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命の大きさ  作者: 黄金の右脚
4/9

魔獣創造

 さて、明くる日。

 学校が終わると、俺は荷物を纏めて直ぐに山に向かった。


「ありゃ?」


 すると、宇宙船が不時着した地点から煙がモクモクと上がっている。


「山火事か!?」


 俺は慌てて宇宙船まで走るが……。


「やあ、離岸さん」


「今日は遅かったね」


 なんと、ヴィズゥネスとドラ助六は焚き火をしていた。

 山火事だと思い、慌てて来たのに。煙の正体が焚き火だったとは……。


「ズコッ!」


 俺は呆れてずっこけてしまった。


「なんで焚き火なんてやってるんだよ!」


心配して損したので。俺は2人に八つ当たりしてしまう。


「コレは魔獣を作るためにやってることなんですよ」


 しかし、ヴィズゥネスは怒ることなく、冷静に説明する。


「?」


 ヴィズゥネスは魔獣作りのためというが。それと焚き火の因果関係が俺には理解できなく、首を傾げた。


「説明しますと。魔獣は汚染された星を好みます。だから、こうやって古タイヤやプラスチックを燃やして、地球を汚してる訳です」


「なにっ!!」


 この理由に、俺は心臓が飛び出るくらい驚いた。

 地球を守るためとはいえ。大気汚染をするなんて、間違ってる気がした。


「心配になくても、魔獣が生まれたら、自然環境は改善されるよ」


 ドラ助六が話しに割り込んできて、安全性を述べて、問題がないと言う。


「本当かよ」


 目の前の酷い煙から、ドラ助六の言葉に半信半疑な俺。

 さり気なくヴィズゥネスに視線を送る。


「はい、本当です。魔獣は成長時に星の汚れを吸収しますからね」


「なんと!」


 少々驚いたが、知的なヴィズゥネスの説明で安心した。


 しかし、やっていることは小の虫を殺して大の虫を助けているようなものだ。


「にしても、酷い煙だな!」


 燃やしてる物が燃やしてる物のため、有毒な煙がモクモク上がっている。


「うーん……」


 煙のせいで意識が朦朧もうろうとしてくる。


「離岸さん、ガスマスク使いますか?」


「そんないい物があるなら、もっと早く出してくれ!」


「すいません。魔人にとって、この程度の煙はへっちゃらなもんで」


 ヴィズゥネスは頭を下げる。


「……」


 これも宇宙人と地球人の差なのか気づくのが遅れたようだ。

 これは、種族の考え方の違いなのか?


 ……まあ、それはともかく。

 俺はガスマスクを装着する。


 ガスマスクは魔人用なせいか、着け心地はイマイチだったが、煙を完全にシャットアウトしてくれた。

 お陰で、煙の中も快適に過ごすことができた。


「「あむあむあむ!」」


 焚き火をしているあいだ暇なのか。2人は間食を始めた。

 なお、食べていたのは生のさつまいもだった。


「地球の食い物は美味いな♪」


「そうですね♪」


 どこで調達したかは知らんが。よくこんな状況で食事ができるものだ。


「ハァ~~~」


 俺は呆れて溜め息をつく。


「しかしオマエら、よく生芋なんて食えるな」


「えっ!?」


「こうやって食べる物ではないのか!?」


 俺の言ったことに2人は敏感に反応した。

 そんなに驚くことか?


「はっきり言って芋なら、焼くなり蒸すなりした方が美味いぞ」


「それ本当か!」


 ドラ助六は俺に顔を近づけて質問してくる。

 なお、数センチ前に出たらキスできてしまう距離だ。


「こんなことで嘘ついてどうする。てか、顔近い!」


「そうだったか……。ヴィズゥネス、早速焼こう!」


「はい!」


 2人は食べかけの芋を焚き火の中にぶち込んで焼き始めた。


 不法投棄されたゴミと一緒に芋を焼くなんて、地球人の俺には信じ難いことだ。


(ヴィズゥネスやドラ助六にとって普通のことなんだろう)


