したようなメスの顔なんて、そっくりだ。


 ……それはともかく。

 これでは会議に差し支える。


「後何分で終わる?」


 なので、アニメを後何分で終わるか聞く。


「15分ぐらい」


「じゃあ、アニメ観たら会議に参加しろ」


「わかった♪」


 ルンルン気分で返事をしたら、ドラ助六は寝転がって、アニメの一時停止を解除。

 視聴を再開する。


「まったく……」


 少々呆れつつも、俺とヴィズゥネスはイスに座って、テーブル越しに作戦会議を一足先に始める。


「……それでヴィズゥネス。魔獣の成長具合はどうなっている?」


「心配しなくても、魔獣に急成長エキスが使えるようになったら、この機械が反応しますので。大丈夫ですよ」


 ヴィズゥネスはそう言って、テーブルの上に、よくわからない箱型の機械を置くと。それをポンポンと叩いた。


 この機械、上に電球が3つついた木製フレームで覆われた中に、真空管のようなものが3つ入っている、なんだかよく分からない機械。

 どうやって使うのだろうか?


「機械は嫌いだ。もうちょっと実感のわくようなものはないのか?」


 正直言って、俺はアナログ派。

 機械いじりは苦手。

 上手く扱う自信ないので。つい突き放すようなことを言ってしまった。


(ごめん、ヴィズゥネス)


「……では、直接魔獣を見てみますか?」


 しかし、ヴィズゥネスはそんな俺の態度など気にせずに。案を出しつつ、微笑んでくれた。

 なんて優しいヤツだ!?


「魔獣見に行くの?」


 2人だけで話しを進めていたが。

 アニメを見終わったドラ助六が会話に加わる。


「そうですが。ドラ助六もミニ行きますか?」


「モチのロン♪」

 

 んで、3人で魔獣を見に行くために、外に出るが……。


「いない!?」


 ドラ助六が穴を調べると、どういう訳か。魔獣の姿が無い。


「ヴィズゥネス、これはどうなっているんだ?」


「調べてみますので、少々お待ちください」


 そして、穴を調べること3分。


「やはり、そうでしたか」


「分かったのか!?」


「はい」


 ヴィズゥネスはコクリと頷いた。


「んで、ヴィズゥネス。地球魔獣はどこに行ったんだ?」


「どうやら魔獣は、地中深くに移動したようです」


「ありゃりゃ」


 危機的状況なのに、呑気な顔のドラ助六。

 緊張感の無いヤツだ!


「ありゃりゃじゃねぇぞ、ドラ助六! どうする気だ?」


 なので、俺はドラ助六を叱る。


「まあまあ、離岸さん。魔獣は地上近くに現れたら、探知機でわかりますよ」


 探知機とは。ちょっと前にヴィズゥネスが出した機械のことである。


「……そうなのか?」


「はい。ですからご心配なく」


 ヴィズゥネスのお陰で、少し安心したが。保安な気持ちも残っている。


(安心と不安が半々の割合でごちゃ混ぜになってしまって。なんだかよく分からない気分だ)


 などと、考えながら空を見上げていると……。


「なんだアレは!?」


 空から2つの物体が飛んでいる。

 どちらもかなりデカいが。

 1つはコピー機のような形をしていて。

 もう1つの方は、3つの首を持つ胴体だけの巨大な生物のように見えた。


(いったいなんなんだあれは?)


