二話:日常の終わり 新たな始まり
殺気を感じた俺は振り向いた。その瞬間……
サクッ
……ダーツの様に投げられたシャーペンが額に刺さった。
「痛ぁぁぁぁぁ!?」
慌てて俺は額に刺さったシャーペンを抜いた。つか痛てぇ!
「何するんだ!」
「あんたが遅刻するからよ!」
そう口にしたのは、我がクラスの委員長において、我が校最強の存在、中村かなえがそこにはいた。
「だからってシャーペン刺すなよ!」
あまりの痛みについ反発してしまった。
「あぁん?私に…文句ある?」
「…ごめん…なさい…。」
「いいから、席につきなさい。雄介。」
「へいへい。」
この場で逆らったら殺されかねないからな…。大人しく引き下がろう。そのままいつか痛い目あわせてやるとか考えていたら、担任が教室に入ってきた。
―――
昼休みになった。俺はいつも通り錫鳴幸太の元に向かった。
「よぉ、幸太。」
「おぉ、神ぃ。」
「神言うな。神柳雄介だ。」
「堅いこと言うなって。拝ませてくれよ。」
「あのな、俺の話聞いてるか?」
「あ?聞いてねぇよ?」
「神言うなって。」
「やだよ?」
相変わらずこいつは所々ムカつく奴だ…。一発入れてやろう。
「お前は俺を怒らせたぁ!死ねぇ!ナックルバーストォ!」
そう言い放ち、みぞおちに拳を入れ、そのまま入れた拳を押し出して幸太を突き飛ばした。今日も俺の中学二年生っぷりは上々だ。
「がふっ…!?」
吹き飛ばされたまま尻餅をついた幸太はその場でうずくまる。割と痛そうだなぁ…。
「おい、大丈夫か?」
「大丈夫なわけあるかぁ!お前は馬鹿か!?」
「まぁ、いいじゃんか。」
「よかねぇよ!」
「なんでだ?誰だってお前の腹を殴りたくなるだろ?」
「ならねぇよ!」
「むしろ殴られたいだろ?」
「Mか!俺はマゾティストか!」
「まぁ、そう怒るなって。授業もそろそろ始まるぞ?」
「ちっ…。」
俺と幸太は席につき、また午後の授業が始まった。そういえば今日は親戚から口座にお金振り込まれるんだったな。銀行に行かなくちゃだな。
―――
放課後になり、俺は銀行に行き、お金を引き出した。これが今月の生活費だ。生活費も手に入れたんだし、速く買い物を済まして帰ろう。
そう思って歩いていたのだが…さっきから赤信号にあたってばかりだ。困ったもんだ。………遅い!
軽く苛立った俺は、他の道から帰ることにした。
―――
…道に迷った…。
路地裏なんかに入ってしまったせいだろうか。路地裏は真っ直ぐに続く。周りには、誰もいない。
気味悪いな…どこだここは?
とりあえずは真っ直ぐに歩いてみよう。
………。
…………。
………………。
おいおい、いくら何でもおかしいだろ?
三十分は歩いたはずだろ?
何でどこにも出ないんだ?
くそっ、もう少し歩いてみるか。
……………。
………………。
あれ?人がいる。今まで散々歩いた末、やっと人に会えた!
俺はそれを嬉しく思い、早速声をかけようとした…が。
風貌がおかしい。
普通こんな暑い日に真っ黒なパーカーを着てフードを目深に被ってるはずがない。それにどこか凶凶しいのだ。
話しかけてはいけない気がする。そう悟った俺は、その人の前から去ろうとした。
「をい。」
その人が喋った。誰かを呼ぶように。声質からして男だ。そんなことを思いながら歩きだした。
「無視をするな。」
どうやら、声をかけられてしまったらしい。
「な、なんでしょう?」
「どうしてお前はここにいる。」
「道に迷って…。」
「普通ならそう簡単には迷わんだろう。」
確かに、この道は異様だ。
「そうですね。あなたはこの道のぬけ方を知っているのですか?」
「…そうか。知らないのか。」
何なんだ、この人は。
「今のお前では、この空間からは抜け出せないだろう。」
空間…?どういうことだ?新手の痛い人なのだろうか?
「仕方ない。雄介。」
俺の名前を知っている…。本当になんなんだ。
「あんた…「黙っていろ。今からお前を元の世界に送り返す。」」
フードの男は俺の目の前に手をかざした。
その瞬間、俺の意識は途切れた。
―――
気づくと俺は路地裏の入口の壁にもたれかかっていた。どうやら寝ていたらしい。だとしたら、今のは夢だったのか?変な夢…だな。まぁいい。ひとまずは買い物して家に帰ろう。
―――
…………ふぅ。
やっぱりちゃんとした食事はいいよなぁ!満たされる!
でもやっぱ一人の食事は寂しいもんだよな…。もうなれたけど。
そんなことを考えていた眠くなってきたな…。
……風呂入って寝るか。
―――
風呂も入り終わった。することがないので今日は寝るとしよう。
そう思って布団をかぶったものの今日の出来事が気になってしょうがない。結局あれは現実だったのだろうか。夢だったのだろうか。それが気になってしょうがなく布団の中で眠れずにいた。おかしいな…さっきは眠かったのに。
しかし、やはり睡魔には勝てないもので、しばらくしたら俺は眠ってしまっていた。
そしてこの夜が、物語の始まりであり、俺の人生が変わり始める夜だったのだ。
―――
「どこだここ。」
突然目が覚めた俺は、自分の知らない場所にいた。今まで見たことのないような景色。空は灰色に染まり、所々にある建物に設置されているネオン色のライトの光が空間を照らしている。
夢だな。こういう不思議な景色は夢にはつき物だ。
だけど不思議だ。夢なのにしっかりと思考が働いているのだ。明確に。この景色を確実に記憶に刻み込むように。本当にこの世界が自分が作りだした夢の世界ではなく、実在するように。
一体ここは何処なのだろう。
俺はこの世界の探索を始めた。




