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第29話 刺客

 異世界で領主との会合。


「ああ、友よ。街が新しく出来て、人口の増加にも対応できるし、景気もさらに良くなった」


 領主は笑顔だが目が笑ってない。

 やっぱり、信用されるのはなかなか難しいようだ。


「喜んでくれたようで何よりだ。何かあれば気軽に言ってくれ。」


 忙しそうだから、世間話でもしたら帰るか。


「ぎゃっ!」

「きゃー!」


 悲鳴が部屋の外から起こった。

 扉が開けられ、覆面をした男達がなだれ込んで来た。

 殺し屋としても雑な計画だな。

 白昼堂々とやったら証拠がたくさん残るだろう。


「私をカンツ・エリエル子爵だと知っての狼藉か」


 男のひとりが合図。

 問答無用ってわけね。


 俺は魔剣を抜いて薙ぎ払った。

 男達が塵になって舞う。

 最近は魔剣の扱いにも慣れて来て出力を絞ったり、長さを調節したりできるようになった。


「すまんな。カーペットを汚してしまった」

「構わない。おい、誰か! 掃除を頼む!」


「はい」


 使用人が現れて掃除を始めた。


「物騒だな」

「ここまで大胆なことは滅多にないが。たまにあることだ」

「どこの手の者なのか分かっているのか?」

「敵が多過ぎて分からん。ただ最近になって揉めた貴族はいない」

「ひとりぐらい生かしておいた方が良かったかな」

「気にするな。刺客などみんな口が堅い。毒を口の中に仕込んでおくぐらいはする。ところで、礼は何がいい?」

「礼か。欲しい物なんてないんだよな。そうだ今回の事件の黒幕の情報が欲しい」

「変わった物を欲しがるな」


「この街が滅茶苦茶になったら俺は困るんだよ」

「なるほど。確かに一理はある」


 領主がベルを鳴らした。


「お呼びですか」


 現れたのは何となく影の薄い男。


「刺客を引き入れた奴がいるだろう。調べて来い」

「それなら既に。金で買収されたようですから、黒幕のことは何も。気になったのはクラモト様の来る予定を気にしてたようです」


 おっ、狙いは俺か。

 異世界で何人か殺しているから恨みを買っている。

 怪しいのはチンピラ冒険者の関係者と違法奴隷関係だな。

 チンピラ冒険者なら俺が路地に入った所を狙うだろう。

 何も領主の所に来なくても良い。

 それに刺客をたくさん雇う金がないはずだ。

 可能性は薄いとみた。


 違法奴隷の方だという可能性は大いにある。

 違法奴隷の関係者は縛り首だからな。

 口封じのために襲った可能性はある。

 ただ、領主の所にきたという理由が分からない。


「ふむ、十中八九、隣の領主。ダビル男爵の仕業だな」


 違法奴隷関連ではなかったようだ。


「何で俺なのかな」

「自覚がないにもほどがあるぞ。クラモトはこの領の心臓と言ってもいい。クラモトが死ねば、好景気に陰りが見えるかも知れん」

「産業なんてものは人がひとり死んだぐらいじゃ変わらないだろう」

「だが、クラモトが豚の血を持って来なければ、エリクサーの量産は叶わない。他の産業にも影響が出る。おそらくダビル男爵はクラモトと私を無き者にすれば、侵略できると考えたに違いない」

「王がそういうのを許さないだろう」


「私が死ねば後継者の話になる。暗殺を使えば、傀儡を後継者にするのも容易い」

「殺伐としているな」

「まあそうだな」


 ダビル男爵が黒幕だという証拠はないらしい。

 だが、使われた金の額から言って、ダビル男爵でない可能性は低いとのこと。


 そう言えば、俺って異世界に滞在する時は未定だよな。

 俺の行動を押さえるのに、領主との会合がちょうど良かったのに違いない。

 今のまま好景気が続けば、兵力が増強されるのも一つの原因らしい。

 近々、大規模に兵士募集を掛ける予定みたいだ。


 ダビル男爵は自分なら兵力を増強したら、攻めにいくと考えたのだろうな。

 だいたいの人は自分を基準に考えるものだ。


「なぁ、ロバート。俺って重要人物なんだな」

「何をいまさら」

「それにしても、殺し屋の類を気にしないといけないなんてな。俺に害意をもった人物を迷わせる魔道具を、領主のいる街と魔穴近くに設置した方が良いな」

「平和に行きたいのなら、そうするべきだろうな」


 迷いの魔道具は、領主が管理してくれることになった。

 領主も俺に死なれたら困るようだ。

 他の領へのエリクサーとポーションの輸出だけで大金が動いているからな。

 魔木電池も俺がいないと新規に作るのは難しい。

 充填は魔穴がある限り大丈夫だが。


 それに地球に輸出している魔道具電池のこともある。

 俺が異世界の金を散財するために作らせているが、これだけで100人ほどの雇用がある。

 今後、雇用はますます増えるかも知れない。


 それにしても、ダビル男爵に意趣返しをしたい。

 何かできるだろうか。

 領主はエリクサーの販売を隣の領にはしないとしていて、他にも関税を掛けているが、これだけではちょっと気が収まらない。


 今度、隣の領に攻め込んでみるか。

 だが、ダビル男爵は殺せない。

 お尋ね者になるのは色々と不味い。


 領主は匿ってくれそうだが、そのうち異世界を旅したいなんて考えもある。

 攻め込んで、殺し屋を返り討ちか。

 嫌がらせぐらいにしかならないな。

 殺し屋が死んでもダビル男爵は痛くもかゆくもないだろう。

 難しい所だ。


 領主にはダビル男爵の情報を集めるように頼んである。

 何か弱点があればな。


 領主によれば嫌な奴らしいから、きっと犯罪に手を染めているに違いない。

 そういう物の証拠を押さえればぎゃふんと言わせることができるかもな。

 まあ、じっくり行こう。

 迷いの魔道具で防御は大丈夫なはずだからな。

 時間はあるはずだ。


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