 なんて首を傾げるが……。


「あっ!」


 2つの物体は地上に向かって、徐々に落下している。


「ありゃあ、小牧方面こまきほうめんだ!」


2つの物体は小牧方面に向かって突っ込んでいく。


「まずい! あんなもんが直撃したら大変なことになるぞ!」


 俺は1人慌てるが。

 何をやっていいか分からないで、アタフタするだけだった。


「落ち着いてください、離岸さん!」


「はっ!!」


 慌てる俺に、ヴィズゥネスは活を入れて落ち着かせる。


「すまん、ヴィズゥネス」


 俺は頭を下げて、ヴィズゥネスに詫びの言葉を言う。


「気にしないでください。それよりも、あの物体をなんとかしなくては」


「どうする気だ?」


「説明している時間がないので、移動しながら説明します。ついてきてください」


「お、おう!」


「わあった」


 なんだかよく分からないまま、走るヴィズゥネスに俺とドラ助六はついて行く。


「コレに乗ってください」


「コレは!?」


 少し走ると、ボロボロの車が置いてあった。

 恐らく、この車も不法投棄されたゴミの1つだろう。


「コレに乗れってか!?」


 乗れト言われたが。

 この車。フロントはいがみ、ボディが錆びつき、ライトも割れていて、とても動きそうに見えない。


「こんなこともあろうかと、修理しておいたので、大丈夫ですよ」


「分かったよ」


 そう言って乗るが。こんなおんぼろが動く訳が……。


「なっ!?」


 ヴィズゥネスが車のエンジンを入れると。ブルンブルンとエンジン音を鳴らしながら、普通に動いた。


「出発!」


 そして車は走り始める。


「……」


 殆ど100パーセント動かないと、疑っていたが。車はちゃんと動いている。

 信じがたい修理の技術力である。


「ヨイショ!」


 なんて、俺が思っていると。ヴィズゥネスは運転しながら、何か取り出した。

 それは黒色のレインコートで。ヴィズゥネスはハンドル片手に、レインコートをパパッと羽織る。


「どうしたんだ、それ?」


「これですか? これは正体を隠すために作ったんですよ」


「まさか!」


 そう、そのまさかだ。

 ヴィズゥネスは地球人に自分が宇宙人だとバレないように変装していたのだ。


 この変装、カムフラージュとしては微妙だが。

 一応、カムフラージュとしてしては機能している。

 ちなみに、この変装。ドラ助六と町に出掛けたときにもしていたらしい。


「全速力!」


 ヴィズゥネスはアクセル全開。車は加速する。


「おわっ!?」


 信じがたいことだが。このポンコツは時速200キロ近いスピードで走っている。

 なんちゅうスピードだ。

 ヴィズゥネスは、どんな方法で修理したんだ?


 ◇


「間に合いました!」


 なんやかんやで、落下物が落っこちる前に、俺達は小牧に到着した。


「って! どうやってアレを食い止めるの!?」


「あ! すいません。説明するの忘れてました」


「なにぃ!!」


 移動中に説明するといったが。ヴィズゥネスは運転に集中しすぎて、説明するのを忘れていた。

 などと言っているあいだも、落下物は近づいてくる。


「ぎょわーーーーっ!!」


 落下物が衝突する。

 そう思い、目を瞑るが……。


「……あれ?」


 目を瞑ってから20秒経過したが、なんともない。

 俺は恐る恐る目を開けてみると……。


「わおっ!?」


 落下していた2つの物体は俺達の10数メートル上空で、ピタッと止まっていた。

 落下物は何もせず、しばらく空中に浮かんでいたが。


「「「「ザワザワ、ザワザワ」」」」


 騒ぎを聞きつけて、次第に野獣魔が集まってくる。

 あっという間に野獣魔は200人以上集まり、ざわめいていた。

 

 だが、そんなとき。

 コピー機のようなものから、シュッと、何かが飛び出てきた。


「アレはなんだ!?」


「鳥か!?」


「飛行機か!?」


 みんな思い思いのことを言うが。


「いや、ありゃ狸だ」


 1人老人が、とんでもないことを言い出す。


「「「「ズコーーーーッ!?」」」」


 そのせいで、野獣魔の殆どがズッコケた。


「おい! 爺さん、アレが狸かっ……て、本当に狸じゃねーか!?」


 1人の若者が老人に文句を言いながら建物の上にいるものを指差したが。

 出てきたものは、まぎれもなく狸だ。それも、年老いた古狸。

 それにより、周りの緊張ムードは一気に下がった。


 だが、ドラ助六とヴィズゥネスは険しい表情で狸を見詰める。

 そして、ドラ助六は狸を指差して大声で。


「久し振りだな、団三郎!!」


 狸のことを 『団三郎』 と言い出した。


「えっ!?」


 状況が理解できず、俺は目をパチクリさせた。


「……その声。キサマは惑星ドラゴンの……」


 俺がパニクってるあいだ、狸はドラ助六に口をきく。

 その声は 『中年男性のようなしょぼくれた中に深みのあるダンディーな声』 だった (ちょっとかっこいい)