 そう自分に言い聞かせた。


「焼けました」


 数分後、焼き芋が出来上がる。


「さっそく食べよう♪」


 焼きあがった芋に目を輝かせる。

 まるで、興味津々の子供みたいだな。


「慌てて食べると口を火傷するから気をつけろよ」


 一応、注意しといておく。


「ご丁寧にどうも」


「分かった、気をつけるよ」


 んで、2人は芋を冷ますが……。


「「ふーー! ふーーっ!」」


 あろうことか2人は、芋を冷ますために息を吹き始めた。

 かなりの科学力がある種族にもかかわらず、なんと原始的な方法だ。


(こういう姿を見ると、コイツらが頭良いのか悪いのか分からなくなってくるな)


 そんなこと考えながら、俺は頭をポリポリとかいた。


「「パク」」


 そんな俺の気持ちなど露知らず。2人は程よく冷ました焼き芋をパクリとかぶりつく。


「うんめぇ!! これ、すっげうめ!」


 芋を口に入れると、ドラ助六はのけぞりながらオーバーリアクション気味に大声を上げる。


「ただ焼くだけで、こんなに美味しさが増すなんて!?」


 一方でヴィズゥネスは、焼き芋の美味さに目をパチクリさせていた。


 その後、2人は1分程焼き芋の美味さの余韻を味わう。


「「!」」


 しかし、1分が経過すると2人は焼き芋をギロリと睨みつけた。


「「バクッ! バクバクバクッ!!」」


 そして物凄い勢いで芋にがっつく。


 なんと下品な食べ方だ。

 これじゃあ、まるでダボハゼのようなものだ。

 俺は呆れてつつも、2人が食べ終わるのを待つだけであった……。


「食った食った。腹がいっぱいだ♪」


 食べ終わると、超満足そうにドラ助六はその場に寝転がる。

 その顔は満面の笑みで満たされていた。


 その顔を真剣に眺めていると。なんだか、見ているコッチまで幸せな気持ちになってくる(笑)


「いやはや、お芋を焼くだけでこんなにも美味しさが増すなんて知りませんでしたよ」


 うっとりしながらヴィズゥネスは焚き火の後始末をする。


 焚き火が消えたので、俺はガスマスクを外した。

 着け心地が悪いモノをいつまでも使っていたくないからね。


 それにしても、ヴィズゥネスとドラ助六は満足そうにしていたが。

 2人の満足は異なるようだ。


 その違いを簡単に説明するならば。

 ドラ助六は味覚的満足。

 ヴィズゥネスは知識的満足。

 と言ったところか。


「いやぁ、離岸さん。こんな美味しい調理方法を教えてくださって、ありがとうございます♪」


 よほど嬉しかったのか。ヴィズゥネスは俺にお礼を言いながらペコペコと何度も頭を下げた。


「いや、そんなたいしたことじゃ……」


 それ程凄いことを教えた訳でもないのに。こんなにペコペコと頭を下げられると謙遜してしまう。

 

「「!?」」


 どうすればいいか困っていると ブーっとでかい音が鳴り響く。


 俺とヴィズゥネスは驚きつつも、音のする方を振り返ると……。


 ドス助六がいた。


 どういうこと分からなくて、首を稼げてると。


「うっ!?」


 異臭がが鼻をつき。思わず眉をしかめた。


「ごめんなさい。僕です」


 臭いの犯人はドラ助六だった。


「臭うなぁ」


 臭いに耐えられず、俺は鼻をつまんだ。


「ドラ助六、キミねぇ……」


 と、言おうとしたその時。


「あっ!」


 ドラ助六は、またオナラをした。


「オナラばっかりするんじゃない!! 女の子が!」


 俺は親が子供を注意するかのごとく、ドラ助六を叱った。


「ごめん、離岸」


 するとドラ助六は、潔く自らの非を認め素直に謝る。

 

「でも、離岸」


 しかし、ドラ助六は疑問の眼で俺を見つめてくる。


「なんだ、ドラ助六?」


「その 『女の子』 ってなに?」


「はいぃ!? そんなことも知らんのか?」


 驚きのあまり、声が裏返ってしまった(笑)


「うん」


 ドラ助六はコクリと頷く。


「信じられない……」


(こんな常識を知らないなんて。ドラ助六はどんな教育を学んだんだ?)


