三話:そして彼は彼女と出会う。
どこまで歩いても出口と思えるものは全く出てこない。本当にここは何処なのだろう。思えば、放課後も似たような事があったな。さっぱりわからない。でも今は、歩くしかない。それしかできないのだから。
しばらく適当に歩いていたら、見知った風景が目の前に見えてきた。
「ここは……」
俺の住む町が、そこにはあった。
自分の住んでいる町。しかし、どこか違和感がある町。俺はこの違和感ぷんぷんのこの町を探索することにした。
歩く度に、足元からブゥンという謎の機械音が聞こえたりする。
しばらくして、俺は有り得ない光景を目の当たりにした。
「家が…喰われてる…。」
どちらかというと、侵食、なのだろうか。とにかく、今も家は喰われ続けている。バクという哺乳類に似た虫のような生き物。それが四匹ほどで家を喰っているのだ。
驚きを隠せない俺は足がすくんでこの場を動けなくなってしまっている。
そんな時、
「……………」
今まで家を喰らっていた謎の生物は家を喰い終わった?らしく俺の方を見た。
気づかれた。
謎の生物たちは一斉に俺の方へと体を向けた。
こっちに向かってきた!やばい、逃げないと!
…逃げる?そんなの無理だ。逃げきれるはずがない。もう謎の生物たちは俺のすぐ目の前まで来ている。
もうだめだ。
すべてを諦めかけたその時。
目の前に一閃の光が走った。
それと共に、一匹の謎の生物がたちまち真っ二つに裂けた。
さらに一閃。
今度は一度に三匹の謎の生物を薙はらった。
あまりにも信じられない光景に俺は目を丸くする。
女の子がいた。
彼女の銀髪がネオンの光に反射して煌めく。
彼女の持つ切っ先鋭い大剣は、彼女の強さを象徴するようにデカい。
そんな彼女は俺に向かって、
「助けてやったんだ。有り金全部だせ。」
大人びた口調でカツアゲをしてきた。
「……へ?」
「だから、金だ。」
「持ってるわけがないじゃないか。」
「は?君もこの世界の住人なのだろう?」
そう言いながら彼女は先ほどぶったぎった謎の生物から出てきた金色のコインを拾い始める。どこのRPGだよ。
「違う。そもそもここは何処なんだ。」
「は?君は何を言っているんだ?『夢喰い』に襲われて頭おかしくなったか?」
「何言ってんだ?」
わけわからん。何なんだコイツ…
「…ガチで言ってる?」
「ガチもガチ。超ガチだぞ?」
「へぇ…。」
物珍しそうな物を見る表情で彼女は俺に近づく。か…顔が近い。
「成る程。君は外界から来た。そういうこと?」
ズイッと彼女の顔がまた近づく。彼女の息が吹きかかる距離だ。
ヤバいって!シチュ的に!ヤバいって!
「た、多分お前の言うとおり…だと思う。」
赤面してます。はい。まぁ彼女は何とも思ってない様子だが。
「じゃあ現実世界から来たんだ?」
「現実世界…?」
「君、目覚めたらここにいたとか、そんな感じでここに来たんじゃない?」
「まぁ、そうだな…。」
「成る程。それはラッキーね。」
「なんで?」
「君が救世主になれる可能性を持っているからよ。」
一旦俺から離れた彼女は俺を指差してそんなわけわからんことを言った。
「とりあえず、私についてきて。話はそれから。」
俺はひとまず彼女についていくことにした。………が、その前に。
「なぁ、君の名前は何て言うんだ?」
「私の名前はヒナよ。」
「そうか。俺は雄介。神柳雄介だ。よろしくな。」
「うん。ひとまずはよろしく。」
―――
「着いたわ。」
「ここって…?」
「まぁ、私の住処ね。」
住処…か。これって女の子が住む部屋なのか?周りを見渡すが、暗い照明、所々引き裂けたソファー、弾痕のあるテーブルもある。殺伐としてるな…。しかし、ベッドは…清潔と見た。
「とりあえず、座って。」
そう言ってヒナは自分の向かい側のソファーへと俺を誘導した。
「話をしましょう。」
「おぉ。」
「あれは今から、3「おいちょっと待て。」…何よ。」
「エル●ャダイネタを使うかよそこで…。」
「ごめんなさい。反省してる。」
「お前、よくそんなんで一人で「大丈夫よ。問題ないわ。」…」
「…反省してないだろ。」
「本当にするとでも思ったの?」
「思ってた…。思っていましたぁ!」「私を甘く見ていたわね。ふふん。」
何得意気になっているんだこいつは。
「冗談はここまでにして、ちゃんと話しましょうか。」
「お、おう。」
「う~ん…まずは何から話せばいいのか…?そうね。まず最初に、ここは夢の世界よ。」
「夢の世界?じゃあ、俺はただ単に普通に寝て普通に夢見てるだけか?」
「ちょっと違うね。確かに普通なら夢は見るものだけど、君は夢の中にいるの。」
「夢の中?」
「そう。この世界に存在してるってわけ。」
「つまり、俺は夢の中に体ごと空間転移してるのか。」
「随分と痛々しい表現だね。」
「うっせ。」
「まぁ、そんな感じよ。でも体ごとここに転移してるのではなく…魂のみがここに転移されてるの。その魂が現実世界にいる君の体とリンクしてるわけ。」
「じゃあ、痛みも感じるのか?」
「えぇ。下手すりゃ死ぬし。」
「マジっすか?」
「マジよ。死にたくなければ喰われないこと。」
「喰われる?」
「『夢喰い』よ。君を襲おうとしたヤツら。あれは人の夢に浸食してその人の存在の力を喰らうもの。私はそれを狩るためにこの世界にいる。いわば、駆除隊ね。」
「なるほどな。あと、俺が救世主になれる可能性って?」
「君が私と共闘すること。」
「へ?戦うの?」
「そう。今私が知っている中でここに来た現実世界の人間は君だけだからね。」「でも、俺だって明日になれば目覚めるぞ?」
「そこは大丈夫よ。」
「なんでだ。」
「君はまたここに来る。これは確定事項だから。」
「何を言ってるんだ?」
「そのうちわかるから…。それより、そろそろ夜が明けるよ。現実世界に戻った方がいいんじゃないの?」
「そうだな。でも、どうやって戻るんだ?」
「寝ればいいんじゃない?ベッドならかすから。」
「マジっすか!おやすみなさい!」
すぐさまベッドに入ったね。俺は。女の子のベッドだぞ?男なら誰でもそうするだろ?
「………下衆い野郎ね。」
ヒナのその言葉を聞いた直後、俺は眠った。