「ヴィズゥネス。あの狸が団三郎なのか?」


「はい。忘れもしない恐ろしいん顔です」


「マジかよ……」


 俺の想像してた団三郎のイメージと、現実の団三郎の姿にギャップを感じた。

 はっきり言って、肩透かし食らった気分。


(しかし、団三郎が狸だったなんて……)


「……狸?」


 なんだかよく分からないが。この単語が頭の中に浮かんだ。

 そして少し考えてみる。


「……団三郎狸!!」


 思い出した。

 団三郎は、佐渡に伝わる伝説の化け狸だった。

 だから、人間の歴史本をいくら調べても団三郎のことが載ってない筈である。


 なぜに、んなこと知ってるのかって?

 実を言うと。俺には佐渡で暮らすお婆ちゃんがいた。

 小さかった頃に、古いお話をしてくれたが。そのお話こそ、団三郎の昔話だったのだ。

 団三郎の名前を聞いたことがあるように感じたのも。これが原因だ。

 すべてを思い出した俺は 「なんでもっと早く気づかなかったんだ!」 と、自分に苛立ち。怒りで歯を食いしばった。

 

 だが、その怒りも直ぐに疑問に変わる。


(伝説では、団三郎は人間との知恵比べに負けて、人を化かすことをやめたというが……)


 それが何で宇宙に?


「人間ども、わしは地球に帰って来たぞ!!」


 俺が疑問に思ったのもつかの間。団三郎は人間に、憎しみと殺意のこもった言葉を投げ付ける。


「フンッ!」


 個人的感情を叫んだ子と思ったら。団三郎は手の平から蒼黒い球体状のエネルギー弾を放つ。

 エネルギー弾は近くにあったビルに直撃。

 砕けたビルの破片が、下にいた人達に降り注ぐ。


「キーーーーッ!!」


「助けてーーーー!」


 当然、下にいた人達は大パニック。

 多くのケガ人をだしてしまった。

 まるで特撮さながらの光景である。


「団三郎、なんてことするんだ!」


「そうだ! オマエは人間との知恵比べに負けて、人間に悪さするのをやめたんじゃないのか!」


 その場に居合わせた人の中に団三郎の伝説を知っている人がいて。

 団三郎の伝説にある、過去に人間に悪さをするのをやめたことを指摘。


「シュッ」


 すると、団三郎は建物から宙返りしながら舞い降りてくる。


「フッ!」


 団三郎は聞く耳を持たないと言わんばかりに鼻で笑った。


「なにがおかしい!」


 団三郎の態度に、野次馬の1人が食ってかかる。


「それはオマエ達人間が都合のいいように解釈したに過ぎぬ」


「なに!」


 驚く野次馬を横目に。団三郎は話しを続ける。


「わしは神隠しに巻き込まれ、別の星に飛ばされていたんじゃ!」


「「「「!?」」」」


 なるほど。そういうことか。

 団三郎が歴史の途中で行方知れずになったのは。神隠しにあって、地球からいなくなっていたのが原因だ。

 彼の説明で謎が解けた……。


 ……なんて感心している場合ではない。

 団三郎は俺達地球人に、明らかな敵意を持っている。

 早く何とかしないと大変なことになってしまう。


「アイヤァーーーーッ!」


 などと思ったのも束の間。

 ドラ助六が団三郎に殴りかかっていく。


「フッ!」


 しかし、団三郎は猛牛のごとく突っ込んでいないくるドラ助六を、闘牛士のようにひらりと回避。


「フンッ!」


 攻撃を避けるると、ジャンプしてドラ助六の頭目掛けてまわし蹴り。


「フンギャア!?」


 回し蹴りはドラ助六の顔面に見事直撃。

 そのまま3メートルもぶっ飛ばされてしまう。


「雑魚が」


 団三郎は、ぶっ飛ばしたドラ助六に 「自分の方が強いんだぞ!」 と言わんばかりの挑発的な態度で見下す。


「上等だ! コラァ!!」


 これに怒ったドラ助六は団三郎にむちゃくちゃに攻撃を仕掛ける。

 しかし、冷静さを失ったドラ助六の攻撃は、パンチもキックも単純。簡単によけられてしまう。

 こうなるとドラ助六に勝ち目はなかった。

 そう、ドラ助六は団三郎の挑発にまんまと乗ってしまったのだ。


「愚か者め!」


 団三郎は素早くドラ助六の足元に移動。ガブッと足に噛み付いた。


「グワーーーーッ!!」


 ドラ助六は激しいダメージによろける。

 