 内心、ちょっと呆れたが。知的レベルや技術水準が地球と違うのだから 『仕方ないことだ』 という結論に至った。


「離岸、女の子ってなにカ教えて」


 物欲しそうなちびっ子のごとく、ドラ助六は俺の服の裾を引っ張しながら知識を欲する。


「わあった、わあった。教えるから、服を引っ張るな」


 んで、やむなく教える羽目に。


「え~~~、簡単に説明すると。女の子って言うのは、性別の一種だ。性別は分かるか?」


「分かるよ」


「ほっ」


 よかった。

 性別も知らないと言われたら、説明する方法が八方塞がりになるところだった。


「そっか。女の子って、オスのことだったのか」


「おい!」


 勝手に間違った解釈をするドラ助六に、俺はツッコミをいれた。


「ドラ助六、オマエはメスではないか!」


「バカ言うな! 僕はオスだよ」


「まさか!」


 そのまさかだった。

 ドラ助六の元々の性別はオスだったのだ。


 では、なぜにこうなった?


 それはドラ助六の新しい体を作るために使った地球人が女性だったからだ。

 そのため、ドラ助六が地球人と合体したときに、そちらの性別が優先された訳である。


「そっか、僕はメスになってたのか」


 小難しい顔でドラ助六がまったりとボヤく。


「地球人と合体してから体が変な感じだと思ったのは、コレだったか」


 ボヤいたかと思ったら、勝手に納得した。

 忙しいヤツだ。


 しかし、いやがっている訳ではなさそうだ(そうかといって、喜んでいる訳でもないが……)


「ドラ助六がオスだったなんて……」


 予想外の驚きに、俺は口あんぐり。


 しかし、俺はなぜ気づかなかったのか。

 思い返してみたら、声質や着替えの豪快さなど、不自然なところだらけだったのに……。


「……あのぉ、離岸さん」


 軽い放心状態の俺に、ヴィズゥネスが申し訳なさそうに話し掛ける。


「はっ!」


 ヴィズゥネスのお陰で俺は意識を取り戻す。


「なんだい、ヴィズゥネス?」


「離岸さん、例の物持ってこれましたか?」


「ああ、ちゃんと持ってきたぜ」


 なに?


 勝手に2人だけで話しを進めないで、ちゃんと説明しろ?


 では、読者の皆さんにも説明しますね。


 実は昨日の作戦会議で魔獣を生み出す際に、成長を円滑にしつつ、コントロールしやすくするために地球の生物と融合させ、まったく新しい魔獣を完成させる……という作戦を考えたのだ。


『普通に魔獣を作るのじゃダメなのか?』 なんて言われるかもしれないが。それではダメだ。


 2つの理由から、確信を持って言うことができます。


 まず1つは、普通に作った場合、魔獣の成長に数百年もの時間がかかってしまう。

 こんなんじゃ、団三郎が地球に到着するまでに間に合わない。

 

 これでは出遅れもいいところ。

 そこで、地球の生物の遺伝子を魔獣に取り込ませることで、成長を早めるのだ。


 さらに、急成長エキスを使うことで、魔獣は僅か数日で成長が完了する(通常の育成方法で急成長エキスを使用した場合は数十年で完成する) 


 そして、もう1つの理由は。魔獣をコントロールしやすくするためだ。

 普通の育成方法で魔獣を作った場合、星を滅ぼす本能まで色濃く受け継がれてしまう。

 そうすると、敵も味方も無しに本能のまま暴れ回ってしまう。


 これじゃあ、本末転倒もいいところだ。


 そこで、気性の荒さを緩和し、扱いやすくするために地球の生物の遺伝子を加える(地球の生物は魔獣と比べると、どれもおとなしくて扱いやすいため)

 そして、コントロールを円滑にするのが目的。


 これが目的のすべてだ。

 説明終わり。


「これなんだけど、使えるかな?」


 俺は風呂敷の中から化石を取り出して、ヴィズゥネスに見せた。


「どれどれ」


 ヴィズゥネスは注意深く、化石を真剣な眼差しで見る。


「……うん。大丈夫そうです」


「よかった」


 使えないなんて言われたらどうしようかと思ったが。

『大丈夫』 の一言に、俺はホッと胸を撫で下ろす。


 では、さっそく化石からDNAを取り出す作業を開始いたします」


 ヴィズゥネスは作業台の上に化石と道具一式を並べる。

 そして、俺から受け取った化石をやすりでガリガリと削り始める。


「あんまり削らないでくれよ」



「心配しないでください。少し削るだけですよ」


 そう言ってヴィズゥネスは化石を削り進めるが。はっきり言って不安だ。


(……父ちゃん、ごめんなさい)