「ハッ!」


 団三郎は軽い身のこなしでドラ助六から距離をとり、大きくジャンプ。

 空中で丸まって勢いよく回転を加える。


「終わりじゃ」


 そして、ドラ助六目掛けて突っ込んでいく。

 その回転力はグレイ〇サイク〇ン並の超スピードに達している。


(ヤツはザ・犀〇愚か!?)


 足のダメージで、ドラ助六はまともに動けない。


「ゴッ!?」


 団三郎の回転攻撃はドラ助六のボディに直撃。


「ブッ!」


 そのダメージでドラ助六は軽く吐血した。


「ドサッ!」


 今の攻撃が決め手となり。ドラ助六は倒されてしまう。


「ドラ助六!」


 倒されたドラ助六に、俺は慌てて駆け寄ろうとしたが。


「ドラ助六の敗因は、彼の動きの悪さですね。あんなロボットみたいなカクカクしたぎこちない動きでは、負けて当然です」


「冷静に分析しとる場合か!!」


 ヴィズゥネスにツッコミを入れつつも。ドラ助六を助けに向かう。


「散れ!」


 俺はドラ助六を助けるべく。拳を振り上げながら団三郎に後ろから殴り掛かる。


「!」


 だが、団三郎は俺の拳が当たる直前に緊急回避。

 攻撃は紙一重でかわされるが。この攻撃の目的は、団三郎を殴ることではない。

 真の目的は、負傷したドラ助六の救出。

 だから、攻撃は失敗でも。救出という意味では成功と言える。


「よいしょ!」


 俺は大急ぎでドラ助六を抱き抱えるが。


「重っ!?」


(こりゃあ80キロぐらいあるぞ!)


 外見は太っているようには見えないが。ドラ助六は見た目よりもずっと重かった。

 恐らく原因は、尻尾と象牙だろう。この2つがデッドウェイトとなって、見た目以上の体重になっていると思われる。 

 しかし、今はそんなこと考えているときではない。

 俺はドラ助六をお姫様だっこした状態で必死に逃げた。


「手伝います」


「サンキュー」


 途中、ヴィズゥネスも運ぶのを手伝ってくれた。


 ◇


「ふうっ!」


 距離の離れた安全な場所に、ドラ助六を置く。


「次は団三郎か……」


 ドラ助六を助け終わると。次はいよいよ団三郎との直接対決だ。


「コレを使ってください」


「あ、あぁ」


 ヴィズゥネスは2本腰に差していた刀の1本を俺に渡してくる。

 と言っても、この刀は見てくれだけの模造刀だと思うが。こんなんでも無いよりはマシ。

 2人で刀を構えて、再び団三郎に戦いに行く。


「ギャーーーー!!」


「グワーーーー!?」


 戻ってみると。団三郎は人間を手当たり次第に攻撃していた。

 襲われた人達は、かなり手ひどく痛めつけられたらしく。周辺には血だまりができていた。


(団三郎のヤツ、思ったよりもやりおる)


 このままでは被害者が増えるばかりだ。

 正直、団三郎のことは怖い。

 だけど俺は勇気を振り絞って、団三郎に立ち向かう。


「いやぁーーーー!!」


 刀を振り上げて、団三郎の背後から斬りかかる。


「!」


 しかし、またしても団三郎に察知されて、かわされる。


「またオマエか」


 顔を覚えられてしまったようで。団三郎は鋭い眼光で俺を睨みつけた。

 あれは人を殺そうとするときの目だ。


(まずい! やられる!?)


 そう思ったが。


「アイヤァーーーー!!」


「!?」


 団三郎が攻撃を繰り出す前に、ヴィズゥネスが団三郎に斬りかかった。


「大丈夫ですか?」


「ああ、お陰で助かったぜ」


 攻撃は避けられたが。ヴィズゥネスのお陰で命拾いした。


「ヴィズゥネス、2人同時に攻めるぞ!」


「はい! 離岸さん!」


 2人で団三郎にガンガン攻め込む。


「クッ!」


 流石の団三郎も2人の素早い太刀筋に、避けるだけで精一杯らしく。まったく攻撃してこない。

 その証拠に、彼の顔から若干焦りの色が出てきた


「クソゥ!」


 状況不利とみた団三郎は、俺達の攻撃を回避しつつ、後ろに大きくジャンプ。

 9メートル程距離をとる。


「しもべ共、出番じゃぞ!」


 そして、自分の乗ってきたコピー機風の宇宙船に大声で叫んだ。

 そうすると、紙みたいなものが宇宙船から大量に射出される。

 射出された紙みたいなものは、俺とヴィズゥネスを取り囲むように並んだ。

 

「なんだこれは!?」


 それはよく見てみると、切り絵アニメのキャラクターみたいな形をしていた。

 得体の知れないものに、俺は少し怯んでしまう。


「やれ!」


「「「「ハッ!!」」」」


 団三郎が命令すると、切り絵達は一斉に声を揃えて返事した。

 コイツらには意思があるらしい。


「なんなんだよ! コイツらは!?」


 予想外の事態に、俺はベタなセリフを言ってしまう。


「この人達こそ 『ビップバップ族』 なのです」


「コイツらがか!?」


 以前、団三郎の配下に 『惑星ビップバップ』 の人達がいると聞かされたが。コイツらだったか。

 てっきり地球人みたいな姿を想像していたが。

 実際のヤツらの姿は、かなり予想を裏切る姿だ。

 まさか、こんなペラッペラッな姿形をした宇宙人がいるなんて想像できるヤツはいないだろう。

 コイツら見ていると、つくづく宇宙は広いと思った。


 ……なんて思っている場合ではない。

 ビップバップ族がジリジリと迫ってきているのだ。


「「「「団三郎様の命令だ! 貴様らを排除する!!」」」」


 声を揃えてそういうと。ビップバップ族が100人一斉に飛びかかってくる。


(やるしかないのか!)


 戦闘力が未知の相手と戦うのは嫌だが。

 襲い掛かってくるいじょう戦うしかない。


「ダァーーーー!!」


 俺は躊躇いと嫌な気持ちを1秒で振り払い、ビップバップ族に切りかかる。


「「!?」」


 そうすると、ビップバップ族の2人が横に真っ二つになる。


(弱っ!?)


 あまりに簡単に倒すことができたのにも驚いたが。

 1番驚いたのは……。


「これ真剣じゃねぇか!?」


 使った刀が本物だったことだ。


「ああ……」


 てっきり模造刀だと思ってたから驚きも大きかった。

 なにせ、団三郎に刀で攻撃したときは、すべて避けられてしまったので気づかなかったのだ。

 まったく、思い込みとは恐ろしいものだ。


「「「「クッ!」」」」


 そんなことを俺が心の中で思ってたとき。

 ビップバップ族は臆病風に吹かれたらしく。一旦後ろに下がり歯を食いしばって、俺達にビビっていた。


「なにをやっておるか! ビビってないで戦え!」


「「「「!?」」」」


 不甲斐ないビップバップ族に、団三郎は活を入れる。


「「「「団三郎様万歳!」」」」


「「「「団三郎軍団万歳!」」」」


 そうすると、戦意喪失状態を克服し、再び襲いかかってくる


「ハァッ!!」


「「「「グェッ!!」」」」


「「「「ゴっガァ!!」」」」


 だが数しか能にないヤツらがガンガン攻めてきても大した脅威ではない。

 俺は黙々とビップバップ族を切り倒していく。

 

 しかし、ビップバップ族が弱いと聞いていたが。これは想像以上の弱さだ。

 体の急所は地球人と同じだが。防御力と耐久力が地球人それよりも桁違いに低い。

 だから、心臓部分を貫いたら直ぐに死ぬし。首を切り落としても死ぬ。


 フィクションでは凄まじい耐久力や驚異のの再生能力を持ったキャラクターがいるが。コイツらはそういった類いではない。

 ヤツらの戦闘力は 『特撮に出てくる戦闘員』 と同等かそれ以下。

 もの凄く弱かった。


 そんなんだから、こうやって説明してるあいだも数10人倒せた。

 装甲や耐性が低いヤツのことを 『紙』 と言うらしいが。コイツらは読んで字の如く、紙みたいにペラッペラッだから、紙を切断するようにいともたやすく切れる。


 さらに、ヴィズゥネスの刀が切れ味抜群なこともあり、5~6人重なっていても、すんなり切ることができる。


(この刀は ※業物か?) 