 実はこの化石。父ちゃんのコレクションの1つを無断で借りてきた物なのだ。

 どうしてこうなったのかと言いますと。


 話しは昨日に遡る。



「この生物なんてどうだ?」


「こっちのが良いんじゃないでしょうか?」


 図書館で借りてきた大量の図鑑を広げて、魔獣と組み合わせる生物を3人で吟味していた。


「なぁ、このインドガビアルって、超イケメンじゃね♪」


 ドラ助六が図鑑に載っているインドガビアルのページを指差しながら、俺の頬っぺたに押し付けてくる。


「ドラ助六、今はそんなこと言ってる場合じゃないだろ。そもそも、インドガビアルがイケメンって、どういうこと!?」


「インドガビアルは、イケメンもイケメンな超イケメンだ。こんなイケメンなドラゴン族はそうそういないぞ」


 鼻息荒く、自慢げに胸張りながらドラ助六は豪語してしてきた。


「ドラ助六、喜んでるところ悪いが。インドガビアルはドラゴン族じゃなくてワニ類だから、ドラゴンではないぞ」


「マジで!?」


 俺が呆レ気味に説明すると、ドラ助六はとても驚いた。


「離岸、それマジなのか!」


 ドラ助六は俺の肩をガシッと掴み、真顔で問い詰めてくる。


「本当さ。そもそも、こんなことで嘘言ってなんになる!」


「それもそっか」


 きょとんとした顔で、ドラ助六は納得してくれた。


「しかし、こんなにかっこいいのにドラゴンじゃないなんて、もったいない! インドガビアルを惑星ドラゴンに連れて行ったらモテモテになれるのに」


 ドラ助六は、個人的な考えをデカイ独り言でベラベラと口に出す。


「……」


 少々呆れたが。ドラゴン族にとって、インドガビアルはカッコイイ部類に入るらしい。


(ドラゴン族の美的感覚はどうなっているんだ?)

 

 正直、地球人の俺には理解できない感性だ。


「離岸さん、コレなんてどうでしょうか?」


 小難しい表情でむっすりしていた俺をポンポンと叩き、ヴィズゥネスが話し掛けてきた。


「どれどれ……お! ティラノサウルスじゃないか」


 ヴィズゥネスが候補に選んだのは 『その昔の陸の王者・ティラノサウルス』 だった。

 数ある図鑑の中からティラノサウルスを見つけるなんて。ヴィズゥネスは中々のセンスだな。


「どうでしょうか?」


「うん、いいと思うよ」


(正直、魔獣とティラノサウルスを合体させたら、どんなカッコイイのが生まれるだろう♪)


 完成した魔獣の姿を思い浮かべると、期待に胸が膨らむ。

 俺はこの案に乗り気だったのだが……。


「えーーーーっ! こんなのヤダよ!」


 ドラ助六が待ったをかけたのです。

 オマケにその理由がとんでもないものだった。


 その理由は……。


「こんなブサイクなの作りたくない!」


 という、外見の問題だった。


「あのなぁ、ドラ助六。戦いに恰好のことなんて気にしても、しょうがないだろ」


 ドラ助六の言い分にどうかと思った俺は、言い返してみたが……。


「僕はこんなブサイクなのと一緒に戦いたくない!」


 の一点張り。

 自分の意志を押し通す。


 正直、俺はインドガビアルよりもティラノサウルスの方がカッコイイと思うが。

 なお、後にヴィズゥネスから聞いたが。ドラゴン族は 『左右の幅が狭い顔』 や 『細長い口吻』 が良いとされ。

 逆に 『骨太でガッシリした顔』 や 『左右の幅が広い顔』 はブサイクとされている。

 住む星が違えば、美醜の概念は変わるものだが。

 つくづく、ドラゴン族の美的センスは、地球人には理解不能な難解なものだと思った。

 