※業物 優れた刀鍛冶が作ったよく切れる刀。


 ヴィズゥネスがどこでこの刀を調達したかは分からんが。この刀のお陰で鬼に金棒だ。


(中学の頃に習った剣道も役に立ったな)


 俺は時代劇に出てくる剣豪にでもなったつもりでビップバップ族を倒していく。


「なっ!?」


 かなり倒したと思ったが。

 ヴィズゥネスの足元を見て驚いた。俺の倍以上も打ち取っていたのだ。

 俺は中学の剣道の授業ではクラス1強かったから、剣術には自信があったが。

 まさか、ヴィズゥネスがこんなに強かったとはビックリだ。


 刀を振るう彼の姿は、普段とは打って変わって、強い侍のように見えた。

 いつもの控え目でお淑やかなヴィズゥネスとは大違い。

 その強さは、まさに百人力。

 そんな言葉が頭に浮かぶ。

 だが、こんな強いヤツが味方だと心強い。


(もっと俺も頑張らないとだね!)


 そんな対抗意識を胸に。ビップバップ族を次々となぎ倒していった。


 ◇


「……」


 高い所から戦いを眺める団三郎。

 しかし、その顔は部下の不甲斐ない戦い振りに怒っていた。


「もういい! 出しゃばるなマヌケ!!」


 業を煮やした団三郎は、ビップバップ族を下がらせる。


「やっちまえ、大妖怪だいようかい!!」


 団三郎がそう叫ぶと、空に浮かぶ3つの首を持つ謎の巨大生物が 「ゴゥーーーーーーッ!!」 と、雄叫びを上げる。


「!?」


「なんだあれは!?」


 ビップバップ族を深追いしていた俺達だったが。

 このけたたましい鳴き声のする方向に目をやる。

 そうすると、空に浮かぶ巨大生物が動き出した。


「やれ!」


 叫び声とともに巨大生物は3つの口から火球を打ち出す。

 火球は俺達目掛けて向かってくる。


「どわーーーーっ!?」


「あぁ!?」


 火球は地面に当たり、その衝撃で、俺達は吹き飛ばされてしまった。

 直撃しなかったとはいえ、凄い破壊力だ。

 もし直撃していたら、俺達は一瞬で蒸発していただろう。想像しただけでも怖ろしい。


「大丈夫ですか、離岸さん!」


 吹き飛ばされた後、先に起き上がったのはヴィズゥネスだった。

 彼は自分も掠り傷だらけなのに、俺のことを心配してくれた。


「掠り傷だらけだが、なんとか大丈夫だ」


「よかった」


 俺の言葉を聞くと。安心からか、ヴィズゥネスはホッとしていた。

 しかし、安心している場合ではない。このままでは狙い撃ちにされてしまう。

 なので、俺とヴィズゥネスは一旦建物の中に逃げ隠れる。


「ヴィズゥネス、あの化物は何なんだ?」


「あれは魔獣です」


「なに! あれも魔獣なのか!?」


「はい」


 ヴィズゥネスは悲しそうな目でそう言うと。コクリと頷いた。


「しかし、ヴィズゥネス。魔獣は俺達の作っているのと、ヴィズゥネスの故郷にしかいないんじゃねぇのか?」


「いえ、そうではありません」


 そう言うとヴィズゥネスは首を横に振った。


「魔獣というものは汚れた星で生まれる邪悪な生命体です。ですから、環境破壊の進んで汚染された星なら、どの星からでも誕生するでしょう」


「そ、そんな……」


 この事実に、俺はショックで肩をガクンと落とした。


「恐らく団三郎はどこかの星を汚して壊して魔獣を作ったのだと思われます」


「そうなのか?」


「あくまでも推測ですが」


「うーーーーむ……」


 魔獣は自分達だけのものだと思っていたが。そうではなかった。

 なんだか、今まであった独占欲が砕け散ったような気がした。


「しかし、ヴィズゥネス。団三郎の魔獣は強いのか?」


「魔獣としてはそこまで強くありません。あの強さではヒドゥンブルグの足元にも及びません」


 この説明だと、団三郎の魔獣が弱いように思えますが。

 実際にはヒドゥンブルグが強過ぎる為、そう聞こえるだけで、団三郎の魔獣が弱い訳ではない。


「それで、ヴィズゥネス。俺達に勝ち目はあるのか?」


「はい、地球魔獣が完成すれば勝ち目はあります」


 ヴィズゥネスは強い眼差しで断言した。

 なんと心強い言葉だ。

 その言葉は不安な気持ちを吹き飛ばし、俺は勇気づけられた。

 だが……。


「!?」


「うわぁーーーー!?」


 突然の攻撃に、俺達の隠れた建物は一瞬で吹き飛ばされた。

 俺達は魔獣に察知されていたのだ。


「ガァッ!?」


 魔獣が悠々と現れたとき、俺は瓦礫の下敷きになっていた。そのせいで身動きが取れない。


「い、痛い!」


 ダメージも大きく、俺は痛みに苦しんだ。


「あっ……ぁぁ……」


 一方、ヴィズゥネスの方は建物の破片と共に十数メートルも吹き飛ばされていた。

 こちらも相当なダメージのようだ。


「!」


 しかし、ヴィズゥネスは直ぐに立ち上がった。


「離岸さん、今行きますよ!」


 そして全力で俺に近寄ってくる。


「離岸さん、直ぐに助けます!」


 そう言うとヴィズゥネスは、俺に積み重なった瓦礫を力任せに退かし始める。


「ヴィズゥネス!?」


 その姿は、いつものインテリジェンスなヴィズゥネスからは想像もできない程力強かった。


(火事場の馬鹿力か!?)


「大丈夫ですか、離岸さん!」


 ヴィズゥネスは僅か数十秒で瓦礫を駆除して、俺に手を差し伸べる。


「すまない、ヴィズゥネス」


 俺はヴィズゥネスに手を引かれ、立ち上がろうとしたが……。


「ウッ!?」


 突如、右足に激痛が走る。

 どうやら骨折したらしい。


「ガッッッ!!」


 痛みに耐えられず、俺はその場に崩れ落ちた。


「離岸さん!?」


(このままでは、離岸さんが魔獣にやられてしまう!)


 冷静沈着なヴィズゥネスが焦っていた。

 だが、魔獣は俺達に襲いかかってくる訳でもなく。その場で悠々と浮かんでいるだけだった。


「離岸さん、ちょっとじっとしていてください」


「なんだよ、いったい? ……わ、わぁ!?」


 ヴィズゥネスは俺を抱き抱えて、お姫様だっこした。


「すいませんが離岸さん。ここは一旦退いて、態勢を立て直します!」


 そのまま逃げようとした、そのとき。


「そうはさせんぞ」


「団三郎!?」


 突如、団三郎が現れて大きくジャンプ。

 魔獣の真ん中の頭に乗っかる。


「オマエ達のような危険分子は速いうちに排除することにした」


 団三郎は鋭い眼差しで俺達をじっと睨みつける。


「やれ、大妖怪!」


 団三郎が命令すると、魔獣は左右の口から火球を放つ。


「なんの!」


 だが、ヴィズゥネスは素早い動きでそれをかわす。


 ヴィズゥネスが素早いというのもあるが。あの攻撃、威力は凄いがスピードはイマイチのようだ。


(これなら逃げられるかも)


 そう思ったが……。


「大妖怪! 連続火炎弾だ!」


 魔獣は3つの口から小さな火炎弾を連発する。


「クッ!」


 この攻撃には流石のヴィズゥネスも完璧に避けきることができない。


「グァァァァァァ!!」


 火炎弾の1つをかわしきれず喰らってしまった。


「ヴィズゥネス!!」


 そのときも、俺を庇って背中に攻撃をうける。


「ググッ!!」


 攻撃の衝撃で吹き飛ばされたヴィズゥネスは勢いよく舞い上がる。


「!?」


 そして、そのまま地面に激突。

 その際も俺を庇って、しっかり抱き締めてくれる。

 だが、その為にヴィズゥネスはさらにダメージを負ってしまう。


「クゥゥゥ!」


 しかし、それ程のダメージを負ってもヴィズゥネスは、まだ立ち上がることができた。


 なんてタフネスだ。

 彼自身が強いのか? それとも、魔人族が優れた戦闘力を持つ種族なのだろうか?