 その後、しばらく口論になったが。結局、俺の方が折れて、候補の動物選びは振り出しに戻ってしまうのであった。


「「「……………………」」」


 そして、また黙々と図鑑を読み漁る。


「やっぱりデカイ方が強いんじゃないか?」


 しばしの沈黙の後、ドラ助六が竜脚類のページを開いて指差す。


「竜脚類か……」


 竜脚類は地球史上最大の陸上生物だが。

 はっきり言って、デカイだけで、サイズを縮小したら、大して強くないと思う。

 なので、俺は難色を示す。


「……まあ、いいんじゃないかな」


 しかし、長時間本を読み漁っていたため、疲れてた。

 だから俺は 『もうコレでいいや』 と、投げ遣り気味に返事した。


『大事なことなのに、そんないい加減な決め方していいの?』 なんて言われると思うが。

 疲れてくると考え方なんて、いい加減になってくるものだ。

 現に、今の俺がそれである。


 そのため 『俺はコレでいいや』 ってな感じで返事した。


「では、コレでいいのですね」


「あぁ」


 その後もヴィズゥネスに適当に返事する。


「では、離岸さん。竜脚類の体の一部を持ってきてくれませんか」


「化石でも大丈夫か?」


「よほど粗悪な物でなければ大丈夫ですよ」


「分かった。明日にでも持ってくる」


 ……ってな経緯で決まったのでした。

 ご説明、終わり。


 ◇


 「ガリガリ、ガリガリ……」


 作業台でヴィズゥネスはやすりを使い、ガリガリと化石を軽く削る。

 

 ちなみにこの化石。

 俺の父ちゃんのコレクションの1つで。それを無断で借りてきた。

 そんなんだから父ちゃんは知らない。


 てか、父ちゃんが大切な化石を削られたこと知ったら、泣いちゃうだろう。

 父ちゃんは泣き虫だからな。

 本当、母ちゃんはこんな父ちゃんのどこを好きになったんだ?


「これでよし」


 などと考えてる間に、化石を削る作業が終わる。


「じーーーっ……」


 どれだけ削られたかそっと覗き込む。


「良かった。少し削られただけだ」


 これなら、ちょっと見では気づかれないだろう。

 不安はなくなった。


「では、DNAブロックを作りますか」


 削られた化石を注意深く機械の中に入れる。


「ドラ助六、DNAジェネレーターを起動させるので、手伝ってください」


「おう! 分かったぜ♪」


『フンッ!』 と鼻を鳴らすと、ドラ助六は袖まくりしながらヴィズゥネスに近寄る。


 ちなみに、彼らの言う 『DNAジェネレーター』 とは、ドラ助六を地球人と融合させた、あの機械だ。


「スイッチオン」


 スイッチを入れると、直ぐに箱型の機械からブロック状の物体が1つ、ギュッと出てくる。


「……」


 前に機械を使用した時は、状況が状況だったので。あまり機会が動いてるのを見れなかったが。

 じっくり見てみると不思議な光景だ。


 例えるなら、ファンタジーアニメの魔法使いの実験シーンに近い。

 少なくとも、俺の知っている製造機械で、こんな摩訶不思議な動きで物を製造する機械は見たことがなかった。

 そんなせいか、俺はどんぐり眼で真剣に機械を眺めていた。


「では、DNAブロックと魔獣の破片を機械にセットしてください」


「ラジャー」


 ピッと敬礼すると、ドラ助六は例のピラミッド型の機械に化石から採取したDNAブロックをカチカチとセットする。


 これも以前の使用時には気づかなかったことだが。

 ピラミッド型の機械には、ブロックを入れる窪みが4ヶ所開いており。DNAブロックを4つまで同時に使用できるようだ。


「……4体合体」


 機械を見詰めていると。つい、このようなくだらない事を考えてしまう。

 でも許してください。だって、合体は男の子のロマンなんだ。

 そして、俺は男の子なんだもん(笑)


 ……っと、個人的妄想に浸っていたが。

 素朴な疑問が頭に浮かぶ。


 それは 『DNAブロックをそのまま使った場合はどうなるのか?』 という疑問だ。


「なぁ、ヴィズゥネス」


 考えると無性に気になるもの。

 俺は作業中のヴィズゥネスに質問するため、彼の肩をポンポンと叩いた。


「なんですか、離岸さん?」


 肩を叩かれるとヴィズゥネスは、体をくるっと回転させて、俺と向い合せになる。


「DNAブロックをそのまま使ったらどうなるのんだ?」


「その場合はDNAブロックに使用した生物が出来上がります」


「なんと! 本当に!?」


 若干の期待はしていたが。これは期待通りの答えだ。


「じゃあ、このDNAブロックを使えば、恐竜が再生できるってことか?」


「そうなりますね」


 ヴィズゥネスはコクリと頷いた。


「すげぇ……」


 俺は軽く興奮した。

 なぜなら、絶滅動物のクローニングを目指す研究は世界中で行われている。

 その中でも恐竜再生は大人や子供を問わず、人々の興味を引いてやまない。


 実際に多くの研究者が躍起になって実験を繰り返している。

 だが上手くいかない。


 理由は単純。

 恐竜の化石からDNAを取り出すことは極めて難しいのだ。

 また、仮にDNAを化石から取り出すことができたとしても。そのDNA情報は使い物にならないと思われる。

 実は、生物遺体のDNA情報は521年に半分の割合で失われてしまうのだ。

 

 これに基づけば、数千万年前の恐竜時代のDNA情報はほぼ0になる。

 したがって、恐竜再生は現代の技術ではとうてい再現できない。

 そのため、絶滅動物のクローニングを目指す研究は、比較的時代の新しい生物 (マンモスなど) が対象として上げられる。

 そのぐらい恐竜再生は絶望的なのだ。


 しかし、それをいとも簡単にできてしまうのだから、魔人族の技術水準の高さが窺える。


 見た目が胡散臭かったので、ヴィズゥネスのことを軽く見ていたが。

 今回の事で彼を見る目が変わった。

 今ではヴィズゥネスを見る目は尊敬の目だ(笑)


「?」


 まあ、ヴィズゥネスはそのことをよく分かっておらず。頭の上にクエッションマークが浮かんどったが……。


「これをこうして。こっちをこうして……」


 なんやかんやで、作業は順調に進む。

 それは俺と会話してるあいだもヴィズゥネスは黙々と作業を進めていたから見事なものだ。

 彼は仕事のできるタイプだな。ますます尊敬しちゃう。


「よし! ドラ助六、起動スイッチを入れてください」


「おうよ!」


 魔獣作りの準備が終わり。後はスイッチを入れるだけとなった。


「これでバロサウルスが生成できるぞ♪」


「そうそう、バロサウルスが…………あれ?」


 ドラ助六の言ったことに釣られて、頷いてしまったけど。目的って、バロサウルスつくることだったけ?


「ドラ助六、作るのは魔獣ですよ」


 ヴィズゥネスがドラ助六に本来の目的を思い出される。


「そうだったけ?」


「そうですよ」


 そうだった。今作っているのは、魔獣だったのだ。

 ドラ助六があまりに違和感なく間違えたので気づかなかった。


「本来の目的を忘れないでください」


 お惚け気味なドラ助六に、ヴィズゥネスは割とシリアスムード。

 真剣な一面を見せていた。


「めんちゃい」


 ヴィズゥネスが注意すると、ドラ助六はぶりっ子ぶってあやまった。

 かわいい仕草だが、なんかムカつくな。


「では、気を取り直して。スイッチオン!」


 バロサウルスのDNAブロックと魔獣の破片を、例のピラミッド型の機械にセット。

 そして、ドラ助六がスイッチを入れる。

 そうするとピラミッド型の機械はグルングルンと勢いよく回転。

 ガンガンガラガンと激しい作業音を鳴らしながらピラミッド型の機械に金属パイプがつながった。

 

 「うっ! 眩しい」


 パイプが繋がると、研究室は眩しい閃光に包まれる。

 2秒後、ギューンという奇妙な爆発音が鳴ると、溶鉱炉風の培養液プールの中で何かが動いていた。


「「「……」」」


 俺達は恐る恐るプールの中を覗き込む。


「「「!」」」


 すると、液体の中で見たことのない緑色の鱗で覆われた生物が動いてた。


「やりました! 生成成功です!」


 ヴィズゥネスは喜びの声を上げて、大きくバンザイ。

 成功を喜んだ。


「これが魔獣……」


 ヴィズゥネスは成功したとはしゃいでいるが。

 俺は目の前の光景がイマイチ信じられず。目をゴシゴシ擦っていた。


「これが魔獣なのか?」


 にわかに信じられない俺は、ドラ助六に質問した。


「おうよ! 確かに魔獣よ!」


 と、胸を張って得意げな態度で答える。


「それも、地球で生まれた地球魔獣だ!」


 さらに、聞いてもいないことまでベラベラと知らせる。

 オマケに芝居がかった、どっかで聞いたことのあるセリフで。


(ダ〇グスの真似か?)