 いずれにせよ、ヴィズゥネスが強者であることに変わりはない。


「せめて、最後のご奉子を!」


 普段なら、こんなネタ台詞 「ブ〇ー魔人衆か!」 と、ツッコミを入れていたところだが。

 今日は漫才みたいなノリではない。


「!」


 んなことを俺が思っていると。ヴィズゥネスは助走をつけて、魔獣に向かって大ジャンプ。


「ヴィズゥネス、なにする気だ!?」


「すいません、離岸さん。ちょっと無茶に付き合ってもらいますよ」


「えぇーーーーっ!」


 そんな会話しながらヴィズゥネスは、ジャンプ中に右手で俺をお姫様だっこした状態のまま、左手で腰に差した刀を抜く。


「ウォーーーーッ!!」


 そして、刀を魔獣の胴体に目掛けて斬り付ける。


 刀は魔獣の皮膚をズバッと切り裂くが。大きさが二百メートル以上もある魔獣には大した傷を負わせることはできない。

 人間で例えるなら、軽い切り傷程度だろう。


「……やはりムリでしたか」


「ヴィズゥネス、まさか!」


 そう、そのまさかだ。

 ヴィズゥネスの無謀な行動は鼬の最後っ屁だったのだ。

 自分の一撃が蹉跌さてつに終わったヴィズゥネスは立ち尽くした状態で、魔獣を見上げていた。

 その目は無念そうな眼差しだった。


「離岸さん、逃げましょう!」


「あ、あぁ!」


 今更ながら、ヴィズゥネスは逃げることを決する。


「逃がすな! 大妖怪!」


 だが、団三郎が 「はいそうですか」 と逃がしてくれる筈もなく。魔獣に追撃の命令を出す。


 ドカンドカン、と小さな火炎弾が俺達目掛けて鼻垂れる。


「!」


 これを避けることは困難を極める。


(もうダメだ!)


 そう思った。だが、そんな攻撃をヴィズゥネスはギリギリで回避していた。

 一歩間違えば直撃していたに違いない。

 このような超絶起動は、優れた反射神経と瞬間的な判断力が必要になる。

 つまり、普通のヤツには回避不可能。

 

 しかも、ヴィズゥネスは傷だらけな状態で、俺をお姫様だっこしている状態でそれをやってのけるのだから大したものだ。

 彼は超一流の存在と言っていいだろう。


「今です!」


 ヴィズゥネスは攻撃を回避しつつ、懐から何か取り出す。


「えい!」


 そして、それを魔獣に乗っかっている団三郎に力一杯投げ付ける。

 投げたものはプロ野球選手顔負けのスピードで団三郎に向かって飛んでいく。


「ばっ!?」


 それのスピードに、団三郎は対処できない。


 投げたものは団三郎に被弾。爆発して凄い煙が立ち上る。


「やったぞヴィズゥネス。団三郎を倒したぞ!!」


 これに俺は大喜び。

 ところがヴィズゥネスはまるで喜んでいない。

 それどころか浮かばない表情だ。


「すいません、離岸さん。あれは煙幕なんですよ」


「ってことは」


「時間稼ぎなんですよ」


 そう、ヴィズゥネスは逃げる為に団三郎の動きを一時的に封じたに過ぎない。


「この隙に逃げます!」


 そう言ってヴィズゥネスは全力疾走。

 車を駐車してある場所に向かう。


 その途中でドラ助六も回収して運ぶ。


「ヨイショ!」


 そのとき、右腕で俺をお姫様だっこして、左腕デドラ助六をお姫様だっこして運んだ。


(なんちゅう馬鹿力なんだ!?)


 その後、ヴィズゥネスは俺とドラ助六を車のシートに優しく投げ入れて、車を発進。

 山に逃げ帰る。


 この瞬間、俺達は団三郎に負けを認めたのだった……。






















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