「よいしょっと!」


 説明を終えるとドラ助六は、プールの中に入り。魔獣の赤ちゃんを抱きかかえる。


「見てみろよ! まだ生まれたばかりで小せぇが。成長したらスゲェ魔獣になるんだぜ♪」


 自慢げな顔でドラ助六は豪語した。


「うーーーむ……」


 しかし、俺はそんなドラ助六の顔や魔獣の赤ちゃんのことなど気にならなかった。

 その理由は、ドラ助六の服が濡れていたからだ。

 お陰で下着が透けて見える(ちょっと色っぽい)


「……」


 そのせいで俺は顔真っ赤。目のやり場に困った。


(どうしたものか……)


 なんて、口元をムムッとさせながら考えていると……。


「はい、地球魔獣ちゃんよしよし♪」


 ドラ助六が赤ちゃんのご機嫌をとるかのごとく。魔獣をあやす。

 その姿は、なんだかヤンママみたいだ。

 しかし、魔獣は 「おぎゃあ」 と鳴くことがないばかりか、ピクリとも動かない。


(もしかして、死んでない?)


 なんだか心配な気持ちになってくる。


「……地球魔獣が元気なさすぎる」


 そのことにドラ助六も気づいたようで。不安そうな顔になっていく。


「地球魔獣しっかりしろ! 死ぬな!!」


 んで、必死に揺さぶり始める。

 人間の赤ちゃんの場合。こんな風にあやされたら、逆に大泣きしそうだが。魔獣はうんともすんともいわない。


「おー! よしよし!!」


 魔獣をあやすドラ助六は、いつもの吞気なドラ助六からは想像できないほど必死だ。

 それだけ魔獣に心血を注いでいるのだろう。

 このままだと、授乳でもしそうな勢いだ(笑)


「……なあ、ヴィズゥネス。魔獣は大丈夫なのか?」


 ドラ助六が不憫に思えてきたので。ヴィズゥネスに調べてもらうことに。

 なにせ、彼は俺達3人の中で1番頭が良い。はっきり言って 『同盟軍1の知恵袋』 と断言してもいいだろう。

 そのぐらい彼の知性は優れているのだ。

 はたして、ヴィズゥネスの見解は?


「大丈夫ですよ。誕生したばかりですので、まだ満足に動けないんですよ」


「そういうものなのか?」


 俺はイマイチ理解出来ず。また疑問を投げかけてみる。


「簡単に例えるなら、赤ん坊が自分の身の回りのことを何もできないようなものです」


「あ! なるほど」


 この説明ならよく分かった。実に的を射た、明確な説明だ。

 そうと分かれば、ドラ助六に教えてあげなくては。


「おーーーい、ドラ助六! 魔獣は大丈夫なんだってさ」


「チュペティチュペティ! ……本当か!?」


 訳の分からん方法で魔獣をあやしてたドラ助六は、鋭い眼差しで俺の顔を見る。


「ああ、本当だ。な、ヴィズゥネス」


「はい」


 俺が降ると、ヴィズゥネスはコクリと頷いた。


「よかったぁ」


 安心したのか、ドラ助六の強張っていた顔が緩む。


「では、そろそろ魔獣を成長させる第1段階に入りたいので。魔獣を渡してください」


「はいよ」


 あろうことかドラ助六は、魔獣をポイッと投げ渡した。


「ちょっ!? ドラ助六!」


 さっきまで大事そうに扱っていた魔獣を投げ渡すなんて。なんと乱暴な。


「これが人間の赤ちゃんだったら、大変なことになってたぞ!!」


 俺は真剣に叱った。


「離岸さん、心配しなくても魔獣は大丈夫ですよ」


 頭に血が上った俺をなだめるつつ、ヴィズゥネスはドラ助六を弁護。


「そうなのか?」


「はい」


「そうなんだぞ!」


 ドラ助六がドヤ顔でヴィズゥネスに相槌する。

 完全に調子に乗っている状態だ。


「オマエが言うな!」


 なので、流石にこれは怒った。


「ひゃあ!? ごめんなさい!」


 俺の迫力に負けたのか。ドラ助六は直ぐに謝った。

 素直で宜しい!



 さて。

 その後、俺達は宇宙船の外に出て、予め掘ってあった穴に魔獣を入れる。


「しっかり成長してくれよ~~~」


 そして、穴を埋めながら魔獣に檄を入れる。

 かくして魔獣育成作戦は、ついに始まるのだった!




















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